
レクサスが9月10日、LSを一部改良しました。入口価格は1年前の公式価格表から303万円上昇。ところが同じグレード同士で比べた値上げは35万円だけです。差の正体は、価格表から消えた10仕様にあります。
2026年9月10日に一部改良・発売されたレクサスLS(写真は最上級のLS500h“EXECUTIVE”/マンガンラスター)。今回の改良でセンタートンネルの補強とREDSを採用し、操縦安定性と乗り心地を磨きました。価格表に並ぶのはハイブリッドのLS500hだけとなり、全6仕様・1,414万〜1,805万円の構成です。
「高級車の値上がりは、値札を書き換えただけ」。そう思い込んでいませんか。
LEXUSは2026年9月10日、フラッグシップセダン「LS」を一部改良し、全国のレクサス店を通じて発売しました。新しい価格は1,414万〜1,805万円です。2025年9月の前回改良時、公式価格表の最安はLS500“I package”の1,111万円でしたから、LSの入口は1年足らずで303万円上がったことになります。
ところが2枚の公式価格表を仕様ごとに引き算すると、景色が変わります。同じLS500h“F SPORT”同士の値上げは35万円にすぎず、303万円の約9割は「ガソリン車」と「I package」という2段の階段が価格表から消えた分でした。仕様数は16から6へ、4割未満にまで絞り込まれています。
本記事では、新旧価格表の突き合わせによる303万円の分解、グレードで非対称になった値上げ幅、REDSやパノラマルーフといった改良の中身、そして米国で先に幕を下ろしたLSとの対比を整理し、最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から燃料費を含めた選び方を検証します。

📌 LS価格表の引き算、入口1,414万円への303万円高は「値上げ35万円」と「消えた2段の階段」

最安値の比較だけでは「303万円の値上げ」に見えます。しかし仕様ごとに行をそろえて引き算すると、値札の書き換えは35万円。残りは「もう選べなくなった仕様」の値段だと分かります。
2025年9月の16仕様から6仕様へ、2枚の公式価格表を並べて比べる
比較の土台は、トヨタ自動車グローバルニュースルームが公開している2本のリリースです。2025年9月25日の前回改良時、LSの価格表にはハイブリッドのLS500hとV6ツインターボのLS500が、それぞれ“EXECUTIVE”“version L”“F SPORT”“I package”の4グレード×2WD/AWDで並ぶ16仕様がありました。最安はLS500“I package”(2WD)の1,111万円、最高はLS500h“EXECUTIVE”(AWD)の1,773万円です。
2026年9月10日のリリースに載った価格表は、LS500h“EXECUTIVE”“version L”“F SPORT”の3グレード×2WD/AWDの6仕様だけです。LEXUS公式サイトの価格ページも同じ6仕様の構成になっています。なお、今回のリリース本文にはLS500やI packageを「廃止した」という記述はありません。本記事では、公式価格表から10仕様の行が消えたという事実として扱います。
1,111万円から1,414万円まで、303万円を3段に分解すると純粋な値上げは11.6%
入口価格の上昇303万円を、2025年9月の価格表の中で段階的にたどってみます。まず、同じ“I package”のままガソリンのLS500(1,111万円)からハイブリッドのLS500h(1,257万円)へ移ると+146万円。次に、LS500hの中で“I package”から“F SPORT”(1,379万円)へ上がると+122万円。最後に、“F SPORT”同士で2025年9月から2026年9月へ移ると+35万円です。1,111万円→1,257万円→1,379万円→1,414万円と、3段の階段を上った合計がちょうど303万円になります。
LS500h“F SPORT”(ホワイトノーヴァガラスフレーク/画像は2025年9月25日改良時のもの)。当時はLS500hの中でI packageの一つ上に位置する中間グレードでしたが、2026年9月の改良後はこのF SPORTがLSの入口になりました。2WDの価格は1,379万円から1,414万円へ35万円上がっています。
構成比にすると、パワートレーンの階段が48.2%、グレードの階段が40.3%、同一仕様の値上げは11.6%です。つまり「LSが303万円高くなった」という見出しの約9割は、値札の書き換えではなく「ガソリン車」と「I package」という選択肢そのものが価格表から外れたことで生まれています。値上げ率で見ても、F SPORTの35万円は旧価格1,379万円に対して2.5%。原材料費や物流費の上昇が続く中では、突出した改定幅とは言えません。
値上げ幅の非対称、version Lは+47万円・最上級EXECUTIVEは+32万円
もう一つ、価格表の引き算で浮かび上がるのがグレードごとの値上げ幅のばらつきです。“F SPORT”が+35万円(2.5%)、“version L”が+47万円(3.0%)、最上級の“EXECUTIVE”が+32万円(1.9%)。3グレードの中で最も値上げ幅が小さいのは、最も高いEXECUTIVEでした。2WDとAWDで上げ幅は完全に同じです。
この結果、グレード間の価格差も動きました。F SPORTからversion Lまでの差は178万円から190万円へ12万円広がり、version LからEXECUTIVEまでの差は168万円から153万円へ15万円縮まっています。今回のリリースで明記された装備の変更は、全車へのパノラマルーフのメーカーオプション設定と、EXECUTIVEのオーナメントパネル切子調カットガラスの選択肢拡充で、version Lだけに装備が追加されたという記載はありません。価格表の上では、中間のversion Lを選ぶ理由が相対的に薄くなり、「走りのF SPORTか、後席のEXECUTIVEか」の二択へ購入者の視線を寄せる値付けと読めます。

