記事内に広告があります。

03/11|外免切替・合格率9割→4割、人手不足に波及する構造|たかまさの車×交通デイリー

たかまさニュース(車・道路交通など)

「外国人が増えたせいで交通事故が怖い」と感じたことはありませんか。あるいは逆に、「外国人ドライバーを採用したいのに免許が取れない」という声を聞いた方も増えているかもしれません。

2025年10月に施行された「外免切替」制度の厳格化から約5ヵ月。警察庁が3月2日に初の公式統計を発表しました。知識確認の合格率は92.5%から42.8%へ、技能確認は30.4%から13.1%へと半減以下に急落しました。「問題が簡単すぎる」と長年指摘されてきた制度の見直しは、数字のうえでは効果を出しています。

ただし話はここで終わりません。合格率の急落は「交通安全の向上」と「外国人ドライバー不足の深刻化」という、正反対の結果を同時に生み出しています。今日はFP記者として、この制度変更が道路と産業の両面に何をもたらすのかを整理します。

📌 外免切替「知識確認92%→43%・技能確認30%→13%」の衝撃と、交通安全・物流人手不足への二重波及

外免切替とはなにか。なぜ今「正常化」が急がれたのか

外免切替(外国免許切替)とは、外国で取得した運転免許証を日本の免許証に切り替える制度です。日本が加盟するジュネーブ条約に締約していない国の免許は日本国内では使えないため、中国・ベトナムなどの出身者はこの手続きを経て日本の免許を取得します。

2024年の外免切替取得者数は7万5905人で、10年前と比べて約2.5倍に増加しています。取得者のうち最も多いのがベトナム人、次いで中国人です。技能実習生・特定技能・留学生として来日した外国人にとって、外免切替は職場での運転業務に不可欠な手続きです。

しかし従来の制度には大きな問題がありました。知識確認はイラスト付きの10問(合格基準70%)で、試験内容が「感覚で選べる」と評されるほど簡易だったのです。さらに住民票がなくても、ホテルの滞在証明書を「住所確認」として使い申請する悪用が横行。中国では外免切替を目的とした短期訪日ツアーまで存在していたと報じられています。

こうした実態に加え、外国人ドライバーによる交通事故件数が2020年の5441件から2024年には7286件へと増加し続けていました。2025年5月には、外免切替で取得した免許を持つ外国人による埼玉県でのひき逃げ事件、同月の新名神高速道路での逆走事故が相次いで発覚しました。世論の圧力が一気に高まり、警察庁は道路交通法施行規則を改正し、2025年10月1日から新制度を施行しました。

警察庁が3月2日に初公表した「合格率急落」の中身

警察庁が3月2日に発表した、厳格化後3ヵ月間(2025年10〜12月)の統計が明らかにした数字は予想以上でした。

📊 外免切替 合格率の変化(警察庁発表・2026年3月2日)
・知識確認:2024年通年 92.5% → 2025年10〜12月 42.8%(約54%減)
・技能確認:2024年通年 30.4% → 2025年10〜12月 13.1%(約57%減)
・静岡県(知識確認):93.3% → 36.5%
・三重県(知識確認):87.6% → 34.3%
・神奈川県(知識確認):約90% → 約10%

変更内容はシンプルです。知識確認はイラスト10問(合格基準70%)から文章問題50問(合格基準90%)に変更。問題数が5倍に増え、許されるミスはわずか5問以下です。技能確認では横断歩道・踏切の通過、右左折時の合図・安全確認などの課題が追加されました。住所確認では住民票の提出が原則義務化され、住民票を持たない短期滞在者や観光客は申請自体ができなくなりました。

数字で見れば、制度の「正常化」効果は歴然としています。特に技能確認の合格率13.1%という数字は、日本人が教習所で免許を取る際の卒業検定合格率(90%台)と比べると格差が大きく、「いかに以前の基準が緩かったか」を示しています。

誰が影響を受けるのか。対象国と制度の非対称性

重要な前提として、この厳格化はすべての外国人に等しく適用されているわけではありません。韓国・アメリカ・台湾をはじめとする29ヵ国の外国人は、知識確認・技能確認の両方が免除されます。これらの国はジュネーブ条約締約国、または日本と免許相互承認の二国間取り決めがある国です。

新制度の影響を最も直接的に受けるのは、中国・ベトナム・ネパール・インドネシアなどの出身者です。2024年の外免切替取得者の多数を占めるベトナム人・中国人は、この2つの審査を突破しない限り日本の免許を取得できません。技能実習生・特定技能など「在留外国人」として日本に居住し、職場で運転業務を担うことを前提に来日している人にとっては、切実な問題です。

