
レクサス初のBEV専用3列シートSUVが、ついにベールを脱ぎました。5,100mmのフラッグシップサイズに95.82kWhロングレンジ電池と前後ダブルモーター、そしてLEXUS初採用が6項目。日本発売は2026年冬予定です。
2026年5月7日にトヨタテクニカルセンター下山で世界初公開されたレクサス新型TZのプロトタイプ。「Driving Lounge」をコンセプトに、レクサス初のBEV専用3列シートSUVとして登場。スピンドルボディに幾何学グラフィックと発光エンブレムを組み合わせた新世代デザインで、Cd値0.27の優れた空力性能を実現しています。
「BEV専用3列シートSUVが、家族の移動体験をどう変えるか?」と問われたとき、その回答がこの一台に集約されました。
トヨタ自動車は2026年5月7日、トヨタテクニカルセンター下山でレクサス新型「TZ」のワールドプレミアを開催し、レクサス初のBEV専用3列シートSUVを世界初公開しました。全長5,100mm×全幅1,990mm×全高1,705mm・ホイールベース3,050mm、新開発プラットフォーム採用で前後ダブルモーターによるシステム最高出力300kW(407.8ps)、0-100km/h加速5.4秒、95.82kWhロングレンジ電池搭載で航続620km(WLTC・暫定値)。日本での発売は2026年冬頃を予定しています。
注目すべきはレクサス初採用となる6項目の新装備で、ロングレンジ仕様の312セル電池パック、助手席・セカンドシートのオットマン、AC・DCを並列配置する2in1電動開閉式充電リッド、ボディカラー同色の発光エンブレム、60GHzレーダーを用いた車内置き去り通知システム、そしてV10エンジンサウンドを再現するインタラクティブマニュアルドライブが揃いました。バッテリーは76.96kWhのスタンダードレンジと95.82kWhのロングレンジの2種展開で、150kW急速充電なら満充電量の約10〜80%まで約35分です。
本記事では、TZの主要諸元とレクサス初6装備の中身、LX/LM/アルファードとのパッケージング位置取り、欧米3列BEV競合(KIA EV9・Hyundai IONIQ9・BMW iX)との関係、そして発売までの想定カレンダーを整理します。FP視点での総コスト試算は末尾で軽く触れます。
📌 新型レクサスTZの全貌。5,100mmフラッグシップ×407.8ps×95.82kWh電池の中身

まず主要諸元から押さえます。TZは新開発BEV専用プラットフォームを採用し、低床ロングホイールベースで3列パッケージングを成立させています。バッテリー2種展開とLEXUS初装備6項目が、このモデルの位置付けを物語っています。
サイドビューは3列シートSUVに相応しい伸びやかなシルエット。低重心かつロングホイールベースの新開発プラットフォームにより、高い空力性能とゆとりある室内空間を両立しました。アウトサイドドアハンドルにはセミフラッシュタイプを採用しています。
新開発プラットフォーム×前後ダブルモーター×95.82kWh電池の組み合わせ
TZのボディサイズは全長5,100mm×全幅1,990mm×全高1,705mm、ホイールベース3,050mm、車両重量2,630kg。最小回転半径はダイナミックリヤステアリング(DRS)装着時で5.4m、非装着時で5.8mです。タイヤは255/45R22と255/55R20の2サイズ展開で、駆動方式はAWD一択となります。
パワーユニットは前後ダブルモーター構成で、各167.0kW(227ps)・268.6N・m。これを四輪駆動力システム「DIRECT4」が統合し、システム最高出力300kW(407.8ps)を発生します。0-100km/h加速は5.4秒、加速時には前輪:後輪=60:40から0:100の範囲で駆動配分を制御、コーナリング時には80:20から0:100で最適配分を行い、コーナー脱出時はトルクベクタリングで姿勢を整える設計です。
バッテリーは2種類用意され、スタンダードレンジが104セル・総電力量76.96kWh、ロングレンジが新開発の312セル・総電力量95.82kWh。レクサス初採用となる312セル電池パックがロングレンジ仕様の航続距離を支えます。航続距離はWLTC(日本・22インチ)620km、WLTP(欧州・20インチ)530km、CLTC(中国・22インチ)640km、EPA(北米・20インチ)300マイル超。すべて開発中の暫定値ですが、150kW急速充電でSOC10〜80%まで約35分です。
レクサス初採用6装備が示すBEVフラッグシップ移行のシグナル
TZのLEXUS初採用装備は6項目に及び、それぞれがBEVラグジュアリー領域への本気度を示しています。第一に312セル電池パック(ロングレンジ仕様)、第二に助手席とセカンドシートのオットマン(レクサスSUVで初)、第三にAC・DCを並列配置する2in1電動開閉式充電リッド、第四にボディカラー同色の発光エンブレム、第五に60GHzレーダーを用いた車内置き去り通知システム(Cabin Detection Alert System)、第六がV10エンジンサウンドを再現するインタラクティブマニュアルドライブです。
