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03/14|自動車盗難5年最多・ランクル連続ワーストの構造|たかまさの車×交通デイリー

たかまさニュース(車・道路交通など)

「まさか自分の車が盗まれるとは思っていなかった」。そんな声を耳にするたびに、私は「まさか、は起こる」と伝えてきました。

日本損害保険協会が2026年3月4日に公表した「第27回自動車盗難事故実態調査」は、その「まさか」が再び増えている現実を数字で示しています。2025年の車両本体盗難に対する保険金支払件数は2,746件で、直近5年間で最多となりました。2年連続で減少していた盗難被害が、再び増加へと転じたのです。

なぜ今また増えているのか。ランドクルーザーが5年連続ワースト1になり続ける構造的な理由は何か。愛知県だけで被害が突出している背景に何があるのか。そして愛車を守るために今すぐできることは何か。FP記者として、カーソムリエとして、データと現場を照らし合わせながら整理します。

📌 2025年の自動車盗難が直近5年最多へ反転——ランクル5連続ワーストと愛知集中が示す「盗難の産業化」構造と今すべき対策

1件あたり約300万円・年間82億円——2025年の盗難を数字で理解する

日本損害保険協会の調査は、損害保険会社21社が実際に保険金を支払った事案を集計したものです。「保険に入っていて、かつ被害に遭った件数」を示すため、無保険車の盗難や保険を利用しなかった事案は含まれていません。実態の盗難件数はこれより大きいことに注意が必要です。

📊 2025年 自動車盗難保険金支払の主要データ(日本損保協会 第27回調査・2026年3月4日発表)
・車両本体盗難 支払件数:2,746件(直近5年で最多)
・1件あたり平均支払保険金:297万5,000円
・年間支払保険金総額:約82億円(前年比約10億円増)
・車上ねらい 支払件数:672件(前年720件から減少)
・警察庁統計の盗難認知件数(参考):6,386件(2025年通年)

2023年・2024年と2年連続で車両本体盗難の件数が減少していたことから、「盗難は減り続ける」という楽観的な見方もありました。それが2025年で覆されました。警察庁の「犯罪統計資料」によると、2025年の上半期だけで認知件数は3,821件に達し、前年同期比で約30%もの急増が記録されています。

ピークだった2003年の64,223件と比べれば約1割まで減少しているとはいえ、「盗難は昔の問題」という感覚は、少なくとも数字の上では正確ではありません。特に近年は件数こそ少なくても、1件あたりの被害額が車両価格の上昇に連動して大きくなっており、2025年は1件平均297万5,000円という水準になっています。盗まれた場合の経済的ダメージは、以前より格段に大きくなっているのです。

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ランドクルーザーが5年連続ワーストであり続ける「3つの理由」

車名別の盗難状況を見ると、2025年の車両本体盗難ワースト1はトヨタ「ランドクルーザー(ランドクルーザープラドを含む)」でした。これで5年連続のワースト1です。今回は車上ねらいのワースト1にもランクインしており、「盗まれやすい車」としての独走状態が鮮明になっています。

なぜランドクルーザーはこれほど集中的に狙われるのか。3つの理由があります。

第1に海外での圧倒的な需要です。ランドクルーザーはアフリカ・中東・オーストラリアを中心に、「日本製4WDの王様」として世界的な人気を持ちます。新車価格が600万〜1,000万円を超えるにもかかわらず、中古市場での需要は非常に高く、「盗んでも必ず売れる」という確信が組織犯罪の背景にあります。実際、2026年2月にはブラジル国籍の3人がランクル300をはじめとする高級SUV計50台・約4億5,000万円相当を盗んだ疑いで東京都警に逮捕された事例も報告されています。

第2に旧型モデルに存在する技術的な脆弱性です。特に150系プラドをはじめとする旧型ランクルの一部は、後述する「CANインベーダー」への対策が不十分なまま市場に多く流通しています。メーカーが対策を施した新型車でも、窃盗犯がその対策を突破するケースが報告されており、技術的なイタチごっこが続いています。

第3に高いリセールバリューと長い耐用年数の組み合わせです。製造から10年以上経った車両でも高値がつくランクルは、窃盗組織にとって「時間をかけて転売しても価値が落ちにくい商品」として機能します。車の資産価値が高いほど盗難リスクも高まるという、愛好家にとって皮肉な側面がここにあります。

愛知県に盗難被害が集中する構造——不法ヤードと港湾アクセスの関係

都道府県別の車両本体盗難支払件数を見ると、愛知県が2位の埼玉県の約2倍を占めており、車上ねらいでも2年連続ワースト1です。この愛知集中の背景には、複数の構造的要因があります。

まず高額車種の保有台数の多さです。トヨタ自動車を中心とした自動車産業が集積する愛知県には、企業経営者や高収入層が高価なSUVを所有するケースが多く、「盗む価値のある車」が物理的に集まっています。