さらに実務上の壁として、予約待ちが深刻化しています。埼玉県では試験枠が2〜3ヵ月先まで空きがない状態が続いているという現場報告があります。合格率が低下した結果、再受験者が増え、新規申請者の予約がさらに取りにくくなるという悪循環も起きています。

物流・農業・製造業への波及。外国人ドライバー採用計画が直撃

交通安全の観点から歓迎されるこの変化が、産業側には別の課題をつきつけています。

日本の物流・運送・農業・製造業は、外国人労働者の運転業務に依存する体制を急速に拡大してきました。従来は採用後ほぼ確実に免許が取得できたため、「入社後に運転業務につかせる前提」で採用計画を組んでいた企業が多かったのです。

しかし厳格化後の合格率は知識確認で43%、技能確認で13%です。採用した外国人が「入社したが免許が取れない」という事態が現実に発生しています。不合格の場合は教習所に通って再取得するルートがありますが、教習所費用(20〜35万円程度)は誰が負担するのか、教習中の業務配置はどうするのか、在留期間内に取得できなかった場合はどうなるのかといった問題が、企業の人事・総務担当者に一気に降りかかっています。

在留期間内に外免切替を完了できなければ、そもそも雇用目的と在留状況が一致しなくなるという、より深刻なリスクもあります。採用担当者がこの変化を把握していないまま採用活動を続けているケースが、まだ少なくないのが現状です。

「交通安全」と「人手不足」は両立できるか。制度設計の矛盾

今回の厳格化の背景にある「交通安全の確保」という目的は、正当です。外国人ドライバーの事故件数が増加していた事実は重く、試験が「見れば誰でもわかる」レベルだったという指摘も長年なされてきました。制度を日本人の免許取得と同等の水準に近づけることは、本来あるべき姿です。

一方で、日本社会は今、深刻な人手不足の中にあります。物流の2024年問題で働き方改革が進む中、外国人ドライバーの活用は業界の重要な戦略でした。そこに「合格率が半減以下になった試験」が立ちはだかることで、採用計画が根底から崩れる企業が続出しています。

この矛盾を解決する糸口として考えられるのは、試験の難易度を維持しながら「合格へのサポート体制」を整備することです。外国人向け教習所の拡充、多言語対応の試験対策テキストの普及、教習費用の企業補助制度などが挙げられます。試験を難しくして終わりではなく、「合格できる仕組み」を同時に用意しなければ、交通安全と人手不足の両立は達成できません。この点について警察庁や国土交通省がどう動くかが、今後の焦点になります。

たかまさはこう見ている

FP記者として20年以上取材してきた私の感覚では、今回の統計発表が持つ意味は単純ではありません。「合格率が下がった=制度が正常化した」という見方は半分は正しいですが、残りの半分には大きな問いが残っています。

私が注目するのは、技能確認の合格率が13.1%という数字です。言語・文化・道路環境がまったく異なる外国籍の人が一発で合格するのが難しいのは、ある意味では当然です。問題は「基準を上げること」ではなく「基準に達してもらうための仕組みが整っているか」です。試験の難化と合格支援インフラの整備が同時に進まなければ、結果として「免許を持たない外国人が車を運転せざるを得ない状況」を生みかねず、それは交通安全の悪化という本末転倒な結果につながります。

車を扱う立場から言うと、外国人ドライバーの問題はドライバー本人だけに帰責できない部分があります。企業側が「ほぼ全員合格する試験だから」という前提で採用計画を組み、試験対策を本人任せにしてきた構造的な問題があります。今後は採用時点での「免許取得可能性の見極め」と、不合格時の代替プランが人事戦略の必須要件になります。外国人を雇用する企業の採用担当者・人事担当者の方は、この点を今すぐ見直すことをお勧めします。

もう一点、私が気になるのは「すでに外免切替で取得した免許を持っている人への対応」が手付かずであることです。厳格化以前に取得した免許は有効なままであり、旧制度の緩い基準で通過した人が現在も運転しています。新規取得を厳しくしただけでは、現在走っている「旧基準合格者」への対応は未解決のままです。これは警察庁も認識しており、「更新時の安全教育強化」などの追加策が今後議論されるとみています。交通安全を本当に確保するなら、この次のステップが不可欠です。

普段から道路を使うドライバーとして、「外国人ドライバーの技術水準がどう変わっていくか」は自分の安全にも直結する話です。制度変更を「他人事」として流さず、制度の光と影の両方を見続けることが大切だと考えています。MOTA車買取

🔗 参考リンク

タイトルとURLをコピーしました