
ボルボが7月8日、7人乗りEVのフラッグシップSUV「EX90」を発売しました。価格は1,199万円から。そして7月31日、国のCEV補助金の交付額が公表されました。20.8万円です。399万円の日産リーフには129万円が出ます。価格が倍以上のクルマに、補助金は6分の1しか出ません。
2026年7月8日に日本発売されたボルボEX90(写真はエントリーの Plus Twin Motor)。106kWhの大容量バッテリーと800Vテクノロジーにより一充電走行距離650km(WLTCモード)を実現し、3列7人乗りのゆとりある室内を備えます。ボルボ初の本格的なソフトウェア・デファインド・カーとして、OTAで機能が進化し続ける設計です。
出典:ボルボ・カー・ジャパン プレスサイト『ボルボの新たなフラッグシップSUV、「ボルボEX90」発売』(2026年7月8日)
「補助金は、高いクルマほどたくさん出る」と思い込んでいませんか。
ボルボ・カー・ジャパンは2026年7月8日、電気自動車の7シーター フラッグシップSUV「ボルボEX90」を発売しました。106kWhの大容量バッテリーと800Vテクノロジーで一充電走行距離650km(WLTCモード)、全グレードが全輪駆動、最上位のTwin Motor Performanceはシステム最高出力合算値500kW(680ps)で0-100km/h加速4.2秒。価格は1,199万円から1,399万円で、ボルボ自身が「XC90プラグインハイブリッドと同レンジの価格設定」と説明する、堂々たる旗艦モデルです。
そして発売から3週間あまりが過ぎた7月31日、一般社団法人次世代自動車振興センターが更新した「令和7年度補正CEV補助金 銘柄ごとの補助金交付額」に、EX90の3仕様が新たに掲載されました。交付額は、1,199万円のPlus Twin Motorも、1,399万円のUltra Twin Motor Performanceも、そろって20.8万円。同じ一覧に載る日産リーフB7 Xは129万円、トヨタbZ4X Zは130万円です。価格が倍以上するEX90のほうが、交付額は6.2分の1しか出ません。
本記事では、EX90全3仕様の価格と補助金交付額を一次資料から整理し、この差を生んでいる「税抜840万円」という分岐点の仕組みを解き明かします。そのうえで106kWh・650kmという商品そのものの実力を確認し、最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、補助金を当てにしない1,199万円の組み立て方を検証します。

📌 EX90全3仕様1,199万〜1,399万円とCEV補助金20.8万円、交付額を決める二段構えの計算

補助対象車両一覧は、車名と金額だけ見ても意味がつかめません。金額の左側にある「定価(税抜)」の列と並べて読むと、制度がどこで線を引いているかが見えてきます。
1,399万円でも1,199万円でも20.8万円、価格差200万円が交付額に反映されない
まず押さえておきたいのは、CEV補助金の交付額が「車種ごと」ではなく「銘柄ごと」に決まるという点です。次世代自動車振興センターが公表する別表には、車名・グレード・型式・車両コード・定価(税抜)・補助金額が1行ずつ並びます。EX90はここに車両コード1269〜1271の3行で掲載され、Plus Twin Motorが208千円、Ultra Twin Motorが208千円、Ultra Twin Motor Performanceも208千円。1,199万円から1,399万円まで200万円の価格差がありながら、交付額はまったく動きません。
ここで確認できるのが、税抜の定価が10,900,000円・12,263,636円・12,718,182円と記載されていることです。これに1.1を掛けると1,199万円・1,349万円・1,399万円となり、ボルボ・カー・ジャパンが7月8日に公表した価格と1円単位まで一致します。つまりこの一覧は、メーカー公表価格をそのまま税抜換算して積み上げた、正真正銘の一次資料です。
税抜840万円が分岐点、補助額に0.8を乗じる規定が効いている
なぜ20.8万円なのか。答えは同じ別表の注記にあります。「定価は最新のメーカー希望小売価格(税抜)。メーカー希望小売価格(税抜)が840万円以上の車両については、0.8を乗じた補助額を記載している」という一文です。EX90は最も安いPlus Twin Motorでも税抜1,090万円で、この線を250万円も上回っています。
逆算すると構造がはっきりします。20.8万円は26万円に0.8を乗じた数字です。つまりEX90はまず評価によって26万円という水準を与えられ、そのうえで840万円ルールにより2割を差し引かれて20.8万円になっている。二段構えの計算です。同じボルボでも、税抜890万円のES90 Plus Single Motor Extended Rangeは36万円に0.8を乗じた28.8万円、税抜840万円を下回るEX30 Ultra P5 Long Rangeは36万円がそのまま交付されます。EX30とEX90では、車両価格が2倍以上違うのに交付額は逆に0.58倍。制度の中では、高いEVを買うほど受け取れる額が小さくなります。
金額差は6.2倍、しかし補助率で見ると開きは約14倍に広がる
比較対象を輸入車の外に広げると、落差はさらに鮮明になります。同じ別表で日産リーフB7 Xは129万円、トヨタbZ4X Z(FWD)は130万円。EX90の20.8万円との差は金額にして6.2倍です。ただしこれは絶対額の比較にすぎません。
実際に家計が受け取る恩恵を測るなら、車両価格に対する比率で見るべきです。EX90 Plus Twin Motorは1,199万円に対して20.8万円で補助率1.73%。リーフB7 Xは税込518.9万円に対して129万円で24.86%、bZ4X Zは税込550万円に対して130万円で23.64%です。補助率で並べると、リーフとEX90の開きは6.2倍ではなく約14.3倍。「上限130万円に引き上がった」という報じられ方の裏側で、価格帯によってまったく別の制度が動いているのが実態です。

