
富士の聖地に1700台のZが集結した5月5日、日産はマイナーチェンジモデルの実車をファンの前で初公開しました。GT-R生産終了、スープラ販売終了の中、純ガソリンV6ツインターボの最後の砦が、夏に向けてどう進化するのか。「待つ」「今買う」「中古へ逃げる」の3択をFP視点で試算します。
「フェアレディZが、夏に変わる」。GW最終盤の5月5日、富士スピードウェイ「モビリタ」に集まった1,700台超のZオーナーの目の前で、日産はマイナーチェンジ実車を初公開しました。メーカーが正式発表前の新型車をファンの集いに直接持ち込むのは極めて異例の演出です。
初代S30型「240ZG」のGノーズを彷彿とさせる新フロントノーズ(30mm延長)、初代「グランプリグリーン」をオマージュした新色「雲龍グリーン」、エンブレムは「NISSAN」から「Z」へ。そしてNISMOには待望の6速MTが新設定され、ブレーキローター軽量化・サスペンション見直し・新タイヤSPORT MAXX RS採用と、走り側も総入れ替えに近い深化を遂げます。
2025年8月にR35 GT-Rが生産終了、2026年3月にGRスープラも販売を終えた今、純ガソリンV6ツインターボのスポーツカーは事実上Z一台が最後の砦になります。発売は2026年夏、2027年モデル(MY27)として登場予定。価格は全グレードで約20万円アップの見込みです。
本記事では、5/5公開された実車のディテール、NISMO 6MT追加と足回り大改良の中身、そして現行RZ34を「待つ・今買う・中古へ逃げる」の3択で総コスト試算した判断軸を整理します。
53年ぶりのGノーズ復活と初の6MT追加で「ヘリテージと走り」を同時に深掘りした2027年モデル。GT-R・スープラ終焉後の純ガソリンV6ツインターボ最後の砦として、約20万円値上げの中身は装備・走り・希少性の3点で十分に取り戻せる構造になっています。
📌 5/5富士で初公開された実車の中身・Gノーズ復活と「雲龍グリーン」の意味

正式発表前にファンの集いで実車を見せる、というのは並大抵の自信ではできません。日産が今回のマイチェンに込めた「歴史を継承しつつ、Z史上最高の走りを目指す」という覚悟が、富士の演出ににじんでいました。
Gノーズ復活と「フロント30mm延長」の中身
マイチェン最大のトピックは、フロントバンパーの新意匠です。初代S30型「フェアレディ240ZG」(1971年)に装着された「Gノーズ」と呼ばれる前傾するロングノーズを、53年ぶりに現代解釈で復活。フロント長を30mm伸ばしつつ、空力面ではフロントリフトを3.3%、ドラッグ(空気抵抗)を1%減少させたといいます。見た目だけのオマージュではなく、サーキットでの実走性能まで踏み込んだ設計です。
もうひとつの注目はフロントエンブレム。これまでのフェアレディZは、フロントノーズ中央に丸い「NISSAN」マークが入っていましたが、マイチェン版では歴代Zと同じ「Z」エンブレムへ変更されました。この変更は地味ですが、日産が新型を「日産の中の一車種」ではなく「Zという独立した存在」として再定義した宣言とも読めます。同時にホイールデザインも一新され、外周のスポーク造形に過去のZの意匠が織り込まれています。
新色「雲龍グリーン」とタンレザー内装の追加
ボディカラーで最も話題を集めたのが、メタリックグリーンの新色「雲龍(うんりゅう)グリーン」です。これは初代S30型に設定されていた「グランプリグリーン」をオマージュしたカラー。緑系塗料は紫外線で退色しやすい弱点を、現代の塗装技術で克服し、深みのあるメタリック感を維持できる設計だといいます。スーパーブラックとの2トーン仕様も用意され、富士の会場ではこのカラーをまとった「バージョンST」が展示されました。
インテリア側では、これまで設定がなかった「タン」カラーのレザーシートが新たにオプション設定。ドアトリム、センターコンソールのソフトパッド、シート表皮までタンで統一でき、雲龍グリーンの外装と組み合わせるとクラシカルかつラグジュアリーな雰囲気に仕上がります。さらにエンジン始動時のフルデジタルメーター演出として、歴代フェアレディZのシルエットがアニメーションで入れ替わるオープニングが新採用されました。Zオーナーが毎朝にやりとする小ネタです。
足回り大改良・ダンパー大径化と乗り味の刷新
パワートレインは現行同様、3.0L V6ツインターボ「VR30DDTT」(標準405ps、NISMO 420ps)が継続。一方で足回りは前後ダンパーが大径化(ピストン径を従来の40mmから45mmへ拡大)され、減衰力の応答性が向上。市街地走行ではしなやかな乗り心地、サーキット走行では路面追従性の向上、という両立を目指したセッティングです。サスペンション全体の見直しも入っており、現行RZ34オーナーの試乗会では「乗り心地の上質感が一段上がった」との声が多く出ています。

