
10月1日の記事で「9月のデータで答えが出る」と書いた中古車相場の行方です。USSの9月実績は単価127.5万円で、前年比2.2%減。宿題にしていた3つのシグナルのうち、2つが点灯しました。
「中古車の高値はまだ続いている」。そう思い込んでいませんか。
中古車オークション最大手のUSSが10月5日に公表した9月の実績で、平均成約単価は127.5万円でした。8月の124.8万円からは2.7万円戻しています。しかし前年9月の130.3万円と比べると2.8万円、率にして2.2%下回り、前年割れに転じました。上期(4〜9月)累計では128.6万円・前年比6.5%増と高水準なだけに、この単月の変化は見落とされがちです。
10月1日の当サイト記事では、9月データで確かめるべき3つのシグナルとして、成約率の前年割れ、成約単価の前年割れ、輸出の2ケタ増を挙げていました。上期累計と8月までの累計の差から9月単月を逆算すると、成約率は約64.4%で前年の約70%を大きく下回り、3つのうち2つが点灯しています。
この記事では、USSの公表値から逆算した9月単月の需給、MOTAの買取査定データに表れ始めた波を整理し、最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から「年内に売るか、待つか」の損得を検証します。

📌 USS9月単価127.5万円の前年割れを読む、出品2割増に成約1割増が追いつかない需給の構造

前月より上がったから一安心、と読むのは早計です。前年と比べると2.8万円安く、出品は2割増えたのに成約は1割増にとどまる。需給の天秤は、売り手に不利な側へ確実に傾いています。
前月比+2.7万円と前年比−2.8万円、逆向きの数字が同時に出た9月
USSが10月5日に公表した2026年度上期(4〜9月)の実績によれば、出品台数は188万7,810台(前年比9.5%増)、成約台数は122万6,652台(同8.4%増)、平均成約単価は128.6万円(同6.5%増)でした。上期全体で見れば、中古車相場は依然として高い水準にあります。
ところが9月単月の平均成約単価は127.5万円で、前年9月の130.3万円を2.8万円下回りました。前年同月比のマイナスは、7月の+8.1%、8月の+1.9%と伸びが細ってきた流れの延長線上にあります。一方、8月の124.8万円からは2.7万円戻しているため、前月比だけを見れば「下げ止まり」にも見えます。前月比で+2.7万円、前年比で−2.8万円。ほぼ同じ幅の数字が逆向きに並んでいるのが9月の特徴で、どちらを見るかで相場観が正反対になります。
季節の影響を除くには前年同月比を見るのが基本です。ユーカーパックの相場レポートも、9〜11月は冬の需要を見据えた仕入れが進む時期だとしています。前月比の反発はこうした季節の動きでも説明できますが、その追い風があってもなお前年を下回ったことのほうが、相場の基調を表していると私は読みます。10月1日の記事で挙げた3つのシグナルを、9月の数字で判定すると次のとおりです。
9月の出品は19.2%増、成約は約9%増、成約率64.4%は前年より約6ポイント低い
USSは9月単月の台数を報道向けには明示していませんが、公表値から逆算できます。上期累計の出品188万7,810台から、9月8日に公表された4〜8月累計の155万7,844台を引くと、9月単月の出品は32万9,966台。成約も同様に122万6,652台から101万4,164台を引いて21万2,488台となり、成約率は約64.4%です。同じ方法で7月を計算すると成約率63.8%となり、10月1日の記事で使った7月の値と一致しますから、逆算の精度は十分です。
前年9月の出品台数は27万6,888台でした(2025年10月の日刊工業新聞報道)。今年9月はこれを19.2%上回ります。前年9月の成約台数は公表された前年比から逆算すると約19.5万台で、前年の成約率は約70%、今年の成約の伸びは約9%です。出品が2割近く増えたのに、成約は1割弱しか増えていない。7〜9月の四半期で見ても、出品は93万7,430台で14.7%増、成約は60万7,650台で8.5%増、成約率は64.8%と前年の68.6%から3.8ポイント下がりました。会場別では東京の出品が17.4%増、神戸が37.1%増と、供給の膨らみは全国的です。
供給が増えている理由は、10月1日の記事で触れたとおり、新車の受注残が解消して下取り車が業者オークションへ戻ってきたことにあります。新車が手に入りにくかった2022〜2024年は、「中古車でもいいから今すぐ欲しい」という需要が相場を押し上げました。その前提が崩れ、出品の増加ペースが買い手の需要を上回り始めたのが今の局面です。
単価の前年割れは値下がりだけではない、高額車の比率低下という「構成比」の変化
ここで公平を期して、都合の悪い数字にも触れておきます。平均成約単価は「1台あたりの平均」ですから、同じクルマが安くなっていなくても、高額車の比率が下がれば平均は下がります。業者オークションを運営するユーカーパックが9月24日に創刊した月刊相場レポートによれば、同社オークションの8月は成約数が前年を上回った一方、300万円以上の高価格帯の成約が減り、300万円未満の比率が高まったことで平均成約金額が前年を下回りました。入札数1位のアルファード、3位のヴェルファイアも、流通台数の増加で以前のような突出した高値はつきにくくなっているとしています。
つまり9月の−2.2%には、「同じ車が安くなった」分と「高い車の比率が下がった」分が混ざっていると見るのが正確です。USSの公表値だけでは両者を切り分けられません。ただ、後者も裏を返せばアルファード級の高額車が以前ほど高く売れなくなったことを意味します。どちらの要因であっても、高額なミニバンやSUVを手放す予定のある人にとって追い風でないことは変わりません。