📌 106kWh・650kmと世界初の乗員検知、補助率1.7%で買うEX90の実質負担

補助金が薄いことと、クルマの価値が低いことはまったく別の話です。ここからは制度をいったん脇に置いて、EX90が1,199万円で何を提供しているのかを諸元で確認していきます。
新たにフラッシュサーフェイス・デザインを採用し、面で構成された外板が静粛性と空力に寄与します。フロントのトールハンマーヘッドライトには1.3メガピクセルのハイディフィニション・ピクセルLEDを採用し、ロービームからハイビームまで配光を最適化。リアはボルボ伝統の縦型テールランプを現代的に再解釈しています。
出典:ボルボ・カー・ジャパン プレスサイト『ボルボの新たなフラッグシップSUV、「ボルボEX90」発売』(2026年7月8日)
800Vと106kWhで650km、上位は680psで0-100km/h 4.2秒
EX90は800Vテクノロジーを採用し、106kWhの大容量バッテリーで一充電走行距離650km(WLTCモード)を確保しています。全グレードが全輪駆動で、最上位のTwin Motor Performanceはハイパフォーマンスモーターを搭載してシステム最高出力合算値500kW(680ps)、最大トルク870Nm、0-100km/h加速4.2秒。7人乗りの大型SUVでありながら、スポーツカーに迫る加速性能を備えます。
プラットフォームは新しい「SPA2アーキテクチャー」で、ハードとソフトを統合した技術基盤「スーパーセット・テックスタック」に基づく、ボルボ初の本格的なソフトウェア・デファインド・カーです。中核となるコアコンピューティングシステム「HuginCore」にはNVIDIAのDRIVE AGX Orinを採用し、毎秒約254兆回の演算能力で安全システムから駆動、インフォテインメント、バッテリー管理までを統合制御します。14.5インチのセンターディスプレイにはGoogleを搭載し、上位モデルにはBowers & Wilkinsの25スピーカーとDolby Atmosによる立体音響が組み合わされます。
荷室まで見張る世界初のオキュパント・センシング、置き去りを構造で防ぐ
EX90で見逃せないのが、安全思想の実装です。車内には2台のドライバーモニタリングセンサーとステアリングの静電容量センサーを備える「ドライバー・アンダスタンディング・システム」を標準装備。注意力散漫や眠気を検知し、警告に反応がない場合は安全に停止して緊急通報まで行います。
さらに注目したいのが「オキュパント・センシング(乗員検知システム)」です。オーバーヘッドコンソール、天井のリーディングランプ、荷室に内蔵した60GHzのレーダーセンサーにより、ラゲッジスペースを含む車内全域をカバーする世界初のシステムとされています。眠っている子どもの呼吸による胸の動きのような1mm未満のわずかな動きまで検知し、人かペットかをアルゴリズムで判別。車内に置き去りを検知するとロックを掛けられないようにし、空調を作動させて熱射病や低体温症のリスクを下げます。毎年繰り返される車内置き去り事故に対し、注意喚起ではなく車両構造で答えを出した装備だと私は受け止めています。
FP視点の実質負担、補助金を当てにしない前提で1,199万円を組む
ここでFPの視点から整理します。EX90 Plus Twin Motorの実質負担は、車両価格1,199万円から国のCEV補助金20.8万円を差し引いた1,178.2万円。仮にリーフ並みの補助率24.9%が適用されていれば約298万円が交付され、実質901万円になっていた計算ですから、その差は約277万円です。この277万円は、購入者が「制度上受け取れなかった額」に相当します。
ただし、これをもって割高だと結論づけるのは早計です。EX90が比較されるべきはXC90プラグインハイブリッド(税抜1,176万円台)であり、ボルボ自身が同レンジの価格設定だと明言しています。同格のPHEVと同じ土俵で、走行時の燃料費がゼロに置き換わるという点が本質です。年間1万km走行・電費約5.5km/kWh・家庭充電35円/kWhと仮定すれば年間の電気代はおよそ6.4万円で、同クラスのPHEVをガソリン中心で走らせた場合と比べれば維持段階での差は着実に積み上がります。
そのうえで押さえておきたい実務が2点あります。1点目は、自治体補助を必ず重ねて確認すること。東京都のZEV補助金のように国とは別枠で交付される制度があり、居住地によって実質負担は大きく変わります。2点目は、補助金には処分制限期間4年が付くこと。交付を受けた車両は4年間の保有が前提となり、早期の乗り換えでは返納が生じ得ます。20.8万円という金額の小ささは、裏を返せば「4年縛りを受け入れる対価が小さい」ことも意味します。この判断はご自身の乗り換えサイクルと突き合わせて決めるのが賢明です。
📌 たかまさはこう見ている

