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03/18|日産ムラーノ12年ぶり復活と逆輸入制度の落とし穴|たかまさの車×交通デイリー

たかまさニュース(車・道路交通など)

新型SUVの購入を検討していて、「ムラーノが12年ぶりに日本に帰ってくる」というニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。実は今、日本の新車ラインナップに静かな地殻変動が起きています。

2026年2月16日に国土交通省が「米国製乗用車の認定制度」を創設し、日産・トヨタ・ホンダが相次いで米国生産車の日本導入を発表しました。

話題性は高く、北米での評価も本物です。しかし、FP記者として「この制度の車を実際に購入するとトータルコストはどうなるか」を正直に整理すると、今すぐ飛びつく理由は見えてきません。この記事では制度の仕組みと最新動向を整理したうえで、財務面からのリスクを具体的に掘り下げます。

📌 国交省「米国製乗用車認定制度」の全貌。日産・トヨタ・ホンダが動き出した”逆輸入ドミノ”の背景と仕組み

なぜこの制度が生まれたのか。認証コストの壁と日米合意の経緯

従来、海外で生産された乗用車を日本市場に導入するには、国土交通省が定める保安基準への適合確認が必要でした。メーカーが型式指定を取得するには1モデルあたり数千万円規模の検査費用と多大な工数が発生しており、これが米国工場製の車両を日本に持ち込む際の大きな障壁でした。

この制度的な障壁を解消したのが、2025年7月22日の日米枠組み合意です。この共同声明における日本側のコミットメントを受け、国土交通省は2026年2月16日に「米国製乗用車の認定制度」を創設・即日施行しました。米国で製造され、米国の安全基準に適合していると認証された乗用車について、日本国内での販売のために追加試験を行わず受け入れる内容です。

適用対象は自動車メーカー等による正規輸入に限定されており、並行輸入業者への適用はありません。認定を受けた車両には、車体後面に紅白の星形デザインの標識を表示するとともに、自動車検査証にも認定制度車である旨が記載されます。

相次ぐ導入発表。トヨタ・日産・ホンダが一気に動いた

この制度の施行後、国内主要メーカーが連鎖的に動き始めています。

トヨタは2026年から米国生産の「カムリ」「ハイランダー」「タンドラ」の3車種を順次、日本市場に導入すると発表しました。経済産業省がトヨタ「ハイランダー」を公用車として導入したことも話題になり、制度活用のシンボル的な存在となっています。

日産は2026年3月17日、米国テネシー州のスマーナ工場で生産する4代目「ムラーノ」を2027年初頭に日本市場へ投入すると正式発表しました。ムラーノは日本では2015年に2代目の販売が終了しており、今回の復活は約12年ぶりとなります。現行の4代目は2024年10月に北米で発表され、2025年初頭からアメリカ・カナダで販売が始まっているモデルです。

J.D.パワー「2026年米国自動車耐久品質調査(VDS)」では2年連続でミッドサイズSUV最高の信頼性評価を獲得しており、北米市場での評価は確かなものがあります。パワートレインは日産独自のVC(可変圧縮)ターボ技術を搭載した2リッターエンジン(KR20DDTT型)で、最高出力240hp・最大トルク352Nmを発揮。9速ATと組み合わされ、4WD・FFの両駆動方式が用意されます。

ホンダも米国生産車の日本導入を進めており、アキュラブランドの「インテグラ タイプS」とホンダブランドの「パスポート トレイルスポーツ エリート」の2モデルを2026年後半から順次投入すると発表しています。

見落とされがちな重要事項。ハンドルの位置と車両サイズの現実

ここで必ず確認しておきたいのが、ハンドル位置の問題です。今回の認定制度は「米国仕様のまま」輸入することを基本としており、米国は右側通行・左ハンドルです。日産ムラーノの公式発表ではハンドル位置の明言はありませんでしたが、テネシー州工場の米国仕様車を認定制度で輸入するという発表の性質上、左ハンドルになる可能性が高いと見られています。

加えて、4代目ムラーノのボディサイズは全長4,900mm・全幅1,981mm・全高1,725mmです。全幅2メートルに迫るこのボディは、東京をはじめ都市部の立体駐車場や機械式コインパーキングでは使えない施設が続出します。日常的に都市部で使う車として検討するなら、サイズの問題は購入前に実地確認が必要です。

MOTA使ってみた!