📌 買取査定に届き始めた波、MOTA9月の走行10万km超−3.8%と「3カ月待つ」損得の試算

業者オークションの相場は、1〜2カ月遅れて私たちが受け取る買取査定に届きます。9月の査定データを見ると、ミニバンと走行距離の多い車から先に、その波が表れ始めています。
MOTA9月の買取相場は2カ月連続のマイナス、ミニバンと走行10万km超が先に下がった
一般のユーザーが受け取る買取査定は、業者がオークションで売れる価格から逆算して決まります。オークションの成約率が下がれば、業者は「売れ残るリスク」を査定に織り込むため、買取価格は遅れて下がります。その動きを確かめるため、MOTA車買取が10月8日に更新した査定実績データ(国産9ブランド・修復歴なし・年式1〜10年前、新車価格に対する査定額の割合)を見ます。
9月の買取相場は前月比0.4%減で、8月の0.6%減に続く2カ月連続のマイナスでした。直近13カ月の平均を100とした指数は96.8です。判定対象75車種のうち上昇は7車種、下落は10車種でした。ボディタイプ別ではコンパクトカーが1.8%増、軽自動車が1.1%増と堅調な一方、SUVが0.7%減、ミニバンが1.1%減と、大きく高い車から先に下がっています。車種別ではステップワゴンが5.4%減、ヴェゼルが3.5%減、RAV4が2.4%減。逆にタントは6.6%増、ノートは4.3%増、ハスラーは2.5%増でした。
目を引くのは走行距離帯別の動きです。走行10万km超は8月の0.8%増から9月は3.8%減へ急反転しました。直近13カ月の振れ幅は10.7ポイントで、3万km未満の5.1ポイントの約2倍です。過走行車は輸出向けの買い手に支えられている層で、輸出の勢い次第で値動きが大きくなります。9月の急落は、シグナル③の輸出が鈍り始めた兆しである可能性もあり、私が9月の輸出抹消の公表を最も注目している理由です。
同じ3カ月でもミニバンは−9.8万円、軽は+4.0万円、FP視点の損得試算
では、手放す予定のある人は「今売る」か「様子を見る」か。9月の変化率がそのまま3カ月続いたと仮定して、査定額への影響を機械的に試算しました。査定300万円のミニバンは月1.1%減が3カ月続くと約290.2万円で、約9.8万円の目減り。査定80万円の走行10万km超の車は月3.8%減なら約71.2万円で、約8.8万円の目減りです。反対に査定120万円の軽自動車は月1.1%増なら約124.0万円で、約4.0万円の上積みになります。
ここで引き算を一つ入れておきます。MOTAの変化率は「新車価格に対する査定額の割合」の中央値の動きで、個々の査定額の動きとは一致しません。1カ月の変化率が3カ月続く保証もなく、軽自動車の上昇が続くとは限りません。それでもミニバンのように相場の高い車ほど、同じ下落率でも金額の目減りが大きくなるという構造は動きません。査定額300万円の車にとって1%は3万円ですが、80万円の車では8,000円です。
