
ジャガー・ランドローバー・ジャパンが5月20日、レンジローバー2027年モデルの受注を開始しました。価格は1997万〜4004万円。新設の最上級「SV ULTRA」は、乗用車世界初の静電型スピーカーを核に、車内を演奏会場へ変える一台です。
レンジローバー2027年モデルの最上級グレード「SV ULTRA」(欧州仕様の参考画像)。専用色チタンシルバー(グロス)は本物のアルミニウムフレークを用いた塗装で、リキッドメタルのような反射と深みを表現します。23インチアロイホイールとシルバークローム加飾が細部を引き締めます。
出典:レンジローバー公式サイト「RANGE ROVER SV ULTRA 厳選ギャラリー」(rangerover.com/掲載画像は欧州仕様車)
「最上級SUVの価値は、馬力で決まる」と思い込んでいませんか。
ジャガー・ランドローバー・ジャパンは2026年5月20日、レンジローバー(第5世代L460系)の2027年モデルの受注を開始しました。メーカー希望小売価格は1997万円から4004万円(消費税込)で、別途「経済変動加算額」16万円(税別)が見積に加算されます。最大のトピックは、史上最高峰のグレードとして新導入された「SV ULTRA」です。パワートレインは4.4L V8ツインターボ(MHEV)の「P615」と、3.0L直6+モーターのプラグインハイブリッド「P550e」を用意し、年内にはフルEV版の追加も予告されています。
SV ULTRAの主役は、エンジンではなく「車内の体験」です。Warwick Acousticsと共同開発した「SVエレクトロスタティックサウンド(静電型スピーカー)」を乗用車として世界で初めて採用(オプション)。さらに座面で音を振動として伝えるボディ&ソウルシート(BASS)、フットウェルに触覚を返す世界初のセンサリーフロアを組み合わせ、車内を「ひとり用のコンサートホール」に変えると謳います。グローバルでは2026年4月28日に発表され、海外市場では招待制(invitation-only)での販売も報じられています。
本記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点も交えながら、レンジローバー2027年モデルの価格・グレード構造、SV ULTRAの専用装備、乗用車世界初の静電型スピーカーが意味する「感覚体験への課金」、そして同価格帯のベントレー・ベンテイガやフェラーリ・プロサングエとの“走りか居心地か”というポジショニングの違いを検証します。

📌 レンジローバー2027年モデルの価格・グレード構造とSV ULTRAの位置づけ

注目すべきは「価格レンジが約2倍に開いた」点です。標準グレードと頂点SV ULTRAの差が、どこに使われているのか。そこを読むと、このモデルの狙いが見えてきます。
1997万〜4004万円の価格レンジと3つのパワートレイン
ジャガー・ランドローバー・ジャパンが2026年5月20日に受注を開始したレンジローバー2027年モデルは、Car Watch(2026年5月20日付)によればメーカー希望小売価格1997万円〜4004万円のレンジを構成します。レンジローバーは第5世代(L460系)で、ボディはスタンダードホイールベース(SWB)とロングホイールベース(LWB)、シートレイアウトは5人乗りを中心に、上位は4人乗りや3列7人乗りまで選べる構成です。今回の2027年モデルでは、この幅広いラインアップの頂点として「SV ULTRA」が新設されました。
パワートレインは大きく3系統です。ガソリンは4.4L V型8気筒ツインターボ(48Vマイルドハイブリッド)の「P615」で最高出力615PS、プラグインハイブリッドは3.0L直列6気筒ガソリン+電動モーターの「P550e」、そして標準系にはディーゼル(D350)も用意されます。SV ULTRA自体はP615 V8とP550e PHEVから選べ、ランドローバー公式メディアニュースルームによれば年内にはフルEV版の追加も予告されています。最上級グレードでありながら「内燃機関でも電動でも選べる」という選択肢の広さは、現行レンジローバーが多様なパワートレインを1つのプラットフォームに収める設計思想を象徴しています。
SV ULTRAの専用装備──チタンシルバーとラタンウッド
SV ULTRAは、外装・内装ともに専用仕立てです。エクステリアの主役は専用色「チタンシルバー(グロス)」で、本物のアルミニウムフレークを用いた先進塗装により、リキッドメタル(液体金属)のような反射率と深みを実現します。これにシルバークロームのアクセント、サテンプラチナアトラスのインサート付き23インチアロイホイール(鍛造)、イルミネーション機能付きのフロントトレッドプレートが組み合わされ、「静かに最上位を主張する」佇まいに仕上げられています。
内装はサステナビリティと官能性の両立がテーマです。シートにはオーキッドホワイトとシンダーグレイのUltrafabrics(レザーフリー素材)を採用し、精巧なモザイク調パーフォレーションとレーザーエッチング装飾を施します。さらにダッシュやパネルには天然のオープンポア仕上げを生かしたラタン(籐)ウッドの専用パネルを配置。これまでのレンジローバーが本木目やニアアニリンレザーで「重厚な高級感」を演出してきたのに対し、SV ULTRAは軽やかで現代的な素材へと舵を切っています。素材選択そのものが、後述する「車内の感覚体験」という価値観と地続きになっている点が見逃せません。
SV/SVブラック/SV ULTRAの階層と「招待制」の意味
SV ULTRAは、既存の「SV」「SVブラック」のさらに上に置かれた、もう一段の特別枠です。Autoblog(2026年4月)によれば、米国などの海外市場ではSV ULTRAは「招待制(invitation-only)」で、メーカーが購入者を選定する運用が報じられています。資金力だけでは買えず、ブランド側の承認が必要という、超富裕層向けの希少性設計です。なお日本での販売条件(招待制の有無)は、正規リテイラーへの確認が必要な段階で、Car Watchの受注開始リリースでは販売手法には触れられていません。
この階層構造を価格軸で見ると、構図が明確になります。標準系の下限が1997万円、頂点のSV ULTRAはレンジ上限の4004万円クラス。同じ車体・同じプラットフォームでありながら、上下で約2倍の価格差が生まれているわけです。では、その差額は何に使われているのか。次章で、SV ULTRAが価値の主軸に据えた「乗用車世界初の静電型スピーカー」を軸に解剖します。