20.8万円という数字を「少ない」と嘆く記事にはしたくありません。この数字は、日本のEV補助金が何を買おうとしているのかを、これ以上ないほど正直に語っているからです。
CEV補助金の上限が90万円から130万円へ引き上げられたとき、多くの報道は「EVがさらに買いやすくなる」と伝えました。しかし別表を1行ずつ読むと、その恩恵が届く範囲は限られています。税抜840万円という線が引かれ、それを超えた車両は補助額に0.8が乗じられる。EX90はその典型で、26万円の水準がさらに2割削られて20.8万円になりました。制度の設計思想は明快です。国が支援したいのは高級EVの普及ではなく、量が出る価格帯のEVを1台でも多く走らせることにあります。
私はこれまで11回クルマを買い替えてきましたが、補助金や減税の額が購入判断を決めたことは一度もありません。決め手はいつも、そのクルマが自分の生活の何を変えるかでした。EX90でいえば、荷室まで見張る60GHzレーダーの乗員検知システムがそれにあたります。子どもの置き去りは、毎年のように痛ましいニュースとして繰り返されてきました。それを「気をつけましょう」ではなく、1mm未満の胸の動きを拾うセンサーとアルゴリズムで解こうとした。20.8万円の補助金では1円も評価されない部分に、このクルマの価値の相当部分が宿っています。
だから読者にお伝えしたい判断軸はシンプルです。1,199万円のEVを検討する段階にある方は、補助金の20.8万円を計算に入れないでください。入れても実質負担は1.7%しか動きません。代わりに、自治体補助の有無、4年の処分制限期間と自分の乗り換えサイクル、そして家庭充電が引けるかどうかという3点を先に確定させる。そのうえで、同格のXC90プラグインハイブリッドと並べて選ぶ。それがこの価格帯での正しい順序です。補助金は、買う理由ではなく買った後の結果として受け取るものだと考えてください。制度が引いた840万円の線は、支援したい相手を静かに指し示しています。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてボルボ・カー・ジャパン プレスサイト(https://jp.volvocars.com/pressrelease/)の公式プレスリリース『ボルボの新たなフラッグシップSUV、「ボルボEX90」発売』(2026年7月8日)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像・サブ画像とも EX90 Plus Twin Motor のエクステリア写真です。写真は海外仕様で、日本仕様は右ハンドルとなります。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。

