
京都のフォロフライが9月7日、軽トラックタイプの商用EV「FKT」の受注を始めました。最大積載量350kgはガソリン軽トラックと同じ。ところが公式諸元表の荷台の欄を並べてみると、まったく同じ仕事ができるとは言い切れない数字が出てきます。
2026年9月7日に受注が始まったフォロフライ「FKT」。全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,980mmの軽自動車規格で、総電力量30kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載し、一充電走行距離225km(WLTC相当の条件によるメーカーテスト値)と最大積載量350kgを両立します。出資先のASF社との共同開発モデルです。
軽トラックをEVに置き換えても、現場の仕事は何ひとつ変わらない──そう言い切れるでしょうか。
商用EVを手がけるフォロフライ(京都市)は2026年9月7日、軽トラックタイプの商用EV「FKT」の受注を開始しました。総電力量30kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池で一充電走行距離225km、最大積載量350kg、車室内にAC100V電源を標準装備。同社がもっとも強く押し出しているのは、「走らせる費用はガソリン軽トラックの約4分の1」という燃料費の差です。公式サイトには1kmあたり約2.7〜3円という数字と、年間1万2,500km走行なら燃料費だけで年9万円以上を削減できるという試算表が掲げられています。
ただしこの試算には、注記が付いています。「車両価格、充電設備の設置費用および工事費、税金、保険料、整備費用は含みません」と公式サイトが自ら明記しているのです。しかも肝心の車両価格は、プレスリリースでも公式サイトでもオープン価格・個別案内とされ、表に出ていません。そして諸元表をダイハツ「ハイゼットトラック」と並べると、荷台長は1,669mm。ハイゼットの標準ボディ1,940mmに対して271mm短いという差が現れます。
本記事では、公式が示した「約4分の1」の計算根拠を条件ごとに分解し、荷台・全高・回転半径・車重という4つの寸法で現行のガソリン軽トラックと突き合わせます。そのうえで最後に、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から「車両価格がいくらまでなら5年で元が取れるのか」の上限ラインを試算します。

📌 「燃料費は4分の1」の中身、年9万5,530円という差額の前提を分解する

この手の試算は、数字そのものより「どんな条件で出したか」を読むほうが大事です。フォロフライは条件を全部開示しているので、こちらで検算できます。誠実な出し方だと思います。
受注開始したFKTの素性と、公式が開示した試算条件
FKTは、フォロフライが出資するASF社との共同開発で生まれた軽トラックタイプの商用EVです。寸法は全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,980mm、ホイールベース2,430mm。総電力量30kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を積み、一充電走行距離は225km(WLTC相当の条件によるメーカーテスト値)。最高出力30kW・最大トルク120N・m、駆動方式は2WDで、車両重量は1,080kg、最大積載量350kg、乗車定員2名です。充電は普通充電(AC・J1772規格)と急速充電(DC・CHAdeMO規格)の両対応で、6kWの普通充電なら約5時間、急速充電なら約1時間とされています。
そのうえで公式が掲げるのが、走行コストの比較表です。試算条件はレギュラーガソリン170.1円/L(2026年8月時点の全国平均)、ガソリン軽トラックの燃料消費率16.5km/L(WLTCモード)、夜間電力単価20円/kWh(関西電力エリアの事業者向け夜間時間帯別プランを想定)、FKTの電費7.5km/kWh(カタログ値)。ここまで開示されていれば、読者側で条件を差し替えて再計算できます。まずは公式の土俵の上で、数字が合っているかを確かめてみましょう。
年9万5,530円という差額を、条件どおりに検算する
公式条件で計算し直します。ガソリン軽トラックは170.1円÷16.5km/L=1kmあたり10.309円。FKTは20円÷7.5km/kWh=1kmあたり2.667円。年間1万2,500km(1日50km×年250日)を掛けると、ガソリンが12万8,864円、電気が3万3,333円で、差額は年9万5,530円。公式が言う「年間9万円以上の削減」は、そのとおりの数字でした。約4分の1という表現も、10.31円対2.67円ですから正確です。
ただし公式サイトの注記には、1kmあたりの金額に幅がある理由として「充電時のロスを考慮した場合を含んでいる」とあります。上限の3円/kWh換算で見ると年間の電気代は3万7,500円となり、差額は9万1,364円へ縮みます。5年間で見れば45万6,818円から47万7,652円のレンジです。いずれにせよ、燃料費だけを取り出せばFKTが優位であることは動きません。20年あまり商用車の取材をしてきましたが、条件をここまで開示したうえで幅も明示するメーカー試算は、正直あまり見かけません。
この試算に「含まれないもの」が5つある
問題は、その差額をどう受け止めるかです。公式サイトの但し書きには、こう書かれています。「車両価格、充電設備の設置費用および工事費、税金、保険料、整備費用は含みません」。つまりこの比較表は、純粋に燃料と電気の単価差だけを取り出したものです。営業所に6kWの普通充電設備を新設すれば工事費が発生しますし、複数台を同時に充電するなら受電設備の見直しが必要になる場合もあります。
さらに前提条件そのものにも幅があります。夜間電力単価20円/kWhは関西電力エリアの事業者向け夜間時間帯別プランを想定した数字で、契約エリアやプランが違えば単価は動きます。日中に急速充電器へ立ち寄る運用が混じれば、単価はさらに上がります。逆にガソリン側も、170.1円/Lという単価は2026年8月時点の全国平均であり、補助金政策や原油相場で上下します。この試算は「営業所で夜間に充電し、決まったエリアを毎日走る」という運用に最適化されたモデルケースだと理解しておくのが正確です。

