
三菱が10月19日、新型パジェロを世界で最初にタイで発売しました。生産国の価格を円に直すと、最上級4WDは約943万円。日本の販売店で聞く795万円より148万円も高い。「現地で買えば安い」の常識が、ここでは逆さまです。
2026年9月2日に世界初披露された5代目パジェロの公式画像です。タイのレムチャバン工場で生産され、10月19日にタイで世界初の販売が始まりました。日本と豪州では12月中旬の発売が予定されています。
出典:三菱自動車 ニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV「パジェロ」を世界初披露』(2026年9月2日)
「クルマは生産国で買うほうが安い」。そう思い込んでいませんか。
三菱自動車は2026年10月19日、7年ぶりに復活した新型パジェロを、生産拠点のタイで世界に先駆けて発売しました。タイでの価格は3グレードで149.9万〜199.9万バーツ。最上級のSuper Exceed 4WDを10月19日の相場(1バーツ=約4.72円)で換算すると約943万円です。これに対し、販売店情報による日本仕様のSUPER EXCEEDは795万800円。タイから船で運ばれてくる日本のほうが、148万円も安い計算になります。
しかもタイの下位2グレードは後輪駆動の2WDです。日本仕様は最安のGLSまで全車4WDで、そのGLSが619万3,000円。タイのGLS 2WD(約708万円相当)より88万円安い水準です。日本では予約開始から約2週間で4,000台を超える予約が入ったと報じられています。
この記事では、タイと日本のグレード別価格を同じ物差しに並べたうえで、差を生んでいる税の構造、タイで打ち出された「金利1.99%」の本当の重さ、そして日本の買い手が価格より先に確かめるべき納期の論点を、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から検証します。

📌 新型パジェロのタイ価格149.9万〜199.9万バーツ、円換算で日本仕様より88万〜148万円高い逆転の中身

タイの価格表を円に直して日本の販売店価格と並べると、3グレードすべてでタイのほうが高い。しかもタイの下2グレードは2WDです。「装備が少ないから安い」という説明すら成り立ちません。
タイは3グレード、うち2つが2WD、4WDは最上級のSuper Exceedだけ
タイ現地の自動車メディアが一斉に報じた公式価格によれば、タイ仕様は3グレード構成です。エントリーのGLS 2WDが149万9,000バーツ、中間のGSR 2WDが169万9,000バーツ、最上級のSuper Exceed 4WDが199万9,000バーツ。エンジンは全車共通の2.4L直4クリーンディーゼル(4N16型・可変ジオメトリーターボ)で、タイ仕様の公表値は最高出力204PS・最大トルク480N・mです。トランスミッションは新開発の8速ATを組み合わせます。
装備の階段も明快です。GLSでも18インチアルミ、7エアバッグ、360度カメラ、追従式クルーズコントロール、12.3インチの画面を備え、GSRで20インチ、ヤマハの12スピーカー、メモリー付きシートが加わります。Super Exceedはパノラマガラスルーフ、前席ベンチレーション、デジタルルームミラー、運転支援のMI-PILOTを上乗せし、四輪駆動のスーパーセレクト4WD-IIを使えるのはこのグレードだけです。三菱自動車タイランドは、初期受注の約6割が最上級に集まると見込んでいると現地メディアは伝えています。
最上級同士で148万円、日本の4WDがタイの2WDより88万円安い
日本仕様の価格は、10月29日に予定される正式発表の前に販売店から出ている暫定値です。国内の複数の媒体が伝えている数字は、GLS 619万3,000円、GSR 676万5,000円、EXCEED 693万円、SUPER EXCEED 795万800円の4グレード(いずれも10%消費税込み)。日本仕様は全車が3列7人乗りの4WDで、三菱の公式予約サイトもエントリーのGLSにスーパーセレクト4WD-IIとS-AWCを備えると案内しています。
同じ名前のグレード同士を並べると、差ははっきりします。GLSは88.2万円、GSRは125.4万円、最上級は148.4万円、いずれも日本のほうが安い計算です。とくにGLSは、タイでは2WDの車が約708万円、日本では4WDの車が619万3,000円。駆動方式が1段上の車を、生産国より安く買える構図です。最上級同士で見ても、タイ価格は日本の約1.19倍に相当します。
もちろん、同じグレード名でも装備は国ごとに違います。タイのGLSに付く追従式クルーズコントロールや360度カメラが日本のGLSにどこまで付くかは、正式発表の装備表で照合する必要があります。ただし日本のGLSにはタイのGLSにない4WDと低速用の副変速機が付く以上、「日本仕様は装備を削ったから安い」という説明では、88万円の差は埋まりません。
為替がどこまで円高に振れたら逆転は消えるのか、損益分岐は1バーツ=3.98円
円換算の結果は為替レートで動きます。そこで、日本価格をタイ価格で割り、逆転が消える為替水準を計算しました。最上級同士なら1バーツ=3.98円、GSR同士で3.98円、GLS同士でも4.13円です。10月19日の相場は4.72円前後で、直近1年の円高側の端でも4.59円程度でした。
つまり、円が今より15%以上強くならない限り、日本仕様が安いという結論は変わりません。円安で輸入品が軒並み値上がりしている時期に、タイから運ばれてくるクルマの価格が生産国を下回っている。この逆転は、為替の偶然ではなく構造から生まれていると考えるのが自然です。

