
11月2日の短プラ引き上げで、銀行のマイカーローンがまた上がります。ただ中古車購入で200万円を5年借りた場合、負担増は約1.3万円。借入先の選び方ひとつで動く26万円のほうが、はるかに大きな差です。
「日銀が利上げしたから、クルマのローンは急いで組まないと損をする」。そう思い込んでいませんか。
日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.25%程度へ引き上げました。同日、三菱UFJ銀行は短期プライムレートを年2.375%から2.625%へ上げると発表し、改定日は11月2日です。常陽銀行もこれを受け、11月2日からマイカーローンの新規借入金利を0.25%上げると告知しています。ところが200万円を60回払いで借りるケースで試算すると、0.25%上げによる利息の増加は1万3,357円にとどまります。
一方、同じ200万円を販売店経由の信販ローン(年8.0%と仮定)で借りるか、銀行のマイカーローン(年3.25%)で借りるかで、5年間の総利息は26万3,567円も違います。利上げの影響の約20倍が、「いつ借りるか」ではなく「どこで借りるか」で決まる計算です。
この記事では、日銀の利上げが中古車ローン金利へ届く経路と時期、11月2日を前にした駆け込みの損得、借入先別と現金一括を含めた総支払額を整理し、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から購入資金の組み方を検証します。

📌 11月2日に短プラ2.625%へ、中古車ローン「0.25%上げ」の実額は1万3,357円

利上げの報道は住宅ローン一色ですが、マイカーローンも同じ短プラの上に乗っています。ただ借入額は住宅の数十分の一で、期間も5年前後。同じ0.25%でも、家計への重みはまったく違います。
日銀1.25%から短プラ2.625%へ、マイカーローンに届くまでの経路
日本銀行は9月18日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針を賛成7・反対2で決め、9月24日から適用しました。これを受けて三菱UFJ銀行は同日、短期プライムレート(短プラ)を年2.375%から2.625%へ引き上げると発表しています。改定日は11月2日(月)です。短プラは銀行が優良企業向けの短期貸出に使う最優遇金利で、変動型の目的別ローンの基準金利と連動させている銀行が少なくありません。
三菱UFJ銀行の短プラは、2026年2月2日に1.875%から2.125%へ、8月3日に2.375%へ、そして11月2日に2.625%へと、1年足らずで3回・計0.75ポイント上がります。地方銀行でも動きが出ており、常陽銀行はマイカーローンの金利一覧ページで、短プラの引き上げを理由に11月2日から新規借入の金利を0.25%上げると告知しました。日銀の決定から店頭のローン金利まで、およそ6週間で波が届く構図です。
200万円・60回で試算すると、0.25%上げの負担増は1万3,357円
中古車購入でよくある借入額として、200万円を5年(60回)の元利均等・ボーナス払いなしで借りるケースを試算します。年3.00%なら月々3万5,937円、総利息は15万6,243円。0.25%上がって年3.25%になると月々3万6,160円、総利息は16万9,600円です。差は月々223円、5年間で1万3,357円。見出しから受ける印象ほどの金額ではありません。
住宅ローンで同じ0.25%上げが大きく報じられるのは、借入額が数千万円単位で、返済期間も35年と長いからです。200万円・5年の中古車ローンは元本も期間も桁違いに小さく、利上げ幅がそのまま家計を揺らす構造にはなっていません。金利の「上げ幅」より、そもそもの「金利水準」がどこにあるかのほうが、総支払額を大きく左右します。
三菱UFJは4年で下限0.875ポイント上昇、変動型は駆け込みの効果が数千円
三菱UFJ銀行の公式サイトによれば、同行のマイカーローン金利は2026年10月1日現在で年2.375%〜3.50%(変動金利・保証料込)です。ガリバーを運営するIDOMの解説記事が2022年12月1日時点として掲げた同行の金利は年1.50%〜2.45%でしたから、下限で0.875ポイント、上限で1.05ポイント上がった計算になります。200万円・60回なら、下限金利同士の比較で総利息は約7.7万円から約12.3万円へ、4年で4.6万円増えました。
ここで見落とされがちなのが、銀行のマイカーローンの多くが変動金利だという点です。三菱UFJ銀行の金利説明では、目的別ローンの変動金利は短プラに連動する基準金利をもとに年2回見直され、すでに借りている人の金利にも反映されます。つまり11月2日より前に借りても、変動型なら次の見直しで新しい金利に追いつかれます。仮に旧金利の3.00%が8カ月続いた後に3.25%へ上がるとすれば、最初から3.25%で借りた場合との差は約3,300円。駆け込みで得られるのは数千円程度です。