📌 積載350kgは同じでも、荷台271mm・回転半径0.8mの差は消えない

軽トラックは全長3,395mm・全幅1,475mmという枠が法律で決まっています。その中に電池を積めば、どこかにしわ寄せが来る。諸元表はそのしわ寄せがどこに出たかを、正直に語ってくれます。
現場に停車するFKT。荷台は長さ1,669mm×幅1,380mm×高さ370mm、荷台床面の地上高は660mmで、この床面高だけはガソリン軽トラックと同一です。メーカーは「積み下ろしの高さがこれまでと変わらないため、作業の手順を変える必要がない」と説明しています。全高は1,980mmです。
荷台長1,669mm、ハイゼット標準比271mm短い
比較相手には、軽トラック販売台数で最大手のダイハツ「ハイゼットトラック」を使います。ダイハツ公式の主要諸元表によれば、スタンダードおよびエクストラの荷台は長さ1,940mm×幅1,410mm×高さ285mm、荷台床面地上高660mm、全高1,780mm。一方FKTは長さ1,669mm×幅1,380mm×高さ370mm、荷台床面地上高660mm、全高1,980mmです。
床面高660mmはぴたりと一致しています。ここはメーカーが意識して合わせた部分でしょう。しかし荷台長は271mm短く、幅も30mm狭い。床面積で計算すると、ハイゼットの2.735平方メートルに対しFKTは2.303平方メートルで、約15.8%小さいことになります。最大積載量350kgという数字は同じでも、載せられる「かさ」は同じではありません。興味深いのは、FKTの荷台長1,669mmが、キャビンを後方へ拡大したハイゼット「ジャンボ」の荷台長1,650mmとほぼ同じという点です。ジャンボは室内空間と引き換えに荷台を削った仕様ですが、FKTは標準キャビンのままこの長さになっています。
ホイールベース530mm延長が生んだ、4.4mという回転半径
荷台が短くなった理由は、ホイールベースの欄を見れば分かります。ハイゼットトラックの1,900mmに対し、FKTは2,430mm。実に530mm長いのです。全長が同じ3,395mmである以上、前後のオーバーハングを削り、キャビンと荷台の配置を組み替えるしかありません。床下に30kWhの電池を敷くために軸間を広げ、その分だけ荷台が後退した──構造上、極めて素直な帰結です。
その代償が、最小回転半径に出ました。ハイゼットトラックの3.6mに対し、FKTは4.4m。0.8m、率にして約22%大きい数字です。この点はメーカー自身がFAQで説明しており、「ホイールベースを2,430mmとることで直進安定性と乗り心地を確保しているため、一般的なガソリンの軽トラックより大きめの数値となっています」と明記しています。長距離の直進が多いルート集配では乗り心地の向上として働きますが、農道の切り返しや構内での取り回しが多い現場では、はっきり体感される差です。カーソムリエとして諸元を読む立場から言えば、軽トラックにおける最小回転半径0.8mの差は、装備の有無より重い判断材料になり得ます。
2WDのみ、全高1,980mm。運用側で先に確認すべき2点
もうひとつ、公式FAQが率直に認めている制約があります。FKTの駆動方式は2WDのみで、「未舗装地や勾配のある場所でのご使用を予定されている場合は、事前にご相談ください」と案内されています。ハイゼットトラックにはパートタイム4WDおよび電子制御式パートタイム4WDが用意され、農業や山間部の用途では4WDが選ばれることが多い現実を踏まえると、ここは用途を選ぶポイントになります。メーカーが主要な導入シーンとしてラストワンマイル配送・自治体の公用車・ハウス周辺や構内の運搬を挙げているのは、この特性と整合しています。
全高1,980mmという数字も、導入前に確認しておきたい項目です。ハイゼットトラックのスタンダードは1,780mm、ハイルーフとジャンボでも1,885mmですから、FKTはもっとも背の高いハイゼットよりさらに95mm高いことになります。営業所の車庫、シャッターの開口高、契約している駐車場の高さ制限は、車両を選ぶ前に実測しておくべきでしょう。車両重量1,080kgに最大積載350kgと乗員2名を足せば車両総重量は1,540kg級で、ハイゼットの1,260kg級(CVT・2WD・スタンダード)を大きく上回ります。動力面では最高出力30kWがハイゼットの34kW(46PS)をやや下回る一方、最大トルクは120N・mでハイゼットの60N・mのちょうど2倍。重くなった車体を発進させる力は、むしろ余裕がある設計です。
📌 たかまさはこう見ている