📌 NISMO 6MT追加と新タイヤSPORT MAXX RS・走りの完成形を目指した深化

NISMOに6MTが付く、という事実そのものが、Zユーザーにとっては「ようやく」の一言です。AT専売だったNISMOは2023年8月の登場以来、「エンジンは別格、でも自分でシフトしたい」という層からは見送られてきた経緯があります。今回の追加で、その層が一気に動く局面が来ます。
NISMO 6MTは「他モデルからの流用なし」の専用品
これまでフェアレディZ NISMOは9速ATのみの設定で、ドライビング志向の濃いMTファンからは「NISMOにはMTが必要だ」という声が長らく上がっていました。今回追加される6速MTは、他モデルからの流用ではなくNISMO専用設計と説明されています。さらに6MT車専用のECUデータが組み込まれ、トルク感とアクセルレスポンスを最適化、高回転まで回した際にも加速感が途切れないようエンジン制御の各種パラメーターが見直されています。
車重もマイチェン後のNISMO ATが1,670kg、6MT車は1,640kgと、それぞれ旧型から10〜40kg軽量化されました。エンジン本体(VR30DDTT、420ps)は据え置きですが、車重とギアレシオの組み合わせで体感パワーは確実に上がる設計です。
ブレーキ・タイヤ・サスの3点セット改良で「サーキット直結」の走り
足回りでは、ブレーキローターを従来の1ピースソリッドから2ピースのドリルドディスクに変更して軽量化。バネ下重量が約9kg軽くなり、サスペンションの動きが質的に変わったといいます。これに合わせてサスペンションセッティングも見直され、街乗り快適性とサーキットグリップを同時に持ち上げるバランスへ。ブレーキキャリパーは制動性能アップを視覚で示すため、明るいオレンジがかった塗装に変更されています。
タイヤはダンロップ「SPORT MAXX RS」を新規採用。これは2026年導入の新しい近接騒音規制に対応するため、住友ゴム工業が「グリップを下げずに静音化する」という難題に応えて開発した新銘柄です。サイドウォールの「DUNLOP」ロゴは漆黒仕上げの独自技術「Nano Black」を採用し、駐車場で離れて見たときの満足感まで設計に織り込まれています。
2027年モデル予想価格と納期の見立て
各種報道では、マイチェン後の予想価格はベースグレードが約570万円〜(現行549万7,800円から+約20万円)、Version STが約700万円前後、NISMO 6MTが約950万円前後と見られています。原材料・物流コストの上昇に加え、装備充実分が上乗せされる構造です。発売は2026年6〜8月の夏で、2027年モデル(MY27)として登場予定。NISMO MTは初期に受注集中が予想され、現行NISMOの納期事情(過去2年待ち事例あり)からも、抽選販売・割り当て型の販売になる可能性が高いと見ています。
📌 たかまさはこう見ている

過去20年、私は11台の車を買い替えながら新車市場と中古車市場の両方を見続けてきました。「マイチェン待ちか、現行で今買うか、中古でつなぐか」という3択は、スポーツカーの場合、家族の同意・住宅ローンの状況・保管環境まで絡んできます。Zはその判断を、純ガソリン最後の局面で迫ってくる珍しい一台です。
20年以上自動車業界を取材してきて、「同じセグメントが3年で2つ消える」という光景は珍しい部類です。R35 GT-Rは2025年8月に18年の歴史に幕を閉じ、GRスープラ(A90)も2026年3月に第5世代の販売を終えました。この2台はBNR34・80スープラの直系として、純ガソリン直6・V6時代の精神を体現してきた両雄です。彼らが消えた市場で、フェアレディZ(RZ34)は「同じ墓場に向かう仲間」ではなく、「VR30DDTTという最新世代V6ツインターボでまだ進化を続ける異端児」として立っています。
FP視点で「マイチェン待ち」「現行を今買う」「中古へ逃げる」の3択を整理すると、それぞれに合理性があります。マイチェン待ちは、Gノーズ・新色・新タイヤ・走りの全方位刷新を新車保証付きで手に入れる代わりに、約20万円の値上げと初期受注集中による1年超の納期を覚悟する選択。現行を今買うのは、約550万円のベース価格と既存の納期5ヶ月という即納性を取る代わりに、夏以降は「旧型」になることを受容する選択。中古へ逃げるのは、初年度落ちで100万円以上下がる新古車を狙う代わりに、初期型の足回りで満足できるかという見極めが必要です。
注目すべきは、現行RZ34型の中古相場が「マイチェン発表で下落するか上昇するか」というポイント。R35 GT-Rの場合、生産終了発表後にむしろ初期型・後期型ともに値上がり傾向が続きました。Zも純ガソリン最後の世代として、新車を逃した層が中古へ流れ、結果的に相場が硬直する可能性が高いと見ています。純ガソリンスポーツが消えていく時代に、買い時を分けるのは「動く判断軸を持っているかどうか」です。

