
ランドローバーが7月9日、ディフェンダー2027年モデルの受注を開始しました。目玉は新グレードVERTEXです。ところが価格表を縦に読むと、110も130もVERTEXと既存最上級のXが1円の差もない同額。新しい天井を作ったのではなく、同じ高さに置いた「もう一つの答え」でした。
ランドローバー日本公式サイトのDEFENDER 110紹介画像。2027年モデルの乗用ラインアップは、この110 S D350の960万円から始まります。ボディスタイルは90・110・130の3種類で、最大8名まで乗車可能。2027年モデルでは110に2列目キャプテンチェアの6人乗り仕様が加わりました(掲載画像は欧州仕様車)。
新グレードが出たら、そのぶん値段の天井は上がる。そう思っていませんか。
ジャガー・ランドローバー・ジャパンは2026年7月9日、クロスカントリーモデル「DEFENDER」の2027年モデルの受注を、全国の正規販売リテイラーネットワークで開始しました。価格は960万円から2,387万円。最大の話題は、タフラグジュアリーを掲げて登場した新グレード「VERTEX」です。ところが公式リリースの価格表を縦に読むと、奇妙なことが起きています。110 VERTEX D350が1,497万円、そして既存最上級の110 X D350も1,497万円。130でもVERTEXとXがそろって1,650万円で、1円の差もありません。
一方で、ショートボディの90にはそもそもXグレードがありません。90 VERTEX D350は1,227万円で、90の従来最上級だったX-DYNAMIC HSE D350(1,070万円)に対して157万円高。つまりVERTEXは、110と130では既存最上級と価格の等しい「意匠違いの選択肢」として、90でだけ実質的な新しい天井として置かれた、非対称なグレードなのです。
本記事では、2027年モデル全14仕様の価格構造、2026年モデルとの引き算で見えてくる値上げの中身、そして150台限定の特別仕様車「DEFENDER TROPHY EDITION 2027」の価格設計を整理し、最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から見積書に載る実際の支払額まで検証します。

📌 ディフェンダー2027年モデル14仕様の価格表、VERTEXは110と130で最上級Xと1円差なし

グレード表は、メーカーが「どこで儲けたいか」を一番正直に語る資料です。ディフェンダーの2027年モデルは、その語り口がボディサイズごとに違います。まずは14仕様を並べて、階段の段差を測っていきましょう。
960万〜2,387万円・14仕様の階段構造を分解する
2027年モデルのラインアップは、パワートレーンが3系統に整理されました。中心は3.0リッター直列6気筒INGENIUMターボチャージドディーゼル(MHEV)のD350で、最高出力258kW(350PS)・最大トルク700N・m。ここに90・110・130の3ボディで11仕様が並びます。加えて2.0リッター直4ガソリン+105kW電動モーターのPHEV「P300e」が1仕様、4.4リッターV8ツインターボの頂点モデル「OCTA」が2仕様です。
注目すべきは、2026年モデルにあった2.0リッターガソリンのP300(872万円)と、5.0リッターV8スーパーチャージドのP525・P500(1,627万〜1,782万円)が、2027年モデルの価格表から姿を消していることです。公式リリースに「廃止」という言葉はありませんが、ラインアップ表を突き合わせれば消去法で読み取れます。結果として、乗用ディフェンダーの入口は872万円から960万円へ、88万円(10.1%)押し上げられました。
VERTEXが「同額」で置かれた意味と、90だけ157万円高になる非対称
VERTEXの専用装備は、シャドーアトラスマット仕上げのエクステンデッドフロント&リアバンパー、グロスブラックのテールドアスポイラー、イエローのフロントブレーキキャリパー、露出型イエローのリアリカバリーフック、22インチ「スタイル7030」アロイホイール、そしてボディ同色のロワーボディクラッディング。いずれも走行性能やパワートレーンではなく、外装意匠に集中しています。
ここが同額設計の理由だと私は読んでいます。110と130の最上級Xは、装備の総量で頂点に立つグレードです。対してVERTEXは、Xと同じ価格帯に「見た目の方向性が違うもう一つの頂点」を置いたもの。価格でランクを分けるのではなく、同じ高さで嗜好を分岐させるという考え方で、レンジローバー系がSVで実践してきた手法をディフェンダーに持ち込んだ形です。実際、公式リリースはVERTEXの装備を「エクステンデッドエクステリアパック」を選べば他グレードでもアップグレードできると明記しており、VERTEXが装備の独占ではなく「まとめ買いのパッケージ」に近い性格であることを裏づけています。
