
自動車税の納税通知書が届く5月。納期限は原則5月31日です。今は最安区分のEVですが、2028年に新規登録するEVから「車両重量」課税へ転換し、ガソリン車並みへ。納期の今こそ知っておきたい税の転換点を解説します。
「EVは税金が安い」。そう思い込んでいませんか。
たしかに今は安いのです。電気自動車(EV)の自動車税は排気量を持たないため最安区分が適用され、大型の高級EVでも年25,000円。新車を買えば翌年度はグリーン化特例で約6,500円まで下がり、車検時の自動車重量税もエコカー減税で免税になります。本日このサイトで取り上げたBMW iX3のような車両重量2.4トン級のプレミアムEVが、1.0L・約1トンの軽量コンパクトと同じ自動車税というのが、現行制度の実像です。
ところが、その前提が変わります。2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱は、2028年(令和10年)以降に新規登録するEVの自動車税を「車両重量」に応じた課税へ転換し、ガソリン車の現行税率と同程度の負担を求める方針を明記しました。さらに2028年5月1日以降の車検からは、EV・プラグインハイブリッド(PHV)に自動車重量税の「特例加算」が上乗せされます。納税通知書が手元に届いている今は、現行の税額を確認すると同時に、この転換を時間軸で押さえておく好機です。
この記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、2026年度の排気量別の自動車税と13年超の重課、そしてEVの税優遇に設けられた「賞味期限」の中身を、今日のEV購入判断と結びつけて検証します。

📌 2026年度の自動車税、排気量別の早見と13年超重課・グリーン化特例の現在地

まずは手元の納税通知書と照らし合わせてください。2019年10月の登録前後で税額が違うこと、13年を超えると上がること。この2点を押さえるだけで、自分のクルマの位置づけが見えてきます。
2019年10月で下がった「新税率」と、EV・軽の扱い
自動車税種別割(自家用乗用車)は、総排気量に応じて税額が決まります。2019年10月の税制改正で、その時点以降に初度登録された車には引き下げられた「新税率」が適用され、それより前に登録された車は従来の「旧税率」のままという二段構えになっています。たとえば1.5L超〜2.0L以下は新税率で36,000円(旧39,500円)、2.0L超〜2.5L以下は43,500円(旧45,000円)、3.0L超〜3.5L以下は57,000円(旧58,000円)。ボリュームゾーンのコンパクトカーが収まる1.0L超〜1.5L以下は30,500円(旧34,500円)です。
ここで重要なのが、電気自動車(EV)・燃料電池車(FCV)・プラグインハイブリッド(PHV)・ハイブリッド(HV)には排気量という概念がないため、すべて最安区分(1.0L以下相当)の25,000円が適用されるという点です。軽自動車税種別割(自家用乗用)は排気量に関わらず一律10,800円。つまり現行制度では、車両重量や車両価格がいくら大きくても、動力源がモーター主体なら登録車の最低ラインに張り付く構造になっています。下の早見で主要区分を確認してください。
13年超で約15%重課、ハイブリッド・EVは対象外という非対称
自動車税には、新規登録から一定年数を経過した車を重く課税する「重課」があります。ガソリン車・LPG車は13年超、ディーゼル車は11年超で、税額が概ね15%上がります(軽自動車は約20%)。たとえば2.0L超〜2.5L以下のガソリン車(新税率43,500円)が13年を超えると、おおよそ50,000円前後へ上がる計算です。一方で、ハイブリッド車・電気自動車・天然ガス車などは重課の対象外です。グリーン化特例は「軽課(環境性能の高い車を翌年度に軽減)」と「重課(古い車を割増)」の二本立てで、令和8年度税制改正大綱では軽課・重課ともに令和8・9年度(2026・2027年度)の2年延長が決まりました。
この重課は、買い替えの判断にしばしば登場します。ただしFPの立場では、「重課を避けるために13年で乗り換える」のは多くの場合は得になりません。重課額は年数千円規模であり、買い替えで生じる車両費・諸経費の方が桁違いに大きいからです。重課は買い替えの主因ではなく、車検整備費の上昇や安全装備の世代差と合わせて総合的に判断する材料の一つ、と位置づけるのが妥当です。
納期限は原則5月31日、滞納の代償とキャッシュレス納付
自動車税種別割は、毎年4月1日時点の所有者に課され、納税通知書は5月上旬に届きます。納期限は原則として5月31日。ただし2026年は5月31日が日曜にあたるため、多くの自治体で翌営業日の6月1日(月)が期限となります(自治体により取り扱いが異なるため通知書の記載が最優先です)。期限を過ぎると延滞金が発生し、納税証明が確認できないと継続検査(車検)を受けられません。事実上、滞納は車検切れに直結する重いペナルティです。
近年は納付手段が大きく広がり、クレジットカード、スマートフォン決済アプリ、QRコード(地方税統一QR「eL-QR」)などキャッシュレス納付が一般的になりました。決済方法によってはポイント還元が得られる一方、クレジット納付はシステム利用料がかかる場合があり、還元率と手数料の差し引きで損得が変わります。納期の今は、こうした納付手段の使い分けまで含めて点検しておくとよいでしょう。

