
三菱が9月2日、7年ぶりとなる新型パジェロを世界初披露しました。復活そのものより、諸元表のほうが面白い。全長は先代ロングから20mm増えただけなのに、ホイールベースは90mm伸びています。エンジンは3.2Lから2.4Lへ縮んだのに、最大トルクは441N・mから480N・mへ増えました。
2026年9月2日に世界初披露された5代目パジェロ。ボディサイズは全長4,920mm・全幅1,925mm・全高1,910mm(20インチタイヤ装着車)で、4代目のロングボディ(4,900×1,875×1,870mm)から全長はわずか20mm増にとどまります。一方でホイールベースは2,780mmから2,870mmへ90mm延び、3列7名乗車のパッケージングを実現しました。
出典:三菱自動車ニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV『パジェロ』を世界初披露』(2026年9月2日)
「クロカンのフルモデルチェンジは、大きく重くなるもの」と思い込んでいませんか。
三菱自動車は2026年9月2日、クロスカントリーSUV「パジェロ」をフルモデルチェンジし、5代目として世界初披露しました。国内向け生産が2019年8月に終了してから7年ぶりの復活です。公表されたボディサイズは全長4,920mm・全幅1,925mm・全高1,910mm(20インチタイヤ装着車)。4代目のロングボディが4,900×1,875×1,870mmでしたから、全長はわずか20mmしか伸びていません。
ところがホイールベースは2,780mmから2,870mmへ90mm延びています。全長がほぼ据え置きのままホイールベースだけが伸びれば、前後オーバーハングの合計は2,120mmから2,050mmへ、差し引き70mm短くなる計算です。室内を広げながら、同時に対地障害角を稼ぐ。最低地上高230mm、アプローチアングル30.4度という数字は、この寸法配分の結果として出てきています。
本記事では、公式リリースの主要諸元を4代目パジェロ・トライトン・ランドクルーザー250と突き合わせ、寸法・トルク・走破ジオメトリの3点から新型パジェロの立ち位置を検証します。最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点で、価格が未発表のまま予約受注が始まるスケジュールの読み方を整理します。

📌 諸元表を先代と並べる、全長+20mmでホイールベース+90mm・オーバーハング70mm短縮の設計

新型の諸元表を見るとき、私はまず全長とホイールベースを引き算します。差がオーバーハングの合計です。ここが縮んでいるクルマは、悪路で引っかかりにくい。新型パジェロはその引き算が先代より70mm小さくなっていました。
4,920mmの中に3列7人、寸法を据え置いたまま居住性を稼いだ手順
公式リリースが公表したボディサイズは、全長4,920mm・全幅1,925mm・全高1,910mm、前後トレッド1,630mm、ホイールベース2,870mm(全高・トレッド等は20インチタイヤ装着車の値)です。4代目のロングボディは全長4,900mm・全幅1,875mm・全高1,870mm、ホイールベース2,780mm、トレッド前後1,570mmでしたから、差分は全長+20mm、全幅+50mm、全高+40mm、ホイールベース+90mm、トレッド+60mm。全長だけが突出して小さい伸び幅になっています。
この配分が効いているのが室内です。新型は3列7名乗車のパッケージングを採用し、2列目シートに150mmのロングスライドとタンブル機構を備えました。3列目についても、大人が座った際のヘッドクリアランスとつま先の収まりに配慮したとリリースは明記しています。ホイールベースで稼いだ90mmは、そのまま前後席の間隔と3列目の足元に配分されていると読むのが自然でしょう。全長を伸ばして室内を広げる手法は簡単ですが、それをやると取り回しと対地障害角の両方を失います。新型はその安易な道を選んでいません。
2.4Lで480N・m、先代3.2L・441N・mを39N・m上回るダウンサイジング
パワートレインは、ワイドレンジのシングルVGターボを採用した専用開発の2.4Lクリーンディーゼルエンジンと、新開発のスポーツモード付き8速オートマチックトランスミッションの組み合わせです。最大トルクは480N・m(一部仕様は470N・m)。4代目の最終型が搭載していた3.2Lの4M41型は190PS・441N・m、変速機は5速ATでしたから、排気量を3,200ccから2,439ccへ約24%縮めながら、最大トルクを39N・m(約8.8%)上積みし、変速段数を3段増やしたことになります。