そして非対称が生まれるのが90です。ショートボディの90にはXグレードの設定がなく、従来の最上級はX-DYNAMIC HSE(1,070万円)でした。そこにVERTEX(1,227万円)が乗ることで、90だけは157万円ぶん天井が高くなったことになります。しかも90 VERTEXは110・130のVERTEX(1,497万円・1,650万円)より270万円以上安い。同じグレード名でも、ボディによって価格の意味がまったく違うわけです。90を検討している方にとってVERTEXは純然たる「上位グレードの新設」であり、110・130を検討している方にとっては「Xと予算が並ぶ別の選択肢」。同じニュースの受け止め方が、ボディサイズで真逆になります。
2026年モデルとの引き算、比較可能な全10仕様が値上げでPHEVだけ206万円
2025年7月15日に受注開始された2026年モデルの公式価格表と、今回の価格表を同一グレード名で突き合わせると、比較可能な10仕様が例外なく値上げされていました。ディーゼルD350勢は38万〜93万円の幅で、率にすると4.12%(110 S)から5.97%(130 X)。おおむね入口ほど率が低く、上位ほど率が高い構造です。
そのなかで一つだけ桁の違う動きをしているのがPHEVです。110 X-DYNAMIC HSE P300eは1,049万円から1,255万円へ、206万円・19.64%の値上げ。しかも2026年モデルに存在した下位のX-DYNAMIC SE P300e(932万円)が消え、PHEVの入口は932万円から1,255万円へ実質323万円押し上げられました。ディフェンダーで電動化の恩恵を受けようとすると、まず330万円近い入場料を追加で求められる計算になります。

📌 TROPHY EDITION 2027は150台限定、マット仕様は同装備のグロス比60万円高

限定車の価格は、ベース車との引き算をすると設計者の狙いが見えます。今回のトロフィーは5構成すべて30台ずつという珍しい配分で、しかも外装の仕上げだけで60万円の段差が付いています。ここを掘ってみましょう。
DEFENDER TROPHY EDITION 2027。ベースは110 X-DYNAMIC SE D350で、全長4,945mm・全幅2,005mm・全高1,970mm、車両重量2,436kg(欧州諸元参考値)、乗車定員5名。エクスペディションルーフラック、ブラックディプロイアブルルーフラダー、サイドマウントギアキャリア、レイズドエアインテークを備えるブラックエクスプローラーパックを標準装備します(掲載画像は欧州仕様車)。
ベース1,080万円に260万円の上乗せ、最上級Xまで157万円という位置取り
TROPHY EDITION 2027のベース車両は、公式カタログに明記のとおり110 X-DYNAMIC SE D350です。2027年モデルの同グレードは1,080万円。これに対しトロフィーはグロス仕様が1,340万円、マット仕様が1,400万円ですから、上乗せ額はそれぞれ260万円(24.1%)と320万円(29.6%)になります。
この260万円という数字を、通常グレードの階段と並べてみると性格がはっきりします。X-DYNAMIC SEから一つ上のX-DYNAMIC HSEへ上がる差額は72万円。トロフィーの上乗せは、その3.6倍です。さらにグロス仕様(1,340万円)は最上級の110 X(1,497万円)まであと157万円、マット仕様(1,400万円)にいたっては97万円差。SEをベースにしながら、値札はほぼX級の領域に置かれているわけです。
もっとも、装備を見ればこの価格は理解できます。14ウェイ電動フロントシート、電子制御エアサスペンションとアダプティブダイナミクスを含むエアサスペンションパック、スライディングパノラミックルーフ、ヘッドアップディスプレイ、ClearSightインテリアリアビューミラー、コールドクライメートパックなど、公式リリースが「日本独自設定仕様」と注記した装備が9項目含まれます。X-DYNAMIC SEにこれらを個別に積み上げていけば、差額の大半は説明が付く構成です。ただし乗車定員は5名で、110本来の最大7名から絞られている点は購入前に確認したいところです。
30台×5構成という均等配分と、マット90台・グロス60台の賭け方
この限定車でもう一つ目を引くのが、台数の割り方です。5つの構成すべてがきっちり30台ずつ。限定車では人気色を厚く、不人気色を薄く配分するのが通例ですから、均等配分は「どれが売れるか読み切らない」という判断の表れとも、「どれも同じだけ売れる自信がある」という判断の表れとも取れます。
もっとも構成の内訳を見ると、意図は透けて見えます。マット仕様は3構成で90台、全体の60%。グロス仕様は2構成で60台です。つまり単価の高い60万円増しの仕様を、あえて多数派に置いている。5構成をすべて完売させたときの合計は20億6,400万円、1台あたりの平均単価は1,376万円という計算になります。マットを主役に据えた配分は、限定車の希少性を「色の質感」で表現しつつ、収益性も同時に確保する設計だと読めます。
