
ダイハツがコペン現行モデルの生産を今月末で終えます。感傷的な話にする前に、まず公式の価格表を開きました。全5仕様・10価格の並び方に、このクルマが最後まで何を売っていたかが、そのまま残っています。
コペンのエントリー仕様となるRobe(7速スーパーアクティブシフト付CVT車/198万3,300円)。全長3,395mm・全幅1,475mmという軽自動車枠のなかに、電動開閉式ルーフ「アクティブトップ」と2名分の居住空間を収めています。ダイハツはこの現行モデル(LA400K型)の生産を2026年8月末で終了します。
新車で買える軽自動車のオープンカーが、いま日本に何車種あるかご存じでしょうか。
答えは1車種です。ダイハツ コペン。そのコペンの現行モデル(LA400K型)について、ダイハツは2026年8月末での生産終了を公式に告知しています。公式サイトには「販売会社での在庫がなくなり次第、販売終了させていただきます」と明記されており、ボディカラーやグレードの希望に沿えない場合があることも併記されています。つまり今月は、新車の軽オープンスポーツを注文できる事実上の最後の月ということになります。
ただ、この記事では「寂しい」で終わらせません。公式サイトのグレード・価格ページを開いて全5仕様・10通りの価格を書き出すと、5速MTの上乗せ額が全5仕様で一律5万5000円、北海道地区の差額1万1000円は寒冷地仕様のメーカーオプション価格と1円単位で一致していました。最上位GR SPORTと上級Sグレードの30万4,700円差についても、装備一覧表のオプション価格を突き合わせると、その約66%が1点の部品で説明できます。
本記事では、コペン全5仕様の価格表を縦に読んで最後のグレード戦略を分解し、658cc・47kW(64PS)・車両重量850kgという諸元が何を意味していたのかを整理します。そのうえで最後に、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から「いま新車で買う」判断に必要な数字を検証します。

📌 全5仕様198.3万〜255.6万円、コペン最後の価格表を縦に読む

価格表は、そのクルマが何を売っていたかの記録です。コペンの表は驚くほど整っていて、差額のほとんどが具体的な部品名で説明できる。最後の1台としては、実に潔い構造でした。
198万3,300円から255万6,400円まで、10価格が描く階段
ダイハツ公式サイトのグレード・価格ページによれば、現在のコペンはRobe/Robe S/Cero/Cero S/GR SPORTの5仕様で構成されています。すべて2WD(FF)で、7速スーパーアクティブシフト付CVTと5速MTの2種類のトランスミッションが選べるため、価格は10通り。入口はRobeのCVTで198万3,300円、頂点はGR SPORTの5MTで255万6,400円です。上下の幅は57万3,100円、倍率にすると約1.29倍にとどまります。
この階段には、はっきりした設計があります。まずデザイン違いのRobeとCeroの差は5万7,200円。そこに走りの装備を足した「S」がそれぞれ上に乗り、頂点にGR SPORTが立つという3層構造です。デザインの選択と走りの選択が、価格軸の上で完全に分離しているのがコペンの特徴でした。「顔は好みで選び、足まわりは予算で選ぶ」という組み立て方が、最後の価格表まで維持されていたことになります。
5MTは全5仕様が一律5万5000円高、燃費差まで足すと10年で8万4000円
この表で最初に目を引くのが、右端の列です。5速MTの上乗せ額が、Robeでも、Robe Sでも、GR SPORTでも、すべて5万5,000円ちょうどで揃っています。198万円台のエントリー仕様でも250万円台の最上位でも、MTを選ぶ代金は変わりません。グレードが上がるほどMT比率が高いのは想像に難くありませんが、コペンはそこに価格差を付けませんでした。MTを「上位グレードの特権」にせず、あくまでミッションの選択肢として横並びに置く。これは軽オープンとしての設計思想がそのまま値付けに出た部分だと読めます。