ベースとなるのは、ピックアップトラック「トライトン」に積まれる4N16型と同系の2.4Lです。日本仕様トライトンのGSRは150kW(204PS)・470N・mで、こちらは2ステージターボを採用していました。対して新型パジェロはワイドレンジのシングルVGターボで480N・mに到達しているとリリースは説明しています。過給機の段数を増やさずに広い回転域を1基で受け持つ設計は、部品点数と重量、そして長期の信頼性で有利です。170以上の国と地域に展開してきた車種が、次年度以降に約100カ国へ広がることを考えれば、整備環境が均一でない市場でも成立させる意図が読み取れます。
地上高230mm・アプローチ30.4度、ランドクルーザー250と並べた立ち位置
走破ジオメトリの公表値は、最低地上高230mm、アプローチアングル30.4度、ランプブレークオーバーアングル22.6度、デパーチャーアングル25.8度(いずれも20インチタイヤ装着車)です。ランドクルーザー250の最低地上高が215〜225mmであることを踏まえると、新型パジェロは20インチという大径タイヤを履いた状態で、それを5〜15mm上回る地上高を確保していることになります。全長がほぼ同じ(4,920mmと4,925mm)で全幅は1,925mmとむしろ狭い、という組み合わせも見逃せません。
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式独立懸架、リヤが新開発の5リンク式リジッド。ラダーフレームは高張力鋼板の採用拡大とフレーム断面積の拡大でねじり剛性と曲げ剛性を高め、ボディマウントも強化されました。ブレーキは18インチの大径ローターと電動ブースターの組み合わせです。三菱がこの開発で「悪路快適性」という指標を立てたと明言している点は、単に走破できることではなく、荒れた路面を通過するときの乗員の疲労までを設計目標に含めたという宣言だと受け止めています。

📌 S-AWC初採用とSS4-II、4WD4モード×ドライブ7モードが担う走りの中身

SS4-IIは駆動をどう配るかの仕組み、S-AWCは4輪の駆動力と制動力をどう束ねるかの仕組みです。パジェロにS-AWCが載るのは今回が初めて。三菱の看板技術2つが、ようやく同じ車体の上で組み合わさりました。
デザインコンセプトは「グランドカリスマ-泰然自若-」。初代から受け継ぐ水平基調のスクエアなプロポーションをベースに、T字型ヘッドライト、初代のロールバーに着想を得たCピラー、背面タイヤを想起させるリヤのヘキサゴンモチーフを採り入れています。フロントグリルは横桟タイプとハニカムタイプの2種類が設定されます。
出典:三菱自動車ニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV『パジェロ』を世界初披露』(2026年9月2日)
4WD4モード×ドライブモード7種、AYC統合が変える曲がり方
4WDシステムは従来どおり「スーパーセレクト4WD-II(SS4-II)」で、2H(後輪駆動)、4H(フルタイム4WD)、4HLc(センターデフロック)、4LLc(ローギヤ+センターデフロック)の4モードを任意に選べます。新型で加わったのが車両運動統合制御システム「S-AWC」です。フロントブレーキで左右輪間のトルクを制御するAYC(アクティブヨーコントロール)、駆動力配分を担うASTC、制動時のABSを統合制御する構成で、パジェロへの搭載は今回が初めてとリリースは明記しています。
ドライブモードはNORMAL/ECO/GRAVEL/SNOW/MUD/SAND/ROCKの7種類。ROCKを独立したモードとして持っている点は、岩場を明確な想定シーンに含めたという意思表示です。トライトンも同じ7モード構成を採っていますが、そこにAYCまで束ねたS-AWCが乗ることで、悪路での「進む」だけでなくオンロードでの「曲がる」の質まで設計対象に入りました。3列7名を乗せて長距離を走る車体で、四輪の駆動力と制動力を能動的に配り分ける。これが今回のいちばん大きな中身の変化だと見ています。
14.3インチ2枚と3連メーター復活、遮音ガラスとヤマハ12スピーカー