価格が公表されていない商用車は、こちらから「いくらまでなら合うか」の線を引いてから商談に行くのが鉄則です。数字を持たずに見積もりを受け取ると、判断の軸が向こう側に移ってしまいます。
FKTでもっとも扱いに困るのは、車両価格が開示されていないことです。プレスリリースの諸元表では「オープン価格」、公式FAQでも「価格につきましては、個別にご案内しています」とされ、1台からの相談は受け付けるとあります。商用車の世界では台数や架装によって価格が動くため珍しい売り方ではありませんが、比較検討する側は数字なしで机に着くことになります。そこで、こちらから損益分岐のラインを引いておきます。
FP(ファイナンシャルプランナー)の視点で計算します。事業用購入なら、環境優良車普及機構(LEVO)が執行する令和7年度補正予算の商用車等の電動化促進事業(トラック)で、FKTの補助基準額は最大87万3,000円。ここに前章で算出した5年分の燃料費差47万7,652円を足すと、ガソリン軽トラックより135万652円高くても、5年で収支が並ぶ計算になります。ハイゼットトラックの最安値であるスタンダード・5MT・2WDが109万4,500円ですから、両者を足した約244万円が、5年での回収を前提にしたときの車両価格の上限ラインです。充電ロスを見込んだ保守的な条件でも約242万円で、大きくは動きません。ただしこれは充電設備の工事費をゼロと置いた数字であり、6kW普通充電器の新設費用が乗れば、その分だけ上限は下へ動きます。私自身、これまで11台の車を購入してきて痛感するのは、購入時の見積書に載らない付帯費用こそ後から効いてくるということです。
では誰に向く一台か。営業所で夜間に充電でき、舗装路のルート集配や構内運搬が中心で、長尺物をあまり積まない事業者であれば、荷台271mmの差も回転半径0.8mの差も日常業務にほとんど響かず、燃料費と静粛性の利点だけを受け取れます。住宅街の早朝配送や屋内作業では、排出ガスと騒音がないことが単なる環境性能ではなく実務上の武器になります。逆に、農道での切り返しが多い、4WDが要る、長い資材を積む、という現場では、現行のガソリン軽トラックが依然として合理的です。軽トラックの電動化は、車種の置き換えではなく用途の切り分けから始まる。FKTの諸元表は、その段階に入ったことを静かに示しています。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてフォロフライ株式会社の公式サイト「folofly FKT」特設ページ(https://folofly.com/fkt/)に掲載された公式画像から引用しています。ヒーロー画像はFKTの車両外観、サブ画像は現場に停車するFKTの写真です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
