
BMWが6月30日、基幹SUV「X5」の5代目を世界初公開しました。最大のニュースは、1つの車体にガソリン・ディーゼル・PHEV・EV・水素の5つのパワートレインを載せたこと。初のフルEV「iX5」は578馬力・航続845kmで、EVをエンジン車と同じ土俵に並べてきました。
2026年6月30日に世界初公開された5代目BMW X5(写真は初のフルEV「iX5 60 xDrive」)。BMW初となる「1つの車体に5つのパワートレイン」を掲げ、ガソリン・ディーゼル・PHEV・BEV、そして後から加わる水素を同一モデルで展開します。フロントは新デザイン言語「ノイエ・クラッセ」の縦型キドニーと新採用の「ダブルX」ライトが特徴です。
「EVかエンジンか、どちらかを選ばせるのがこれからのクルマだ」と思い込んでいませんか。
BMWは2026年6月30日、基幹SUV「X5」の5代目(型式G65)を、米サウスカロライナ州のスパルタンバーグ工場で世界初公開しました。1999年に「SAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)」という区分を自ら生み出した初代から数えて5世代目。今回の目玉は華やかなデザインでも最高出力でもなく、1つの車体にガソリン・ディーゼル・PHEV・BEV(電気自動車)・水素という5種類のパワートレインを載せる、BMWとして初めての設計思想です。
その象徴が、シリーズ初のフルEVとなる「iX5 60 xDrive」。前後2モーターでシステム最高出力578PS、BMW史上最大の141kWh級バッテリーを積み、WLTPで最大845kmという航続距離をうたいます。800Vアーキテクチャで最大460kWの急速充電に対応し、10分の充電で最大350km分を回復するとされます。EVを「もう一つの選択肢」ではなく、5枚のカードの1枚として同じ土俵に並べた点にこそ、今回のニュースの本質があります。
本記事では、5パワートレイン戦略の中身と各モデルの実力、初のフルEV「iX5」の数字、そして日本価格が未定の今、現行型を「買うか待つか」をどう考えるかを、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点も交えて整理します。

📌 新型X5の核心、1つの車体に5つのパワートレインを載せた「技術開放」戦略の中身

5つの動力を1台に載せると聞くと欲張りに感じますが、狙いは逆です。EV普及の速さが国ごとに違う今、動力を一つに絞らず「選べる」ようにしておくことこそが、取りこぼしを防ぐ最も現実的な備えなのです。
ガソリン・ディーゼル・PHEV・BEV・水素、5枚のカードを1台に
BMWが今回いちばん強く打ち出したのは、デザインでも最高出力でもなく「選べること」です。5代目X5は、48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたガソリンとディーゼル、プラグインハイブリッド(PHEV)、そしてシリーズ初のフルEV「iX5」を用意し、さらに後から水素燃料電池車「iX5 Hydrogen」が加わります。同じ車名・同じ車体で5種類の動力を選べるのは、BMWの歴史で初めてです。開発責任者のミヒャエル・アーラース氏は、これは既存のエンジン車に電池を後付けしたものではなく、最初から5つの動力を収めるために設計した車体だと説明しています。
この考え方をBMWは「技術開放(テクノロジー・オープンネス)」と呼びます。EVへの一本化を急ぐのではなく、充電インフラや電気料金、走り方が国・地域によって大きく違う現実を踏まえ、市場ごとに最適なパワートレインを選んでもらうという戦略です。EV普及が速い地域にはiX5を、長距離移動や充電環境が整わない地域にはディーゼルやPHEVを届ける。1つの生産ラインで全部を賄えるようにしておけば、需要が読み切れない電動化の過渡期でも取りこぼしが出にくい。派手さはありませんが、極めて現実的な一手です。
各モデルの実力、iX5 578PSからM60e 612PSまで