インテリアは、14.3インチディスプレイ2枚で構成されるモノリスディスプレイが中核です(一部仕様は12.3インチ)。ここに、歴代パジェロを象徴した3連メーターをデジタルの「マルチメーター」として復活させ、高度計・方位計・温度計に加えて車体の前後左右の傾き、そしてAYCの制御量まで表示します。メーター背景は時間経過に合わせて変化する全16種類が用意されました。単なる懐古ではなく、S-AWCの働きを可視化する器として3連メーターを使い直した設計です。
快適装備では、フロントガラスに加えて前後ドアガラスにも遮音ガラスを採用し、ボディ各部にも遮音対策を施しています。ヤマハと共同開発したプレミアムオーディオ「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」は12スピーカーとデュアルアンプ構成で、車速に応じて音量と音質を自動補正します。空調は前席から3列目まで対応する3ゾーン独立温度コントロール式フルオートエアコン。安全面では緊急時車線維持支援機能[ELA]とSRSセンターエアバッグを三菱として初採用し、エアバッグは計8個。3Dマルチアラウンドモニターには、4HLc/4LLc選択時に自動起動する「フロントアンダーフロアビュー」も備わります。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり新車発表を取材してきて、復活車の多くは「名前だけ帰ってきた」で終わります。新型パジェロは違いました。諸元表を先代と並べたとき、寸法・トルク・走破角のすべてで理屈の通った差分が出ている。ここまで数字が揃う復活は珍しいと思います。
今回の発表で最も注意して読むべきなのは、公表された内容と、まだ公表されていない内容の線引きです。公式リリースには寸法・パワートレイン・駆動系・装備までが詳細に書かれている一方、価格とグレード構成、燃費、車両重量は一行も出ていません。報道によれば国内は10月1日に予約注文を開始し、価格は10月末に発表、発売は12月17日の予定とされています。つまり予約受付の開始が、価格の発表より先に来る順序です。走りの数字を全部先に見せ、値札だけを後から出す。この順番自体が、三菱の商品への自信の表れであると同時に、購入検討者にとっては情報が非対称な期間が約1か月続くことを意味します。
FPの視点で言えば、この1か月の使い方が実務上いちばん重要です。私自身、これまで11台の乗り換えを経験してきて痛感するのは、予約列に並んでから価格を知ると、判断が「買うか買わないか」ではなく「どこを削るか」に変わってしまうということです。おすすめしたいのは、価格発表を待つ間に自分側の予算上限を先に決めておくこと。本格クロカンは車両価格だけでなく、重量に連動する自動車重量税、ディーゼルの燃料費、20インチタイヤの交換費用、そして2t超級の車体を停められる駐車場という4つの固定費が同時に乗ってきます。仮に先代の最終型(2019年のFINAL EDITION、453万円台)を出発点に、上級SUVの近年の値上がり幅を重ねて考えるなら、支払い総額のシミュレーションは車両価格の1.2倍程度を目安に置いておくと、10月末の発表で慌てずに済みます。
そのうえで、私が新型パジェロにいちばん価値を感じるのは、全長を20mmしか伸ばさなかったという一点です。近年の上級SUVは、室内と存在感を稼ぐために全長5m級へ広がってきました。その流れに乗らず、外寸を据え置いてホイールベースだけを延ばし、余った寸法を走破角に回した。日本の道と駐車場で使えるサイズに踏みとどまったこの判断は、タイで生産して日本へ運ぶという構造になってもなお、開発陣が日本市場を見ていた証拠だと思います。クロスカントリーSUVが「大きさで格を示す商品」から「寸法の中でどれだけ機能を積めるかを競う商品」へ戻れるかどうか。新型パジェロの12月は、その試金石になります。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべて三菱自動車ニュースルーム(https://www.mitsubishi-motors.com/jp/newsroom/)の公式ニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV『パジェロ』を世界初披露』(2026年9月2日)の画像ダウンロード欄に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像・サブ画像とも新型『パジェロ』の外観カットです。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