年度をまたぐ場合は税金も効いてきます。自動車税(種別割)は4月1日時点の所有者に1年分が課税されるため、3月中に手放せば翌年度分の負担を避けられます。2019年9月30日以前に登録した1.0L超1.5L以下の車なら年3万4,500円、13年を超えた車は重課で年3万9,600円です。相場の目減りと翌年度の税金を合わせると、年度末まで先送りする費用は車によって10万円を超えます。
残る判断材料は輸出、9月の輸出抹消で確かめるべき2つの点
3つ目のシグナルである輸出は、国内相場の最後の支えです。8月の輸出抹消登録は14万4,394台で前年比32.8%増、1〜8月累計も117万6,041台で8.8%増でした。一方、財務省の貿易統計を基にした業界の集計では、7月の中古車輸出は中東情勢を受けたUAE向けの急減で前年比6.9%減となっており、行き先は月ごとに揺れています。
9月の輸出抹消の公表で確かめたいのは、2ケタ増が続いているかどうかと、過走行車の主な受け皿であるロシアやアフリカ向けの勢いが保たれているかどうかの2点です。輸出が2ケタ増を保てば、国内向け需要の弱さを輸出が吸収し、相場の下げは緩やかにとどまるでしょう。逆に輸出が1ケタ増以下に鈍れば、3つのシグナルがすべてそろい、相場は「減速」から「下落」の局面に入ったと判断できます。走行10万km超の査定が9月に先に下がったのは、その前触れかもしれません。
📌 たかまさはこう見ている

相場の転換点は、ニュースで「下落」と報じられる頃にはもう価格に織り込まれています。前年割れという小さな数字の変化こそ、売り手が動くべき合図だと私は考えています。
今回の前年割れは、偶然の1カ月ではないと私は見ています。新車の納期が長かった2022年から2024年にかけて、中古車相場は「新車の代わり」という需要に支えられてきました。新車の供給が戻った今、その上乗せ分がはがれ落ちるのは自然な流れです。上期累計がまだ6.5%増という高い水準にあることは、裏を返せば、相場がこれから戻っていく先の「普通の水準」がまだ下にあることを示しています。
私自身、これまで11台のクルマを買い、そのたびに前の車を手放してきました。振り返ると、売却で後悔したのは、どれも「もう少し待てば高くなる」と考えて先送りしたときでした。相場が上昇局面にあるときの「待ち」は報われることがありますが、成約率が下がり始めた局面での「待ち」は、たいてい査定額の目減りで終わります。特に今回、ミニバンやSUV、過走行車のように先に下がり始めた層は、その傾向がはっきり出ています。
では、どう動くべきか。手放す予定が年内か年度内にあり、車がミニバンやSUV、走行10万km超にあたる方は、まず今の査定額を複数社で確かめることをおすすめします。売るかどうかを決めるのはその後で構いません。軽自動車やコンパクトカーは相場が底堅く、急ぐ理由は今のところ小さいでしょう。FP視点で検証すると、相場の目減りに4月の自動車税を加えた「待つ費用」は、車によって10万円を超えます。これから公表される9月の輸出抹消の数字が、相場の行方を決める最後のピースです。相場は平均値で語られますが、売却はいつも手元の一台で決まります。