📌 乗用車世界初の静電型スピーカーと「感覚体験」への課金構造

静電型スピーカーは、ハイエンドオーディオの世界では知られた技術ですが、走行振動の多いクルマに載せたのは前例がありません。ここがSV ULTRAの本当の挑戦です。
SVエレクトロスタティックサウンド──21基・1mm・1000倍の中身
ランドローバー公式によれば、SVエレクトロスタティックサウンドは高音質静電型スピーカー技術を自動車に応用した世界初の事例です。Warwick Acousticsと共同開発し、21基の薄膜トランスデューサーを、再設計したウィング形状のヘッドレスト、シートバック、ヘッドライナーなどに統合します。各トランスデューサーの心臓部は、2枚の有孔金属プレートの間に置かれた厚さわずか1mmの超軽量メンブレン。ここにオーディオ信号を流すことで、従来型スピーカーの最大1000倍の速さで応答し、歪みや色付けの少ない、スタジオモニターやハイエンドヘッドホンに近い音場を生み出します。
静電型を採用する技術的メリットは音質だけではありません。コーン型と比べて重量を最大90%削減し、消費電力も最大90%削減できるとされます。これは2.5トン級の大型SUVにおいて、重量増を抑えながら音響体験を底上げできることを意味します。静電型は中高音の繊細さに強みがある一方、低音再生には不利なため、SV ULTRAでは従来型のバススピーカー5基と、後述のボディ&ソウルシートを組み合わせて低音を補完する設計です。なお、SVエレクトロスタティックサウンドはSV系グレードのオプション設定(市場により設定が異なる)であり、全車標準ではない点には注意が必要です。
BASS+センサリーフロア+ウェルネス6モードの没入体験
SV ULTRAの音響は「聴く」だけでなく「感じる」設計です。ボディ&ソウルシート(BASS)は、再生中の音楽をリアルタイムで解析し、座面を通じてリズミカルな振動として伝える機構で、前後席の両方に対応します。さらにSV ULTRAには世界初の「センサリーフロア(触覚フロア)」を搭載。運転席を除く各乗員のフットウェルに、フロアマット下のトランスデューサーを配置し、足元から触覚フィードバックを返します。音を耳・座面・足元の三方向から浴びる「フルボディオーディオ体験」というわけです。
加えて、ストレス軽減や集中力向上を狙ったウェルネス6モードも用意されます。レンジローバーが訴求するのは、もはや単なるカーオーディオではなく「移動時間そのものを整える空間」です。20年以上クルマを取材してきた立場から言えば、これは「音響メーカーの最上位スピーカーを積む」という従来のプレミアムオーディオ競争とは異質な方向性です。スピーカーの“ブランド名”ではなく、車内の“身体感覚”そのものを商品化したところに、SV ULTRAの新しさがあります。
GRADE MATRIX|SV/SVブラック/SV ULTRAの違い
SV系3グレードの違いを、価格よりも「体験の差」で整理すると分かりやすくなります。静電型スピーカーはSV系全体のオプションである一方、BASSとセンサリーフロア、専用色チタンシルバーはSV ULTRA専用という位置づけです。
競合比較──ベンテイガ・プロサングエは“走り”、SV ULTRAは“居心地”
SV ULTRAの外観(欧州仕様の参考画像)。直線基調の端正なフォルムは歴代レンジローバーの伝統を継ぎつつ、専用色チタンシルバーが上質な陰影を生みます。SWBとLWBが用意され、後席の快適性も最上級に引き上げられています。
出典:レンジローバー公式サイト「RANGE ROVER SV ULTRA 厳選ギャラリー」(rangerover.com/掲載画像は欧州仕様車)
4000万円級のラグジュアリーSUVという土俵で見ると、SV ULTRAの個性が際立ちます。当サイトが5月16日に取り上げたベントレー・ベンテイガ スピードは、V8ツインターボ650PS・0-100km/h加速3.6秒を掲げ、5月6日のフェラーリ・プロサングエ(V12・新仕様ハンドリング・スペチアーレ)も“動的性能の頂点”を競っていました。これらが「いかに速く・鋭く走るか」を価値の中心に置くのに対し、SV ULTRAは最高出力を615PSに留め、価値の主軸を“車内でどう過ごすか”へ振り切ったのが本質的な違いです。
これは単なる味付けの違いではなく、ラグジュアリーSUVの競争軸そのものの変化を示しています。動力性能はすでに「3秒台加速」という到達点に達し、数字の上積みが体感差につながりにくくなりました。一方で、静電型スピーカーや触覚フロアのような「車内の感覚体験」は、まだ各社が横並びになっていない未開拓の差別化領域です。SV ULTRAが世界初の静電型スピーカーをここに投入したのは、「速さ」競争から「居心地・感覚」競争へと、ラグジュアリーの主戦場を移そうとする戦略的な一手と読み解けます。
📌 たかまさはこう見ている