ただし、引き算も正直にしておきます。主要諸元表によれば、WLTCモード燃費はCVTが19.2km/L、5MTが18.6km/Lで、MTのほうが0.6km/L不利です。年間1万km走行・レギュラー175円/Lと仮定すると、燃料代はCVTが約9万1,000円、5MTが約9万4,000円で、差は年間約2,900円。10年乗れば約2万9,000円になります。車両価格の5万5,000円と合わせると、MTを選ぶ実質的な上乗せは10年で約8万4,000円という計算です。それでも月あたり700円程度ですから、3ペダルに価値を感じる人にとっては十分に許容できる水準でしょう。
GR SPORTの30万4,700円差、その66%はBBS鍛造ホイールで説明できる
次に、最上位GR SPORTの立ち位置を数字で分解します。GR SPORT(CVT)は250万1,400円。すぐ下のRobe S(CVT)が219万6,700円ですから、差額は30万4,700円です。この30万円強で何が変わるのか。公式の主要装備一覧表を突き合わせると、答えの大半が1点の部品に集約されます。
GR SPORTにはBBS製鍛造16インチアルミホイール(COPEN専用デザイン)が標準装備されます。同じホイールをRobe S/Cero Sに装着する場合のメーカーオプション価格は20万2,400円。つまり30万4,700円の差額のうち、約66%にあたる20万2,400円はホイール1点で説明がつくことになります。残りは10万2,300円です。
その10万2,300円で何が付くかというと、GR SPORT専用ショックアブソーバー(スプリング赤塗装)、GR SPORT専用補強(フロントブレース/センターブレース・床下スパッツ付)、自発光式3眼メーター、GR SPORT専用レカロシート、GR SPORT専用MOMO製本革巻ステアリング、GRロゴ入り電子カードキー、専用エンブレム類とピアノブラック調加飾です。ボディ補強と専用足まわりと3眼メーターが、差し引き10万2,300円に収まっているという構図で、走りに効く部分の値付けはむしろ控えめだったと言えます。逆にいえば、BBSにこだわらないならRobe SやCero Sで大半の走行性能装備は手に入る設計でした。

📌 658cc・64PS・850kgという最後の1台、D-Frameが残したもの

諸元表を眺めていると、この寸法によく詰め込んだと改めて思います。全長3,395mmは軽の上限いっぱい。そこに屋根の格納スペースと2名分の居住空間を成立させたのが、コペンという企画でした。
最上位のGR SPORT(7速スーパーアクティブシフト付CVT車/250万1,400円)。BBS製鍛造16インチアルミホイールを標準装備し、フロントブレースとセンターブレース、床下スパッツによる専用補強を受けています。TOYOTA GAZOO Racingとの協業から生まれた仕様で、コペンの走行性能面の到達点にあたります。
全長3,395mmに電動ルーフを収めた設計、D-Frameという骨格
主要諸元表の数字を並べます。型式は3BA-LA400K、全長3,395mm・全幅1,475mm・全高1,280mm、ホイールベース2,230mm、最低地上高110mm。室内は長さ910mm・幅1,250mm・高さ1,040mmで乗車定員は2名です。エンジンはKF型の水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラーターボ横置で、総排気量658cc、最高出力47kW(64PS)/6,400rpm、最大トルク92N・m(9.4kgf・m)/3,200rpm。車両重量は5MT車が850kg、CVT車が870kg、最小回転半径は4.6m、タイヤは165/50R16です。
屋根が開くクルマは、屋根がない状態でもボディがねじれない骨格を必要とします。ダイハツはこれを新骨格構造「D-Frame」で解決し、2014年発売の2代目で「感動の操縦安定性と乗り心地」を実現したとしています。加えて樹脂製の外板を着脱できる「DRESS-FORMATION」により、RobeとCeroの間で購入後に外装を入れ替えられる仕組みまで用意されました。軽自動車という制約の中で、開いて、ねじれず、着せ替えまでできるという企画は、後にも先にもコペンだけです。この構造があったからこそ、5仕様という多品種を1つの骨格で成立させられたとも言えます。
19.2km/Lと年1万800円、スポーツカーとしては異例に軽い維持費