📌 REDS・センタートンネル補強とパノラマルーフ、改良の中身と米国で先に幕を下ろしたLSとの逆転

登場9年目の改良で手を入れたのは、見た目ではなく骨格と足回りでした。米国では2026年型でLSの歴史に区切りが付くなか、日本ではハイブリッドを残して磨き続ける、正反対の道を選んでいます。
今回全車にメーカーオプション設定されたパノラマルーフ(IR・UVカット機能付/チルト&アウタースライド式/前後分割電動サンシェード付)。前方にメッシュディフレクターを備え、開放時の風切り音を抑えながら後席まで開放感を届ける設計です。
センタートンネル補強とREDS、AVS・EPSの再チューニングで狙った乗り味
トヨタ公式リリースによれば、今回の改良の柱は走りの基本性能です。これまで補強してきたフロントエンドとリヤエンドに加え、新たにセンタートンネルを補強してボディ中央の剛性を高めました。さらにリヤサスペンションブレースとラゲッジブレースには、熱硬化樹脂を塗布して焼き付ける「レスポンス向上減衰構造(REDS)」を採用し、高周波の振動を抑えています。そのうえで電子制御サスペンションのAVSと電動パワーステアリングのEPSをチューニングし、ロールやピッチの揺れが少ないフラットな姿勢と、ドライバーの意図に忠実な操舵応答を狙っています。
パワートレーンは従来と同じ3.5L V6の8GR-FXS(最高出力220kW/299PS)にモーター(132kW/180PS)を組み合わせるマルチステージハイブリッドです。LEXUS公式サイトの主要諸元では、WLTCモード燃費は2WDが13.8km/L、AWDが12.2km/L。全長5,235mm・全幅1,900mm・ホイールベース3,125mm、車両重量は2,230〜2,370kgです。価格表がハイブリッドだけになった今、LSは「重さ2.2トン超のショーファーセダンを、ハイブリッドで静かに走らせる」一本の商品として再定義されたと言えます。後方の「LEXUS」ロゴ化など外観の変更は小さく、改良の重心はあくまで乗り味にあります。
パノラマルーフは全車オプション、EXECUTIVEは後席エアコン吹き出し口と引き換え
装備面の目玉は、全車にメーカーオプション設定されたパノラマルーフです。ただしLEXUS公式サイトとメーカーオプション価格表の注記を読むと、選ぶ前に知っておきたい条件があります。最上級のEXECUTIVEでパノラマルーフを選ぶと、リヤエアコンの左右ルーフレジスター(天井の吹き出し口)が非装着になります。後席に人を乗せるためのグレードで、後席の空調と開放感のどちらを取るかという選択になるわけです。
主要諸元の注記では、パノラマルーフ装着時は室内高が1,165mmから1,145mmへ20mm低くなり、車両重量はEXECUTIVEで10kg、version LとF SPORTで20kg増えます。EXECUTIVEではこのほか、オーナメントパネルに切子調カットガラスを選べる内装色が拡充されました。後席で過ごす時間を重視する方ほど、ルーフの開放感と天井吹き出し口の有無を販売店の実車で確かめてから決めるのが賢明です。
米国は2026年型ヘリテージエディション250台で幕、日本はハイブリッドを残して改良を続ける
海外に目を向けると、LSの置かれた状況はさらに鮮明になります。Lexus USA Newsroomは2025年9月26日、2026年型のLSを「LS 500 AWD Heritage Edition」の250台だけとし、LSの歴史をたたえる最終年のモデルと位置付けました。希望小売価格は配送・手数料込みで99,380ドルからです。米国メディアの報道によれば、ハイブリッドのLS500hは2025年型で先に姿を消していました。
つまり米国は「ハイブリッドを先に落とし、ガソリンのV6ツインターボで幕を引く」、日本は「ガソリンを価格表から外し、ハイブリッドに走りの改良を施して続ける」という、ちょうど逆の順番をたどっています。レクサスブランドを米国で立ち上げた旗艦が、いまは日本市場向けの改良で命脈を保っている構図です。国内でも一時は終売を予想する媒体報道が相次いでいた一方、メーカーは乗り味への投資を続けている。この温度差をどう読むかが、次の章の判断材料になります。
📌 たかまさはこう見ている

