
「DS4」がたった4年で名前を変えました。新しい名はN°4。同時にディーゼルとプラグインが消え、1.2Lの3気筒へ一本化。Cセグメントのプレミアムで排気量が縮むのは違和感ですよね。今日はその逆ダウンサイジングの正体を読み解きます。
「DS N°4 ETOILE HYBRID」のフロントマスク。バンパー両端から中央DSロゴへ集まる光のラインが一文字のシグネチャーを形成し、日中でも点灯します。価格は625万円(税込)です。
出典:Stellantisジャパン株式会社 公式ニュースルーム『DSオートモビル 新型「N°4 ETOILE HYBRID」を発売』(2026年5月13日)
「フランス車のプレミアムは2.0Lディーゼルが本命」。そう思い込んでいませんか。
Stellantisジャパンは2026年5月13日、DSオートモビルの中核ハッチバック「DS4」を「N°4 ETOILE HYBRID(ナンバー フォー エトワール ハイブリッド)」へ車名変更したうえで発売しました。価格は625万円(税込)。1.6Lディーゼル「BlueHDi」と「E-TENSE」プラグインハイブリッドは消滅し、1.2Lガソリンターボ+48Vマイルドハイブリッドの145psへ一本化されています。
WLTCモード燃費は20.1km/L。発売記念の「Launch Edition」はスライディングガラスルーフを装備し、26台限定で644万円。クリスタルパールとカシミアの新2色を各13台設定しました。
この記事では、改名と1.2L化の戦略的意味、欧州価格との比較、そして納車を待つドライバーが本当に得するのかどうかを、車載目線で検証します。
📌 「DS4」が「N°4」へ。命名統一と1.2L化の意味

改名は単なるブランディングではありません。フラッグシップのN°8、SUVのN°7と並べることで、DSオートモビルは命名を一気にN°シリーズへ統一しました。N°4はその中核のCセグメントを担います。
命名理念「N°」がブランド全体を貫いた瞬間
DSオートモビルは2025年に欧州で発表したフラッグシップ「DS N°8」、コンパクトSUV「DS N°7」に続き、Cセグメントハッチバックを「N°4」と命名しました。フランス語で「番号」を意味する「N°」を全モデルに冠することで、ブランドのアイデンティティを一気に揃えた格好です。
日本ではDS4が2022年4月28日に発売されてから約4年。中期マイナーチェンジで車名変更まで踏み切るのは輸入車でも珍しい判断で、「DS 4」の数字単独表記から「DS N°4」へ切り替えることで、サブブランドではなく独立した上位ブランドであることを視覚的にも強調する狙いが見えます。リアドアにはブランド名「DS Automobiles」と「N°4」が直接刻印されており、改名は単なるバッジ替えではなく、外装の構成自体が新しいシリーズとして再設計されています。
1.6Lディーゼル+PHEV廃止・1.2L 48Vマイルドハイブリッド一本化
パワートレイン構成の変化は車名変更以上のインパクトです。旧DS4には1.6L「BlueHDi」ディーゼル、1.6Lガソリン「PureTech」、そして1.6Lガソリン+12.4kWhバッテリーの「E-TENSE 225」プラグインハイブリッドが用意されていました。今回のN°4 ETOILE HYBRIDでは、これらをすべて切り捨て、1.2Lガソリンターボ+48VマイルドHV+6速デュアルクラッチATの1グレード構成に絞り込んでいます。
システム合計最高出力は145ps、駆動用バッテリーは48V・0.9kWhの小容量パックです。エンジン単体の最高出力は136ps相当で、6速DCTに内蔵された電動モーター(15kW)が発進と低速域をアシストする構造。市街地ではモーターのみで走る区間も生まれ、信号待ち再加速や駐車場内の取り回しで静粛性が一段上がります。
「重量を捨てる」のが今の欧州プレミアムの正解
1.6Lディーゼルや12.4kWhのプラグインを切ったのは、欧州CO2規制への対応もありますが、それ以上に「車重を増やさず電動化する」という方向転換が背景にあります。プラグインのE-TENSE 225は乾燥重量で1.7t超まで膨らんでいましたが、48VマイルドHVなら追加重量は数十kg程度。ボディサイズ全長4,400mm・全幅1,870mm・全高1,470mmはほぼ据え置きで、軽快なハンドリングを取り戻す狙いが透けて見えます。
結果として20.1km/LというWLTC燃費はディーゼル時代に肉薄する数字。Cセグメントプレミアムは欧州でも「軽くて電動」の方向に揃いつつあり、DS N°4はその先頭グループに合流したと言えます。