4000万円のSUVに何を払うのか。SV ULTRAの答えは「車内で過ごす時間の質」でした。これは超高級SUVの評価軸が変わる転換点かもしれません。
これまで11台のクルマを乗り継ぎ、購入のたびに「この価格差は何に払っているのか」を問い続けてきました。その目で今回のSV ULTRAを見ると、1997万円の標準系と4004万円クラスの頂点を分ける差額が、ボディの素材でもエンジン出力でもなく、「車内でどう過ごすか」という体験そのものに集中している点が際立ちます。世界初の静電型スピーカー21基、座面で音を感じるBASS、足元に触覚を返すセンサリーフロア。これらは数字のカタログスペックでは伝わりにくい価値ですが、実際に体感した人にしか分からない満足度を売る、という方向にラグジュアリーが進んでいることを示しています。
競合と並べると、その独自性はさらに鮮明です。ベンテイガ スピードの650PS、プロサングエの動的性能──いずれも「速さ・鋭さ」で頂点を争う中、SV ULTRAだけが「居心地・静粛・没入」へと評価軸をずらしました。動力性能が0-100km/h 3秒台で頭打ちになった今、各社が次に競うのは“車内で何を感じられるか”という領域です。静電型スピーカーをいち早く乗用車に持ち込んだレンジローバーは、その新しい競争軸の先頭に立ったことになります。
FP(ファイナンシャルプランナー)の視点でも軽く検証しておきます。レンジローバーは輸入SUVの中でもリセールバリューが比較的高い部類ですが、4000万円級の最上級グレードは値落ちの「率」より「絶対額」が大きく、数年で1000万円単位の評価減も覚悟する必要があります。加えて日本では円安対応の「経済変動加算額」16万円(税別)が見積に上乗せされ、静電型スピーカーもオプション設定です。総支払額は車両本体価格の先にもう一段積み上がる構造で、購入の判断は「装備のリセールへの寄与」ではなく「保有期間中に体験へどれだけ価値を感じられるか」で行うのが現実的でしょう。クルマの頂点が「速さ」から「居心地」へ移るとき、私たちが本当に対価を払う対象も、馬力やトルクから“移動時間の質”へと静かに置き換わりつつある──SV ULTRAは、その変化を最も雄弁に体現する一台です。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてレンジローバー公式サイト(https://www.rangerover.com/)の「RANGE ROVER SV ULTRA 厳選ギャラリー」に掲載された公式画像(JLR公式CDN)から引用しています。いずれも専用色チタンシルバーをまとうSV ULTRAの外観で、公式ギャラリーの注記どおり欧州仕様車の参考画像です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。