📌 差を生んでいるのはタイの物品税、そして「金利1.99%」は日本の3.7%とほぼ同じ重さ

148万円の差は工場の実力差ではなく、税の設計差です。そしてタイの「1.99%」という低金利も、計算方法を揃えると日本の金利とほぼ並びます。数字は見出しより中身で比べるべきです。
世界初披露のニュースリリースで公開された新型パジェロの別カットです。トライトンのラダーフレームを基にした専用の車体で、全長4,920mm・全幅1,925mm・ホイールベース2,870mmの3列7人乗り。タイ工場から日本・豪州へ輸出され、2027年度からは約100の国と地域へ広げる計画です。
出典:三菱自動車 ニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV「パジェロ」を世界初披露』(2026年9月2日)
タイの新車価格には物品税が乗る、日本は関税ゼロで消費税10%だけ
工場が同じなら、差は工場の外で生まれます。タイの新車価格には、日本にはない物品税が含まれます。2026年1月から始まった新しい税制では、エンジン車の物品税がCO2排出量に応じて13〜34%の幅で決まり、そのうえに付加価値税7%がかかります。現地の輸出向け販売会社は、新型パジェロをピックアップ派生の乗用車「PPV」の区分と説明しています。一方の日本は、輸入する乗用車に関税をかけておらず、店頭価格に含まれる税は消費税10%です。購入時にかかっていた環境性能割も2026年3月末で廃止されました。
数字で確かめます。日本のSUPER EXCEEDから消費税を抜くと約723万円、タイのSuper Exceedから付加価値税7%を抜いても約187万バーツ、円換算で約882万円です。付加価値税を除いてもなお約159万円の差が残ることになり、その大半は物品税とその上乗せで説明がつきます。webCGの9月のコラムが指摘するとおり、タイ生産の人件費や物価の優位は円安とバーツ高でかなり薄れています。それでも日本の店頭価格が低いのは、タイの消費者が国内向けの税を払い、日本向けの輸出車にはその税がかからないからです。
引き算の誠実さとして、タイ側の付帯サービスも見ておきます。タイの価格には、5年・15万kmの保証、5年・10万kmの点検工賃無料、1年間の任意保険(1種)が含まれると現地メディアは伝えています。日本の新車価格には通常こうした保険や整備の工賃は含まれません。仮にこの付帯価値を合計30万円と高めに見積もっても、最上級同士の148万円の差は120万円近く残ります。
タイの1.99%は定率表示、実質年率に直すと3.8%で日本の3.7%と並ぶ
タイの発売キャンペーンでは「金利1.99%」が打ち出されました。日本の予約特典は残価設定ローン「スーパーマイカープラン」の実質年率3.7%です。見出しだけ見れば、タイの金利は日本の半分強に見えます。ところがタイの自動車ローンは、借りた元金に対して毎年同じ率の利息を掛ける「フラットレート」で金利を示すのが一般的です。返済で元金が減っても利息は減らないため、日本の実質年率とは計算の土台が違います。
計算すると、定率1.99%の5年返済は実質年率で約3.8%に相当します。600万円を60回で借りた場合の利息は、タイ方式で約59.7万円、日本の3.7%で約58.1万円。差は約1.6万円にすぎません。「タイは金利が安い」という印象は、表示方法の違いが作った錯覚です。ここでもFP視点で検証すると、日本の買い手が条件で負けているわけではないことが分かります。
日本の買い手が価格より先に確かめるべきは、EXCEEDとGLSの「2027年4月生産」
価格で優位に立つ日本の買い手が、本当に気にすべきなのは納期です。三菱の予約注文特設サイトは注記で、EXCEEDとGLSは2027年4月からの生産予定と案内しています。日本の発売は12月中旬の予定ですが、割安なGLSや、20インチとアダプティブLEDヘッドライトを備える中間のEXCEEDを選ぶと、手元に届くのは早くても2027年春以降になる可能性があります。一方タイでは10月末から順次納車が始まると現地メディアは伝えています。
4,000台を超えた日本の予約が、三菱の今年度の国内販売計画に並ぶ規模だという報道もあります。生産はタイ工場の1拠点に集まり、9月下旬には洪水による部品輸送の乱れで生産が一時止まりました。タイ国内の受注、豪州向け、日本向けが同じ工場の枠を分け合う以上、日本の予約は「どのグレードを、いつまでに必要か」で順番が決まると考えておくべきです。
📌 たかまさはこう見ている