📌 625万円の値ごろ感を欧州価格・装備・限定車から検証する

625万円は高いのか妥当なのか。欧州価格を円換算で比較すると、輸入プレミアムにしては珍しい「逆ザヤ」が見えてきます。同じ価格帯のドイツ勢と並べると、N°4の立ち位置がクリアになります。
「DS N°4 ETOILE HYBRID」のインテリア。ブラックのアルカンターラとパリの伝統装飾「クル・ド・パリ」パターンを多用し、10.25インチのデジタルインストルメントパネルとヘッドアップディスプレイを連携させています。
出典:Stellantisジャパン株式会社 公式ニュースルーム『DSオートモビル 新型「N°4 ETOILE HYBRID」を発売』(2026年5月13日)
欧州価格38,640ユーロ=約637万円・日本価格は実は12万円安い
ドイツのDS本国サイトでは、N°4のベースグレード「Pallas」が38,640ユーロから設定されており、為替換算(1ユーロ165円前後)で約637万円に相当します。日本仕様の「ETOILE HYBRID」はベースグレードの「Pallas」ではなく装備の充実した上位グレード相当ですが、円建て625万円は欧州ベース価格を約12万円下回るという珍しい構図です。
輸入車は通常、本国価格に輸入諸経費・関税・国内マージンが乗って2〜3割増しになります。今回のように為替換算で本国を下回るのは異例で、ステランティスジャパンが「日本市場を初期から取りに行く」価格戦略を明確に取ったと読めます。シャンゼリゼ限定の旧DS4が2025年に575万円だったことを考えると、装備強化分を加味した625万円は十分に攻めた値付けです。
装備:19インチLIMAホイール・40灯シーケンシャル・10.25インチHUD連動
ETOILE HYBRIDの装備は欧州の上位グレード「Étoile(エトワール)」とほぼ同等です。19インチ「LIMA」アロイホイールはブラックオニキス調+ダイヤモンドカットで、空力性能と転がり抵抗低減を両立。リアコンビランプは40灯のフルLEDシーケンシャルインジケーターを採用し、流れる光の演出で夜間の存在感を際立たせます。
インテリアではブラックのアルカンターラ素材をシート・ドアトリム・エアベントに使い、パリの伝統装飾「クル・ド・パリ」パターンを刺繍として施しました。10.25インチのデジタルインストルメントパネルはヘッドアップディスプレイと連動し、ナビゲーション・オーディオを視線移動を最小化したまま操作できます。フロントシートは高密度フォームで、長距離運転の疲労を物理的に削る設計です。
26台限定Launch Editionは「市場の温度感テスト」
26台限定の数字には意味があります。一桁上の限定車(例えば100台、200台)にしなかったのは、初期の購買温度を見極めるテストロットとしての性格が強いからです。644万円の価格設定はETOILE HYBRIDより19万円高ですが、追加装備はスライディングガラスルーフ1点のみで、19万円の価値があるかの判断はユーザーに委ねられます。
新色のカシミア(やわらかなグレー)とブランアルバータ(青味を帯びた白)はクリスタルパールやノアールペルラネラとは異なる質感を狙った彩度設計で、特にカシミアは光の角度で表情を変える独特の塗装。Launch Editionでクリスタルパール13台・カシミア13台と均等配分しているのは、新色の市場反応を比較するための布石とも読めます。
たかまさはこう見ている

DS4を実車で何度か運転した経験から言うと、N°4の1.2L化は決して退化ではありません。フランス車のCセグメントは「軽くて電動」の方向へ完全に舵を切った、その象徴的な一台だと感じます。
11台の自家用車を買い替えてきた経験から見ると、車名変更を伴うマイナーチェンジは「ブランドが自分のポジションに迷っている」サインであることが多いものです。しかしN°4の場合は逆で、N°8とN°7という強力な兄弟車が先に存在し、N°4がそこに整合させる形で名前を揃えたという順序です。改名は混乱ではなく整理であり、ブランドの軸は明確にN°シリーズへ収束しました。
1.2L化を「ダウンサイジング」と読むのは半分正しく、半分間違いです。確かに排気量は1.6Lから1.2Lへ縮みましたが、48V化により低速トルクの応答は逆に良くなっており、街乗りでの「重さ」は減っています。プラグインを切ったことでバッテリーの劣化交換コスト(PHEVは10年で50〜80万円規模になり得る)を構造的に回避できる点も、長期所有を前提にすれば大きな利点です。一方で完全BEV「N°4 E-TENSE」は欧州先行で2026年中に発売予定で、日本導入も近い将来あり得ます。今買うべきか、E-TENSE導入を待つかは、走行距離の多寡と充電環境で判断が分かれます。
欧州本国価格を円換算で下回る625万円の値付けは、ステランティスジャパンの本気を示す数字です。プレミアム輸入車で本国価格を下回るケースはほぼ例外的で、過去5年でも数えるほど。名前を変えるブランドは、価格と本気度で答え合わせをします。