📌 借入先の差は26万円、利上げの約20倍効く「どこで借りるか」と現金一括の損得

販売店で「ローンも一緒にどうぞ」と言われると、金利を確かめずにサインしがちです。年8%と年3.25%の差は、200万円・5年で26万円。中古車1台分の諸費用が丸ごと消えるほどの金額です。
販売店ローン年3.5〜9%前後と銀行1〜4%台、固定と変動の違い
トヨタのクルマ情報サイトGAZOOが2026年2月に掲載した中古車ローンの解説によれば、銀行系ローンの金利は年1%台〜4%台前後、信販会社・ディーラーローンは年3.5%〜9%前後が一般的な水準です。同記事は、中古車ローンでは固定金利が主流で、返済期間は3年〜7年が多いとしています。銀行と販売店の金利水準の開きは最大で5ポイント前後あり、11月2日の0.25ポイントとは桁が違います。
販売店ローンの金利を年8.0%と置くと、200万円・60回の総利息は43万3,167円。銀行マイカーローンの年3.25%なら16万9,600円で、差は26万3,567円、0.25%利上げの影響(1万3,357円)の約20倍です。年9.0%なら差は32万1,402円まで広がります。カウントダウンで並べると、販売店ローン43.3万円、銀行ローン17.0万円、11月1日までの銀行ローン15.6万円、現金一括の逸失利息1.9万円。同じ200万円の中古車でも、払い方だけで金利コストはここまで変わります。
変動の上昇リスクを引き算しても、銀行ローンの優位は崩れない
公平を期すため、銀行の変動金利が上がり続けるケースも試算しました。年3.25%で借り、その後毎年0.5ポイントずつ上がって5年目に5.25%へ達する厳しめのシナリオでも、総利息は20万2,611円。毎年0.25ポイントずつの上昇なら18万6,046円です。固定年8.0%の43万3,167円に届くには、5年間の平均金利が年8%近くまで上がる必要があり、短プラが1年足らずで0.75ポイント上がった今のペースが続いても届かない水準です。
もちろん販売店ローンにも利点はあります。審査から契約までが早く、納車と同時に手続きが完結し、銀行の審査に通りにくい人でも組める場合があります。また変動型の銀行ローンは、5年間の返済総額が確定しないという不確実性を抱えます。金利差の26万円を「手間代と安心代」として払う価値があるかどうか、契約前に一度は数字で比べてから決めるべきです。
手元資金がある場合はどうでしょう。三菱UFJ銀行などは11月2日から普通預金金利を年0.40%から0.50%へ上げます。200万円を預金に残したまま銀行ローン(年3.25%)を組み、返済に取り崩していく場合、5年間で受け取れる預金利息は税引後でおよそ1万8,600円。差し引き約15万円、余裕資金での一括払いのほうが有利です。ただし購入で手元資金を使い切り、急な出費でより高い金利の借入に頼ることになれば本末転倒です。生活費の半年分程度は別枠で残し、それを超える部分を頭金や一括払いに回す。この順番が金利上昇局面の基本になります。
📌 たかまさはこう見ている

11回の買い替えでは、ローンを組んだ回も一括で払った回もありました。振り返ると、金利の時期を読んだ回より、借入先を比べた回のほうが確実に手元にお金が残っています。
金利のある世界が戻ってきました。日銀は9月に政策金利を1.25%程度へ上げ、三菱UFJ銀行の短プラは1年足らずで0.75ポイント上がります。報道の関心は住宅ローンと預金金利に集中していますが、中古車を買う人にとっての論点は少し違います。住宅ローンは借入額が大きく期間も長いため、「上げ幅」がそのまま家計を直撃します。一方で中古車ローンは、借入額が小さく期間も短い代わりに、借入先によって金利水準が最大5ポイント前後も違うという、住宅ローンにはない構造を抱えています。金利上昇局面で効くのは上げ幅への反応ではなく、この水準差の見極めです。
FPとして総支払額で見ると、優先順位ははっきりしています。第一に、販売店の見積書でローンの実質年率と総支払額を必ず書面で確認すること。第二に、銀行のマイカーローンの事前審査を並行して申し込み、同じ借入額・回数で総利息を比べること。第三に、生活防衛資金を除いた余裕資金があるなら、頭金を厚くするか一括払いに回すことです。11月2日前の駆け込みは、固定金利型の銀行ローンなら意味がありますが、変動型なら効果は数千円にとどまります。焦って販売店ローンに飛びつき、駆け込みで得る数千円の何十倍もの金利差を払ってしまうのが、最も避けたい失敗です。
私自身、若いころは販売店で勧められるままにローンを組み、後から金利を見て驚いたことがあります。クルマ選びには何週間もかけるのに、総額で数十万円を左右するローン選びは数分で決めてしまう。この時間配分の逆転こそが、中古車購入で最も多い損の正体だと私は見ています。これから中古車を買う方は、車両の値引き交渉と同じ熱量で、ローンの金利を比べてください。金利の上げ幅は日銀が決めますが、払う利息の大半を決めるのは、契約書にサインするあなた自身です。