特筆すべきは60GHzレーダーの採用で、3列目頭上の電波式センサーにより人の呼吸といった微小な動きまで検知できる仕様。ブランケットを被って静かに眠る幼児まで検知対象に含めるという設計思想は、3列シートSUVに求められる家族向け安全性能の新基準を示しています。発光エンブレムはL字マーク内をボディカラー同色にすることで、点灯時と非点灯時の見栄えを統一する細やかな配慮も施されました。
インタラクティブマニュアルドライブ、BEVに「変速演出」を取り戻す
走りの演出として注目されるのが、新採用のインタラクティブマニュアルドライブです。8速の仮想有段ギヤをパドルシフトで選択し、マニュアルトランスミッションを操作しているような感覚で駆動力を制御。さらにLEXUSを象徴するV10エンジンサウンドを取り込み、シフトショックまで再現する徹底ぶりです。視覚的にシフト位置を把握できるシフトガイドメーターも組み合わせ、聴覚・視覚・体感の三位一体でBEVに「変速の高揚感」を取り戻す設計となっています。
この方向性は、2026年4月23日に先行公開されたホンダ「シビック e:HEV RS」が採用したHonda S+ Shift(プレリュード由来・有段変速機様の駆動レスポンス)と問題意識を共有します。BEV/HEVで「運転の楽しさ」を確保する課題に対し、トヨタ系とホンダ系がそれぞれ「仮想多段変速+エンジン音再現」という独自の解法を打ち出してきた格好で、2026年は「BEV/HEVに変速演出を組み込む」というトレンドが確立した年として記録されそうです。

📌 LX・LM・RZとの位置取り、欧米3列BEV競合と価格仮説1200万円帯

TZは既存レクサスSUVのどの位置に収まり、海外3列BEV勢とどう戦うのか。LX・LM・RZとのサイズ位置取りと、欧米の競合構造、そして発売までの想定カレンダーを整理します。
LX・LM・RZとのサイズ位置取り、レクサスSUVラインアップの隙間を埋める
TZの全長5,100mm・全幅1,990mmはレクサスのフラッグシップSUV「LX」と同寸法ですが、全高はTZの方が180〜190mm低く、ホイールベースは200mm長い設計です。この寸法配分は「BEV専用プラットフォームを最大限活用したロングホイールベース化」の典型で、フロア下に大容量電池を敷き詰めながら、室内空間を最大化する狙いが明確に表れています。
レクサスSUVラインアップで見ると、TZの位置は次のように整理できます。フラッグシップSUVのLX(V6 3.5Lツインターボ+ハイブリッド・1,450万円〜2,100万円台)が「ICE時代の最上位」、ラグジュアリーMPVのLM(V6 2.4Lハイブリッド・1,520万円〜2,030万円台)が「ショーファードリブン最上位」、そしてBEV専用の現行RZ(2列5人乗り)が「BEVエントリー」というラインアップに対し、TZは「BEV専用×3列ファミリー」という新セグメントを切り拓きます。
サイズ的にはLXと並ぶフラッグシップ寸法ながら、3列パッケージング・BEV専用・新世代インテリア装備(オットマン/パノラマルーフ/センサリーコンシェルジュ/21スピーカーMark Levinson)でアルファード/ヴェルファイア層のショーファードリブン需要にも応えられる構成。レクサスは「ICE時代のフラッグシップ=LX」と「BEV時代のファミリーフラッグシップ=TZ」の二本柱体制へと進む方向性を示しました。
欧米3列BEV競合(IONIQ 9・EQS SUV・iX・EX90・EV9)との位置取り
欧米3列BEV市場でTZが正面から競合するのは、現代モーターグループのHyundai IONIQ 9(110.3kWh・WLTP620km・302〜436ps・北米5万ドル〜)とKIA EV9(99.8kWh・WLTP505km・204〜384ps・北米5.5万ドル〜)です。両車は2026年に欧州・北米で本格展開を進めており、ファミリー向けBEVフラッグシップのシェアを伸ばしています。TZは航続距離(WLTC日本620km)・最高出力(407.8ps)の両軸で正面から対抗する数値配分で、特にIONIQ 9と航続値で並ぶ点が注目されます。
プレミアム側ではBMW iX xDrive50(105.2kWh・WLTP570km・516ps)、メルセデスEQS SUV 450+(108.4kWh・WLTP600km・360ps)、Volvo EX90 Twin Motor(111kWh・WLTP581km・408ps)が想定競合となります。TZの407.8psはVolvo EX90と同水準で、BMW iXに次ぐ高出力。さらに新採用のインタラクティブマニュアルドライブ、Mark Levinson 21スピーカー、Forged bamboo(四国竹材)、Sensory Concierge等の独自装備で「日本らしいクラフトマンシップ」を差別化軸に据える戦略が見えます。