なお、ディープサンドグローイエローはマット仕様+エボニーインテリアの1構成30台のみで、グロス仕様の設定がありません。この色を選ぶ時点で、1,400万円という価格は選択の余地なく確定します。冒険を象徴する色に振るなら、その分の対価は最初から織り込まれているわけです。
110に6人乗り仕様を追加、テールドアギアキャリアなど実用面の更新点
価格以外の更新点も押さえておきましょう。実用面で最も影響が大きいのは、110への6人乗り仕様の追加です。2列目に独立したキャプテンチェアを採用して2-2-2のレイアウトとし、各席にゆとりを持たせました。従来の110は5人乗りと7人乗りが基本でしたから、3列を確保しつつ2列目の快適性を優先したい層に新しい選択肢が生まれたことになります。
エクステリアカラーでは、OCTAにウールストーングリーン、90と110のS/X-DYNAMIC SE/X-DYNAMIC HSE/Xにナミブオレンジを追加。南米の山々をモチーフにしたパタゴニアホワイトマットラップがXとVERTEXでも選べるようになり、微細な傷を紫外線で自己修復するプロテクティブフィルムが、従来のマットに加えてグロスでも選択可能になりました。アクセサリーでは、DEFENDERロゴ入りグロスブラック仕上げのテールドアギアキャリア(収納容量最大60リットル・耐荷重12kg)が追加されています。汚れたギアを車内に持ち込まずに運べる装備で、地味ながらアウトドア用途では効きます。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり輸入車の価格表を追ってきましたが、新グレードを既存最上級と1円差なく並べる例はそう多くありません。これは「上を作った」のではなく「横に広げた」発表です。そして横に広げられるのは、上が十分に高いブランドだけです。
VERTEXの本質は、ディフェンダーというクルマの買われ方が変わったことの反映だと私は見ています。専用装備が外装意匠に集中し、しかも同じ内容をエクステンデッドエクステリアパックで他グレードでも買えるようにしてある。これはグレードというより、公式が用意したドレスアップの完成形カタログです。ディフェンダーは登場以来、道具としての性能を語られながら、実際には都市部で意匠を理由に選ばれてきました。VERTEXの同額設定は、その現実をメーカー側が正面から認めた設計といえます。90だけ157万円の上乗せになるのも、90にXがなかったという構成上の事情であって、方針が違うわけではありません。
ここでFPとして、見積書に載る実額を確認しておきます。ジャガー・ランドローバー・ジャパンは2023年8月から「経済変動加算額」という為替連動のサーチャージを導入しており、当面の額は16万円(消費税別=税込17万6,000円)。公式サイトは「希望小売価格として表示されている価格には経済変動加算額は反映されていません」と明記しています。つまり110 S D350は表示960万円でも実際の車両本体価格は977万6,000円、110 VERTEX D350は1,514万6,000円、TROPHY EDITIONのグロス仕様は1,357万6,000円になる計算です。入口の960万円は、税金や登録費用を一切足さない段階ですでに1,000万円まで22万4,000円しか残っていません。この加算額は全モデル一律で、私自身11回の買い替えで学んだ「カタログ価格と支払総額の距離」が、輸入車では制度として明文化されている好例です。
では、どう判断すべきか。110・130で最上級クラスを検討している方は、XとVERTEXが同額である以上、純粋に見た目の好みだけで選んで構いません。むしろ迷うべきは、その一段下のX-DYNAMIC HSE(1,152万円)で止めて差額345万円を維持費に回すかどうかです。90を検討中でVERTEXの意匠に惹かれる方は157万円の上乗せに見合うかを冷静に測る必要があり、意匠だけが目的ならX-DYNAMIC HSEにエクステンデッドエクステリアパックを足す道も残されています。そしてPHEVを狙っていた方は、入口が932万円から1,255万円へ動いた事実を直視してください。ディーゼルD350の110 X-DYNAMIC SE(1,080万円)との差は175万円で、この差を燃料費で回収するのは日本の走行距離では現実的ではありません。PHEVを選ぶ理由は経済性ではなく、静粛な短距離走行という体験そのものに置くべきだと考えます。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてランドローバー日本公式サイト(https://www.landrover.co.jp/)の「DEFENDER」モデルページに掲載された公式画像から引用しています。ヒーロー画像はDEFENDER 110、サブ画像はDEFENDER TROPHY EDITION 2027です。いずれも欧州仕様車の画像であり、日本仕様とは細部が異なる場合があります。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