次に不法ヤードへのアクセス性です。盗難車は「不法ヤード」と呼ばれる非公式の解体・保管施設に運び込まれ、部品単位または車体ごとコンテナに詰められて輸出されます。愛知県は名古屋港という日本最大級の港湾を抱えており、盗難車を海外に不正輸出するルートの起点として機能しやすい地理的条件があります。愛知県警はこうした不法ヤードの摘発を継続していますが、組織は場所を変えながら活動を続けています。

なお、今週3月9日の記事でお伝えした通り、ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、UAE・ドバイ経由の中東・アフリカ向け輸出ルートが一時的に機能不全に陥っています。この状況が今後の盗難件数にどう影響するかは、まだ見えていません。輸出先が一時的に減ることで盗難インセンティブが下がる可能性もゼロではありませんが、組織犯罪は別ルートを探す柔軟性を持っているため、楽観は禁物です。

CANインベーダーと「電子錠と物理錠の非対称」問題

盗難の主要手口として定着した「CANインベーダー」は、車のCAN(Controller Area Network)バスと呼ばれる車内の電子制御ネットワークに不正アクセスするデバイスです。フロントフェンダーの隙間やヘッドライトのカプラー部分から接続し、数分でドアロック解除とエンジン始動を行います。警察庁の統計では、鍵なし盗難の割合が2025年でも全体の75.2%に達しており、いかにこの手口が蔓延しているかがわかります。

問題は、「電子的な対策を施しても完璧ではない」という現実です。メーカーが新型車に対策を加えると、窃盗組織がその対策を解析して突破する——このイタチごっこが続いています。愛知県警のある担当者は取材の中で、「車が見つかっても、すでに海外に輸出されていることがある」と述べており、スピード感と組織力の両面で窃盗団が対策の先を行っているという実情が透けて見えます。

この現実が意味することは、「電子的な防犯だけでは不十分」ということです。バーロックやハンドルロックのような物理的な防犯装置は原始的に見えますが、CANインベーダーによる電子的アクセスを封じることはできません。物理的な障壁は、「時間」と「目立つリスク」を嫌う窃盗犯に対して有効な抑止力になります。電子的なアクセスには成功しても、ハンドルロックが取り付けられていれば「別の車に行こう」となる可能性が高まるのです。

実際、被害者の約60%が「複数の防犯対策を取っていなかった」という調査結果があります。「自宅の駐車場だから大丈夫」「マンションの立体駐車場だから安心」という油断が、犯罪組織に隙を与えています。

たかまさはこう見ている

自動車盗難の問題は、「被害に遭った人が気の毒だ」で終わる話ではありません。FP記者として見ると、盗難はあらゆる「資産価値が高い車」に付随するコストとリスクの問題です。この視点から整理したいと思います。

まず保険の話です。1件あたりの平均支払保険金が297万5,000円であることを考えると、「車両保険で盗難をカバーする」という選択は、資産価値の高い車ほど合理性が高くなります。ただし、車両保険は等級によって年間数万円から十数万円の費用がかかります。私がFPとして伝えてきたのは、「盗難リスクの高い車種を所有するなら、車両保険は外せない」という結論です。保険料が高いからと外した結果、500万円の車が戻らなかった——これは非合理な結末です。盗難リスクが高い車種には、保険料を維持費の一部として組み込む前提で選ぶ必要があります。

防犯対策のコストについても整理しておきます。バーロック(タイヤロック)は5,000〜20,000円程度でランニングコストはほぼゼロです。ハンドルロックは3,000〜15,000円程度。GPS追跡機能付きのカーセキュリティシステムは初期費用3〜5万円、月額1,000〜3,000円程度です。これらを組み合わせて月数千円のコストを「防犯保険料」として考えると、車両保険の免責金額を高めに設定して保険料を下げた上で自己防衛するというアプローチも十分合理的です。「対策に5万円かけて10年間守る」か「対策せずに1回盗まれて300万円失う」か——この比較をすれば、コスパの答えは明らかです。

もう一点、私が長年感じてきた「構造的な問題」があります。「人気で高く売れる車」は同時に「狙われやすい車」でもある、という逆説です。私自身、11回の買い替えを経験する中で、特定の高人気SUVを検討した際に「この車種は盗難ランキング上位だ」という事実が選択の重みになったことがあります。車は資産ですが、資産価値が高いほど守るコストも高くなります。この視点を車選びの段階から持っている人は、日本ではまだ少ない。購入後に盗難対策コストを後乗せで考えるのではなく、購入時のトータルコスト計算に盗難リスクを最初から織り込む習慣を持ってほしいと思います。

今回の調査で、1件あたりの支払保険金が「ランクルが市場に増えた結果として高くなっている」という構造も指摘されています。車両価格が上がれば保険金も上がり、窃盗組織にとっての「旨み」も増す。盗難と車両価格は連動して上昇するという、自動車市場全体が抱える悪循環の一端が、この数字に映し出されています。MOTA車買取やカーセンサーで自分の車の現在価値を確認することは、「売却の準備」という文脈だけでなく、「この車が今いくらの損失リスクを抱えているか」を把握するためにも意味を持ちます。今週中に一度確認しておくことをお勧めします。MOTA車買取

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