公表済みの数字を動力別に見ると、性格の違いがはっきりします。エントリーのガソリン「X5 40」は3.0L直6+48Vで最高出力394PS(従来型比19PS増)、0-60mph加速5.1秒。ディーゼル「40d」は3.0L直6ディーゼルで約313PS・最大トルク約670N・m、48Vの支援で高効率な長距離巡航を得意とします。走りの頂点はPHEVのMパフォーマンス版「M60e」で、直6+モーターの合計612PS・0-60mph 4.5秒。そしてフルEVの「iX5 60 xDrive」は前後2モーターで578PS、0-100km/h加速4.4秒です。数字だけを見れば、いちばん速いのはPHEV、いちばん航続が長いのはEVという、動力ごとの得意分野がそのまま出力と航続に表れています。
ここで見落とせないのが、欧州価格の並びです。フルEVのiX5 60 xDriveは本国で10万2,800ユーロからと発表され、612PSのPHEV「M60e」とほぼ同じ価格帯に置かれています。EVを「割高な特別なグレード」にせず、性能で選ぶPHEVと横並びにする。これはレクサスが新型ESでHEVとBEVを同額に並べたのと同じ、電動車時代の値付けの作法です。動力の違いを価格のヒエラルキーに直結させない考え方が、プレミアムSUVの世界にも広がってきました。
ノイエ・クラッセ由来の新技術、ダブルXライトとスレート内装、水素はトヨタと共同開発
デザインと内装も一新されました。外観はBMWの新世代デザイン言語「ノイエ・クラッセ」を採用し、縦型に発光するキドニーグリルと、BMW初となる「ダブルX」の灯火デザインが顔を作ります。ドアハンドルは埋め込み式の「ウイングレット」に変わり、軽く触れるだけで電動ドアが開く仕組みです。内装ではBMWとして世界初となる「スレート(石板)」の加飾を選べるほか、フロントガラス下部の全幅に情報を映す「パノラミック・ビジョン」、助手席用の追加ディスプレイなど、EV「iX3」から始まったノイエ・クラッセ世代の装備がそのまま流れ込んでいます。
もう一つ、日本の読者に見逃せないのが水素モデルの存在です。2028年に加わる「iX5 Hydrogen」は、トヨタ自動車と共同開発した第3世代の燃料電池システムを積み、航続最大750km・5分未満の水素充填をうたいます。EV・PHEV・エンジンに加えて水素まで1つのモデルで抱える構えは、まさに「技術開放」を象徴するものです。日独の協業が、プレミアムSUVという最も目立つ舞台で形になろうとしています。

📌 初のフルEV「iX5」の実力と、生産8月・発売11月末という時間軸、日本導入と買い時

初のフルEV「iX5」は数字だけ見れば文句なしです。ただ、航続845kmを支える大容量電池は車重を2.9トンまで押し上げます。速さと航続の裏で、重さがどこに効いてくるかまで見ておきたいところです。
ガソリン48Vの「X5 40 xDrive」。同じ車体でありながら、EVのiX5とは異なりエンジン車ならではの伝統的なプロポーションを保ちます。BMWによれば外観の差はパワートレインではなくグレード(M Sport等)で決まる設計で、5つの動力が見た目上は一体感を持って共存します。
578PS・航続845km・10分で350km、iX5が示すEVの到達点と2.9トンの現実
初のフルEV「iX5 60 xDrive」の数字を、もう少し掘り下げます。前後2モーターでシステム最高出力578PS、0-100km/h加速4.4秒。BMWの第6世代eDrive技術と800Vアーキテクチャを採用し、WLTP航続は装備により645〜845km、最大460kWの急速充電で10分に最大350km分を回復します。10〜80%の充電はおよそ22分。搭載する141kWh級(米国仕様は144kWh)のバッテリーは、BMWが量産車に積んだ史上最大の容量で、新開発の120mm円筒セルを初採用しています。双方向充電にも対応し、クルマから家庭やほかの機器へ給電できます。
ただし、大容量の代償もあります。iX5の車両重量は約2,900kgと、2.9トンに達します。航続を伸ばすほど電池が重くなり、重くなるほど電費とブレーキ・タイヤの負担が増える。この「重さと航続のトレードオフ」はEV共通の課題で、iX5も例外ではありません。BMWは車体剛性の向上、標準装備の可変ダンパー、EV・PHEVに設定されるロール抑制システム、そして走行制御を一括で司る新コンピューター「ハート・オブ・ジョイ」で、この重さを走りの質に変えようとしています。数字の大きさを素直に喜ぶだけでなく、重量が生む維持コスト(タイヤ・電費)まで含めて評価したいところです。
生産8月・エンジン車11月末発売、日本導入は2027〜2028年か