📌 FP目線で読む「認定制度車」の購入リスク。リセール・維持費・車検の3つの現実

リセールバリューに前例がない。査定担当者も困る未知の領域

FPとして最初に押さえておきたいのが、リセールバリューの不透明さです。

通常、中古車の査定額は「同車種の中古市場における流通量」と「海外輸出需要」の2軸で決まります。日本に正規輸入されてきた左ハンドルのプレミアムブランド車(フェラーリや一部のポルシェなど)はブランドプレミアムと希少性が査定額を支えますが、「日本の大手自動車メーカーが認定制度を活用して輸入した左ハンドルの日産車」というカテゴリーは前例がありません。

買取業者の査定担当者が参照するオートオークションのデータベースには、この車種の実績がゼロの状態です。流通量が少なく左ハンドルという制約が付くとなると、査定金額が大幅に低く設定されるリスクがあります。

「国内でも売りにくく、北米輸出でも現地には同じ車が溢れている」という状況になりうることは、購入前に理解しておく必要があります。残価が読めない車はトータルコストが計算できません。これは購入判断における本質的な問題です。

維持費の現実。21インチタイヤ・燃費・大型SUVの年間コスト試算

4代目ムラーノには21インチアルミホイールが採用されています。これほど大型のタイヤは1本あたりの価格が高く、4本交換で20万円から30万円規模の出費になることも珍しくありません。スタッドレスタイヤのセットまで用意するとタイヤコストだけで維持費に相当な負荷がかかります。

燃費についても、旧型ムラーノのオーナー口コミを見ると都市部での実燃費は9〜10km/L程度という報告が多く見られます。4代目は2リッターVCターボに刷新されたため旧型より効率向上が期待できますが、全幅2メートル近い大型SUVが都市部で大幅に改善されるとは見込みにくいです。現在のガソリン価格水準では、月々のガソリン代も試算に必ず加えておくべきです。

自動車税についても確認しておきましょう。2リッターエンジンの場合、自動車税の年額は36,000円です。排気量区分では抑えられていますが、重量税・任意保険・車検費用を合わせた年間維持費の合計は、購入前に一度試算することをお勧めします。

車検と制度運用の不透明さ。新制度の初期リスクを理解する

認定制度の運用は2026年2月に始まったばかりです。認定制度車の車検手続きに慣れた指定整備工場は、少なくとも初期段階では限られる可能性があります。左ハンドル車の車検自体は対応している工場も多いですが、認定制度特有の書類処理・車検証記載の確認などにおいて、現場が手探りになる場面が出てくることは十分に予測できます。

公式な国内価格はまだ発表されていませんが、現在の北米市場でのムラーノは日本円換算でおよそ450万〜600万円の価格帯に位置しています。輸送費・ディーラーマージン等が加わる国内販売価格はさらに上乗せとなる可能性が高く、この価格帯で競合するのはランドクルーザー プラド・ハリアー上位グレード・レクサスRXなど、すべて右ハンドルの車種です。

「同予算で右ハンドルの選択肢が豊富にある」という事実は、購入判断における重要な比較軸です。

たかまさはこう見ている

国交省の認定制度の創設自体は、日本の消費者に新たな選択肢を与えるという意味で評価できます。長年、輸入の認証コストが壁となって日本に入ってこなかった北米仕様の車が選べるようになること、日米貿易の文脈から生まれた制度が実際に消費者の選択肢を広げることは、業界ウォッチャーとして興味深い動きです。

ただし、私がFP記者として正直に言うのであれば、「制度の整備は先行したが、買った後のコスト計算が追いついていない」という状況です。私がこれまで11回の車の買い替えを通じて一貫して意識してきたのは、「購入価格の魅力よりも、売却価格の読みやすさ」という視点です。今回の認定制度車は、まさに「売却価格が読めない」という状況にあります。残価が読めなければトータルコストが計算できません。つまり購入判断の根拠が成立しないわけです。

左ハンドルという問題も、好みの話として片付けるべきではありません。都市部で日常使いするドライバーにとって、立体駐車場での発券機・精算機対応、狭い道路での幅寄せ確認、高速道路の合流時の視界確保など、実用上の不便さは毎日積み重なります。これは感情的な好みではなく、定量化できるストレスコストです。

私の判断軸は「今すぐ飛びつく車ではない」です。ムラーノの北米での評価は本物であり、VCターボエンジンの技術力も信頼できます。しかし今の段階では、リセール前例ゼロ・左ハンドルによる日常利便性の問題・車検運用の不透明さという3つのリスクが重なっており、購入後のトータルコストを試算できません。まずは2027年の発売後に実際の販売価格と維持コストを確認し、最初の車検が回ってくる2030年前後に中古市場でどのような価格がつくかを見届けてからセカンドオーナーとして検討する、という戦略のほうが財務的に合理的です。「話題の新型に乗りたい」という気持ちは理解できますが、その気持ちにどれだけのコストを払うかは、冷静に計算してほしいと思います。MOTA車買取

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