生産国より日本が安いという逆転は、三菱の値付けの妙というより税の構造の結果です。だからこそ日本の買い手は、価格の割安さを当然と受け止め、次の判断材料である納期とグレードに視線を移すべきだと考えます。
タイの価格表を見て最初に感じたのは、三菱が日本市場を相当に意識して値付けをしているということです。タイでは2WDを入口に置いて149.9万バーツから始め、4WDは最上級だけに絞りました。現地の販売会社は下位2グレードを「2WDを求める顧客向け」と位置付けています。対して日本では、全車4WD・3列7人乗りで揃え、最安を619万円台に置いた。同じ工場の同じクルマで、タイは「入口を下げる」、日本は「4WDを標準にして価格を抑える」という正反対の設計を採ったわけです。ランドクルーザー250の従来型ディーゼル上位グレードが735万円だった日本の本格SUV市場に、パジェロは3列7人乗りの4WDを619万円台から置いてきた、という読み方もできます。
私自身、これまで11台のクルマを購入してきて、価格交渉より大事だったのは「いつ手に入るか」と「いつ手放すか」でした。日本仕様の価格がタイより低いからといって、今の段階で慌てて予約を積み増す必要はありません。正式な価格と装備表は10月29日に出る予定ですし、GLSとEXCEEDは2027年4月からの生産です。FP視点で整理すると、最上級を年内に確実に手にしたい人は予約の順番を、GLSを選ぶ人は2027年春までの今のクルマの車検や下取りの時期を先に確認しておくのが合理的です。ローンについても、タイの「1.99%」を羨む必要はありません。比べるべきは見出しの数字ではなく、実質年率と総支払額です。
そしてもう一つ、パジェロが映しているのは日本という市場の立ち位置です。輸入車に関税をかけず、購入時の環境性能割も廃止された日本は、世界でも新車を「税の上乗せが少ない価格」で買える市場の一つになっています。円安で何もかもが高く感じる時代に、タイ製のクルマが生産国より安く日本に並ぶ。クルマの値段を決めているのは工場の場所ではなく、その国が新車にかける税の重さなのです。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべて三菱自動車工業の公式ニュースルーム(https://www.mitsubishi-motors.com/jp/newsroom/)のニュースリリース『三菱自動車、新型クロスカントリーSUV「パジェロ」を世界初披露』(2026年9月2日)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像は同リリースの画像01、サブ画像は画像03です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。著作権は三菱自動車工業株式会社に帰属します。