時間軸も押さえておきましょう。新型X5の生産は2026年8月にスパルタンバーグ工場で始まり、内燃機関モデルの発売が2026年11月末、EV・PHEVは2027年初頭という順で立ち上がります。フルEVのiX5は同工場で作られる初の電気自動車で、隣接する新工場で第6世代の高電圧バッテリーも現地生産されます。V8を積むMパフォーマンス版はさらに後、水素のiX5 Hydrogenは2028年の予定です。
日本への導入時期は、本記事執筆時点でBMWジャパンから正式発表がありません。ただ、欧州発表から日本導入まで通常半年〜1年のずれがあることを踏まえると、日本ではおおむね2027年から2028年にかけての上陸が見込まれます。米国の希望小売価格はガソリンのX5 40が6万9,800ドル、フルEVのiX5 60 xDriveが7万9,800ドルから。現行G05型の日本価格がエントリー1,298万円・M60i 1,597万円であることと、装備刷新・電動化対応・円相場を考え合わせると、新型の日本価格は現行から一段上がる可能性が高いと見ておくのが現実的です。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり新車発表を取材してきましたが、1つの車体に5つの動力を用意すると宣言したメーカーは記憶にありません。これは技術の誇示ではなく、「動力はお客さまが選ぶもの」という、覚悟を伴った引き算の戦略だと私は見ています。
「1台で5パワートレイン」と聞くと総花的な折衷案に見えますが、私はむしろ逆に読みます。これは「EVかエンジンか」という二択そのものを、メーカー側が引き受けた宣言です。EV普及の速度は国によって全く違い、日本のように充電インフラも電気料金も一様でない市場では、動力を一つに絞ることがそのまま取りこぼしにつながります。1つの車体で全部を賄えるようにしておけば、需要が読めない過渡期でも生産を止めずに済む。派手さはありませんが、これは負けにくい設計です。EVを割高な特別枠にせず、612PSのPHEVと同じ価格帯にiX5を置いた欧州の値付けにも、同じ「動力で差別しない」思想が透けて見えます。
FP視点で、日本のユーザーが今すべき判断を考えます。ポイントは「日本価格が未定で、上陸は2027〜2028年」という時間差です。現行G05型のX5は、5代目の登場が世界で報じられた今、モデル末期に入ります。一般論として、フルモデルチェンジ直前の型は新車値引きが出やすくなる一方、数年後のリセールバリュー(残価)は新型登場で押し下げられやすいのが中古車市場の常です。私自身、11回の買い替えで「型落ち直前の値引き額」と「3年後に落ちる残価」を天秤にかけてきましたが、輸入プレミアムSUVはこの残価の振れ幅が国産車より大きい。目先の値引き数十万円が、3年後の売却で消える可能性は十分にあります。逆に、長く乗り切る前提なら、熟成された現行型を割安に買うのは合理的な選択です。
では、どう構えるか。新しい物好きで最新技術に価値を感じる方、とりわけ自宅に充電環境があり長距離もEVでこなしたい方は、iX5の日本導入と価格発表を待つ価値があります。反対に、SUVとしての完成度と乗り出しコストを重視し、3〜5年で乗り換える見込みの方は、値引きの出やすい現行型を狙うのも十分に賢い。大事なのは「新型が出る=待つべき」という思い込みを一度外して、自分の保有年数と充電環境で判断することです。5つの動力から選べる時代とは、裏を返せば、選ぶ責任がこれまで以上に私たち自身に返ってくる時代でもあります。クルマ選びの軸が「エンジンか電気か」から「自分はどう使うか」へ移りました。新型X5は、その問いを最も大きな舞台で突きつけてきました。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてBMW Group PressClub(https://www.press.bmwgroup.com/)の公式プレスリリースおよび報道用フォトデータベースから引用しています。ヒーロー画像は「iX5 60 xDrive」(プレスリリース『The new BMW X5』2026年6月30日)、サブ画像は「X5 40 xDrive」(フォトID:P90646139)の報道用公式画像です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。