LSの改良を「また高くなった」で片付けると本質を見誤ります。起きたのは、1,100万円台から乗れたフラッグシップの入口が閉じたこと。台数を追わず、一台あたりの価値を上げる方向への舵切りです。
なぜレクサスは価格表を6行まで削ったのか。背景には、大型セダン市場そのものの縮小があります。米国ではLSが最終年を迎え、日本でもレクサスの商品展開はRXやNX、LMといったSUV・ミニバンが中心になっています。ガソリンとハイブリッド、4グレードを並行して造り続けるには、台数が見合わなくなっていたはずです。20年あまり新車の価格表を追ってきた立場から見ると、「選択肢を削り、残した仕様の乗り味に投資する」のは、台数を追えなくなった旗艦車種によく見られる延命の手法です。センタートンネル補強やREDSという地味で原価のかかる改良を、このタイミングで入れてきたことからも、LSを「ショーファーカーとして長く使える一台」に絞り込む意図が読み取れます。
ほぼ同じ金額を払う人にとって、何が変わったのか。FP視点で燃料費を試算します。1年前に1,411万円で選べた旧LS500“version L”(2WD・WLTCモード10.1km/L)と、今回1,414万円の入口になったLS500h“F SPORT”(2WD・同13.8km/L)を、年1万km・ハイオク180.9円/L(資源エネルギー庁、2026年9月7日時点の全国平均)で比べると、年間燃料費は約17.9万円と約13.1万円。差は年約4.8万円で、車両価格の差3万円は8ヶ月ほどで取り戻せる計算です。自動車税は同じ3.5L以下の区分で変わらず、2026年3月末の環境性能割廃止で取得時の税負担もありません。ただし、ここで引き算を忘れてはいけません。旧入口のLS500“I package”1,111万円と比べれば、5年分の燃料費差約24万円を差し引いてもなお約279万円の差が残ります。F SPORTは装備も走りの仕立ても上位ですが、「1,100万円台でLSに乗る」という選択肢が新車から消えた事実は、燃費の数字では埋まりません。
では、どう判断すべきか。私自身11台を乗り継いできて痛感するのは、フラッグシップほど「どのグレードを買うか」が手放すときの評価まで左右するということです。新車でLSを選ぶなら、価格差が153万円まで縮んだ今、後席に人を乗せる機会が多い方は中間のversion Lより最初からEXECUTIVEを検討する価値が高まりました。自分で運転する時間が長い方は、入口であり走りの仕立ても専用のF SPORTが素直な選択です。そしてEXECUTIVEでパノラマルーフを選ぶ場合は、天井の吹き出し口がなくなる点を必ず確認してください。一方で、1,100万円台という旧来の予算感でLSに乗りたい方にとって、現実的な選択肢は改良前モデルの認定中古車や登録済み未使用車になります。価格表から消えた行は、中古車市場で探すしかないからです。フラッグシップの本当の値上げ幅は、値札の数字ではなく、価格表から消えた行が語っています。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてトヨタ自動車グローバルニュースルーム(https://global.toyota/jp/newsroom/)の公式プレスリリース『LEXUS、「LS」を一部改良』(2026年9月10日・2025年9月25日)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像はLS500h“EXECUTIVE”(マンガンラスター)、サブ画像は2025年9月改良時のLS500h“F SPORT”(ホワイトノーヴァガラスフレーク)と2026年9月改良で設定されたパノラマルーフです。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