コペンがユニークだったのは、走りの装備と維持費の軽さが同居していた点です。WLTCモード燃費はCVTで19.2km/L、内訳は市街地15.4km/L・郊外20.4km/L・高速道路20.6km/L。燃料は無鉛レギュラーガソリンでタンク容量30Lですから、単純計算での満タン航続は約576kmになります。ハイオク指定が当たり前のスポーツカー市場において、レギュラー仕様というのは見過ごせない美点でした。
税金面はさらに明快です。自家用軽乗用車の軽自動車税種別割は年1万800円(2015年4月以降に新規検査を受けた車両の標準税率)。同じオープン2シーターでも1.5Lクラスの登録車なら年3万4,500円ですから、税金だけで年間2万3,700円、10年で23万7,000円の差が生まれます。車検も軽自動車の枠組みで済みます。趣味のクルマを「増車」の形で持ちたい人にとって、この維持費の軽さこそがコペンを選ぶ最大の合理性でした。新車の選択肢が消えるということは、この組み合わせが市場から消えるということでもあります。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり新車発表を取材してきて、生産終了の告知から実際の終了まで11か月かけたモデルは記憶にありません。ダイハツは終わり方にも時間をかけました。それはこのクルマの買われ方を分かっているからだと思います。
ダイハツが生産終了を発表したのは2025年9月29日。実際の終了は2026年8月末ですから、約11か月の予告期間がありました。同時に「2026年4月以降、全国でスペシャルイベントを開催する」ことも告知され、リリースには「再びコペンを世の中に送り出せるよう、様々なスタディを続けております」という一文が入っています。終売を淡々と処理せず、次への含みを残したまま予告期間を長く取ったのは、このクルマが実用の道具ではなく、選んで買われる嗜好品だったからでしょう。予告が長ければ、迷っていた人が決断する時間も確保できます。
FP視点で、いま新車を買う判断を数字で整理します。仮にRobe(CVT)198万3,300円を10年保有した場合、軽自動車税は年1万800円で10年約10万8,000円、年間1万km走行の燃料代が約9万1,000円で10年約91万円。車両価格と合わせた大枠で約300万円が10年分のコストの目安になります。ここで効いてくるのが残価です。初代コペンが2012年に生産を終えたあと、程度の良い個体の中古相場が下がりにくくなった経緯があり、現行モデルも同じ道をたどる可能性は十分にあります。逆に言えば、いま在庫車を掴めなかった人が数年後に中古で探すとき、価格は今より高い可能性を織り込んでおくべきです。私自身11回の買い替えを経験してきて痛感するのは、絶版が確定した趣味車は「買うときの価格」より「手放すときの価格」で結果が決まるということです。
では、どう動くべきか。3ペダルを絶対条件にするならMTは全仕様で一律5万5,000円ですから、グレードを下げてでもMTを取る選択に価格上のペナルティはありません。走りの中身を優先するならRobe SまたはCero Sが合理的で、BBSの見た目に価値を感じるなら20万2,400円を上乗せしてGR SPORTを選ぶ、という判断軸で整理できます。ただし在庫車ベースの販売である以上、色やグレードの希望が通る保証はなく、この判断ができるのも在庫がある間だけです。軽自動車という枠の中に、屋根が開く楽しさを24年間置き続けたメーカーが日本にあったという事実は、規格が趣味性を殺すわけではないことの証明でした。次のコペンが出るかどうかは、いまこの数字を見て動く人がどれだけいるかにもかかっています。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてダイハツ工業株式会社のコペン公式サイト(https://www.daihatsu.co.jp/lineup/copen/)「グレード・価格」ページに掲載された製品画像から引用しています。ヒーロー画像はRobe(7速スーパーアクティブシフト付CVT車)、サブ画像はGR SPORT(同)です。引用は著作権法第32条に基づき、報道・批評目的での適正な範囲内で実施しています。