📌 EVの税優遇に賞味期限、2028年「車両重量」課税と重量税の特例加算

ここが本題です。EVの税の安さは「制度の設計」であって「EVの本質的な安さ」ではありません。設計が変われば前提も変わる。2028年という年が、その分岐点になります。
現行EVがなぜ最安なのか、重量2.4トンでも軽と同額の構造
EVの自動車税が最安区分なのは、税額が「総排気量」で区切られているからです。モーターで走るEVには排気量がなく、制度上は最低ラインへ収まります。さらに新車登録の翌年度はグリーン化特例の軽課で約75%が減税され、25,000円が約6,500円に。車検時に納める自動車重量税も、EVはエコカー減税で新車登録時と初回車検時が免税です。結果として、車両重量2.4トン級・車両価格1,000万円級のプレミアムEVであっても、自動車税は1.0L・約1トンの軽量コンパクトと同じ25,000円という非対称が生じます。
この優遇は、2030年代のカーボンニュートラルとEV普及という政策目標に紐づいた「政策の道具」です。普及が進むほど、ガソリン税(燃料課税)を負担しないEVが増え、道路維持の財源が痩せていく。この構造的なねじれが、見直し議論の出発点になっています。下に、現行の優遇から2028年の転換までの流れを整理しました。
令和8年度税制改正大綱が示した2028年の転換
2025年12月26日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱は、自動車関係諸税について「購入時の負担を下げ、保有・使用の負担を公平化する」方向を打ち出しました。EVに関わる柱は2つです。第一に、2028年(令和10年)以降に新車新規登録されるEVの自動車税種別割を、排気量に代えて「車両重量」に応じた課税方式へ転換し、EV以外の自動車(ガソリン車等)の現行税率と同程度の負担を求めるという方針。具体的な税率は令和9年度税制改正で決定されます。第二に、2028年5月1日以降に車検を受けるEV・PHVへ、自動車重量税の「特例加算」を導入。金額はガソリン車ユーザーの燃料税負担を踏まえて設定され、PHVは燃料税を一定程度負担していることからEVの2分の1とされます。
あわせて、グリーン化特例は現行のまま2年延長、エコカー減税は2028年4月末まで2年延長しつつ燃費基準を約5%厳格化、環境性能割は2026年度から2年間凍結という整理になりました。短期的にはEVの優遇が残る一方、2028年に向けて「保有・使用段階での公平化」が段階的に進む。大綱はそう読める内容です。なお新たな保有税の創設(走行距離課税を含む抜本見直し)は今回見送られ、2027年度税制改正以降に持ち越されました。
「今EVを買う人」への影響と、買い時の判断軸
ここが読者の関心の中心でしょう。大綱の重量課税化は「2028年以降に新車新規登録するEV」が対象です。裏を返せば、2028年より前に登録したEVが直ちに増税対象になるとは大綱からは読み取れません。本日このサイトで取り上げたBMW iX3やBYD・ラッコ(RACCO)のように、いま購入・検討するEVは、現行の最安区分とグリーン化特例という優遇の枠内に入ります。ただし重量税の特例加算は「2028年5月以降の車検を受ける車両」が対象とされているため、長く保有するEVは将来の車検で加算に直面する可能性があります。
FP視点での判断軸はこうです。EVの税メリットは「今が最も大きく、時間とともに縮む」前提で総コストを見積もる。購入費・補助金・燃料(電気)費・自動車税・重量税・売却額を5〜7年の保有期間で並べ、税優遇を「期間限定のボーナス」として割り引いて評価する。とくに重量の大きい高級EVほど現行優遇の恩恵が大きく、制度変更時の振れ幅も大きくなります。逆に、軽EVや小型EVは元々の税額が小さく、制度変更の影響も相対的に限定的です。動力源だけで「EVは税金が安いから得」と即断せず、保有期間と車両重量を軸に見極めることが、これからのEV選びの肝になります。
📌 たかまさはこう見ている

税金は、その時代に国が何を後押ししたいかを映す鏡です。EVの安さは普及を促す合図であり、普及が進めば合図の役目は終わる。納期の5月は、その変化を自分のクルマに引き寄せて考える絶好の機会です。
20年以上自動車業界を取材し、自分でも11台を乗り継いできましたが、税制は「クルマの値段」以上に保有体験を左右します。とりわけ自動車税は、毎年5月に必ず財布から出ていく固定費でありながら、購入時にはほとんど意識されません。重量2.4トンのプレミアムEVと1トンの軽量コンパクトが同じ25,000円という現行制度は、環境政策としては合理的でも、道路という公共財の受益と負担という観点では明らかに非対称です。令和8年度税制改正大綱の「車両重量」課税への転換は、この非対称をならす方向の一歩だと私は見ています。
本日このサイトでは、BMW iX3とBYD・ラッコという2台のEVを取り上げました。どちらも今買えば現行の税優遇の枠に入りますが、その優遇は「期間限定」だと理解して総コストを組み立てるべきです。EVの環境性能や走りの魅力は税制とは別の本質的な価値ですから、税の安さだけを理由に選ぶのではなく、保有期間と車両重量を軸に、優遇が縮んだ後の負担まで織り込んで選ぶ。これが、これからのEVとの賢い付き合い方になります。ここはFP視点で検証しました。
最後に一つ。税制は、時代の追い風をどこに吹かせるかという「国の意思表示」です。取得時の負担を下げ、保有と使用の負担を公平化するという今回の方向は、クルマを「買う対象」から「使い続ける対象」へと評価軸を移していく流れの先触れに見えます。優遇は永遠ではなく、制度は静かに、しかし確実に書き換えられていきます。納税通知書が届いた5月のいまこそ、自分のクルマの税の現在地と、数年後の姿を一度たしかめてみてください。