北米市場ではトヨタ自動車九州ではなく米国ケンタッキー工場での生産が予想されており(兄弟車のトヨタ・ハイランダーEVと同ライン)、米充電規格NACSポートの標準搭載は、テスラ・スーパーチャージャーへのアクセスを担保する重要装備となります。日本仕様はNACSとCHAdeMOの両対応で、急速充電インフラの過渡期にも対応可能な設計です。
価格仮説1200万〜1600万円帯と2026年冬発売までの想定カレンダー
TZの日本価格は本記事執筆時点で未発表ですが、現行RZ(790万〜950万円・2列)と上位LX(1,450万〜2,100万円)の中間帯に収まると見るのが現実的でしょう。BEV専用フラッグシップ・3列7人乗り・95.82kWhロングレンジ・LEXUS初装備6項目という構成を踏まえると、エントリーのスタンダードレンジで1,200万円前後、最上位ロングレンジAWDで1,500万円〜1,600万円前後が想定レンジとなります。北米予想価格5万ドル〜(カーディーラーレポート系媒体報道)は為替次第ですが、現状1ドル150円換算で約750万円となり、これは北米IONIQ 9エントリーと同水準、北米LEXUS RZと同水準帯です。
発売までの想定カレンダーは、2026年5月7日のワールドプレミア(プロトタイプ)を起点として、2026年夏〜秋に詳細仕様・正式価格の発表、2026年冬(11〜12月想定)に日本受注開始、2027年初頭から本格納車が想定されます。先行受注は2026年秋頃に開始される可能性が高く、レクサスオーナー向けの優先案内などのプロセスを経る可能性があります。アルファード/ヴェルファイア・ハイブリッド/PHEVと購入検討を並行している層には、2026年秋までに比較材料が出揃う形になりそうです。
📌 たかまさはこう見ている

TZは「BEV専用×3列×フラッグシップ」という新セグメントを切り拓く一台です。20年間自動車業界を取材してきた立場で読み解くと、装備一括投入の構造的な意味と、レクサスのBEV戦略の転換点が見えてきます。
TZが示した最大のメッセージは、「レクサスがBEV専用フラッグシップに本気を出した」という事実です。これまでのRZ(2列・専用BEVプラットフォーム)は良くも悪くも「レクサス初のBEV」というエポックメイキング寄りのモデルでしたが、TZはLX・LMと並ぶフラッグシップ寸法に、3列7人乗り・95.82kWhロングレンジ・407.8ps・航続620km・新装備6項目を一括投入してきました。レクサスSUVラインアップで初めて「BEVがファミリー層のフラッグシップ選択肢として完結する」モデルが揃ったことになります。
もう一つの示唆は、インタラクティブマニュアルドライブの採用です。仮想8速+V10エンジンサウンド+シフトショック再現というアプローチは、ホンダがプレリュード/シビック e:HEV RSに搭載したHonda S+ Shift(5/14掲載の関連記事で取り上げました)と問題意識を共有します。BEV化が進むほど「運転の楽しさ=変速の高揚感」という側面が失われる課題に対し、トヨタ系とホンダ系の両陣営が「仮想多段変速+エンジン音再現」という独自の解法で応えてきた。これは2026年BEV市場の重要トレンドであり、今後の各社BEVがこの方向性に追随するかどうかが見どころとなります。
家族向けBEV市場の競合構造も大きく動きそうです。Hyundai IONIQ 9とKIA EV9が日本市場で本格展開を始める前にTZがレクサスブランドで先手を打つ形となり、特にIONIQ 9が日本市場で苦戦中の現状(2026年4月時点でブランド認知度の壁)を考えると、TZは欧米競合より日本でのプレゼンスを優位に進められる可能性が高いと考えられます。トヨタグループのディーラー網と既存LEXUSオーナー基盤を活かせる強みは無視できません。
価格未発表のため最終判断は秋以降になりますが、FP視点で5年総コストを試算する場合、TZの想定価格帯1,200万〜1,600万円に対して、CEV補助金(2026年度暫定上限85万円・BEV用)、自動車税のグリーン化特例(新車登録翌年度75%減税)、エコカー減税100%(自動車重量税)の活用前提で、初期コストの実質減額は90万円〜100万円規模になる見込みです。年間ガソリン代に相当する電気代差(年1万km走行・自宅充電前提)は10万円前後、5年で50万円規模が削減できる計算ですが、車重2,630kgでの自宅100V充電実用性、充電インフラの整備状況、自治体追加補助金の有無で結論は変動します。FP視点での詳細試算は、正式価格と仕様確定後の続報で深掘りします。
世界自動車メーカーの「ICEからBEVへの移行ペース」を測る尺度として、ファミリー向け3列フラッグシップBEVの完成度は重要な指標です。レクサスTZは、その指標で2026年時点における日本メーカーの到達点を示しました。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてLEXUS公式『TZ World Premiere』ページ(https://lexus.jp/models/tz/worldpremiere/)から引用しています。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。

