
アウディスポーツ初のPHEV、新型RS 5の受注が9月29日に始まりました。出力は旧RS5スポーツバックの450PSから639PSへ189PS増えたのに、価格差はわずか93万円。1馬力あたりの値段は、むしろ25%下がっています。
新型アウディRS 5(セダン・ボディカラーはベッドフォードグリーン/欧州仕様)。2.9L V6ツインターボに130kWモーターを組み合わせ、システム最高出力470kW(639PS)・最大トルク825Nmを発生するアウディスポーツ初のハイパフォーマンスPHEVです。日本では9月29日に受注を開始し、10月20日に発売されます。
出典:AUDI AG 公式メディアサイト『Audi RS 5 Sedan』(The new Audi RS 5: high performance in a hybrid)
「電動化した高性能車は、値段が跳ね上がる」。そう思い込んでいませんか。
アウディ ジャパンは2026年9月29日、新型「RS 5」「RS 5 Avant」の受注を開始しました。価格はセダンのRS 5が1,550万円、ワゴンのRS 5 Avantが1,575万円で、全国127のアウディ正規販売店で10月20日に発売されます。2024年10月時点の旧RS5スポーツバックは450PSで1,457万円。新型は639PSで1,550万円です。出力は42%増えたのに、価格は6.4%しか上がっていません。
一方、ワゴンは事情が異なります。旧RS4アバントの1,356万円からRS 5 Avantの1,575万円へ、上げ幅は219万円。セダンの2.4倍です。さらに独本国価格を円に換算すると、税抜きで日本のほうが約182万円安いという逆転も起きています。
この記事では、新型RS 5の価格表を旧RS5・旧RS4・A5 PHEVと並べて1馬力あたりの値段を分解し、ドイツ価格との比較、そしてEV走行85kmが通勤の燃料費をどれだけ変えるかを、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から検証します。

📌 新型RS 5の価格表を旧RS5・旧RS4と並べる、639PSで1,550万円は割高か割安か

新型の価格だけを見ても判断はできません。先代の最終価格と並べると、セダンは実質据え置きに近く、値上げの負担はワゴンに寄せられていることが見えてきます。
1,550万円と1,575万円、2仕様の価格と先代の最終価格
アウディ ジャパンの発表によれば、新型の日本仕様はセダンの「RS 5」が1,550万円、ワゴンの「RS 5 Avant」が1,575万円の2仕様です。いずれもquattro(四輪駆動)と8速ティプトロニックの組み合わせで、ボディ形状による価格差は25万円です。
比較の基準になるのが先代です。アウディは現行世代で車名体系を改め、旧A4がA5に、旧A5スポーツバックもA5に統合されました。RS 5はその頂点で、セダンは旧RS5スポーツバック(450PS)、ワゴンは旧RS4アバント(450PS)の後継にあたります。モーターファンの車種カタログによれば、2024年10月時点の価格は旧RS5スポーツバックが1,457万円、旧RS4アバントが1,356万円でした。あわせて、2026年5月に発売されたA5初のPHEV「A5 TFSI e-hybrid quattro S line」(367PS)の1,151万円も並べておきます。
1馬力あたり3.24万円から2.43万円へ、25%下がったパワー単価
価格を最高出力で割ると、値付けの性格がはっきりします。旧RS5スポーツバックは1馬力あたり3.24万円、新型RS 5は2.43万円。25%下がりました。価格は93万円(6.4%)上がりましたが、出力は189PS(42%)増えています。ワゴン同士で比べても、旧RS4アバントの3.01万円から新型の2.46万円へ18%下がっています。
A5 PHEVとの比較も示唆的です。A5 PHEVは367PSで1,151万円、1馬力あたり3.14万円。そこからRS 5へ上がると、差額399万円で272PSが加わる計算です。上乗せ分の1馬力あたりは1.47万円で、A5 PHEVの単価の半分以下です。PHEVの基本構成(電池・モーター・充電系)の費用はA5 PHEVの時点ですでに払っており、RS 5では「出力の上積み」を割安に買えるという構図が数字から読み取れます。
セダン+93万円、ワゴン+219万円、値上げの非対称
ただし、この「割安」はセダンの話です。旧RS4アバントの1,356万円から新型RS 5 Avantの1,575万円へは、219万円(16.2%)の値上げで、セダンの上げ幅93万円の2.4倍になります。
理由は先代の価格序列にあります。先代では、ワゴンのRS4アバントがRS5スポーツバックより101万円安い「入口のRS」でした。新型ではRS 5 Avantのほうがセダンより25万円高くなり、序列が126万円分入れ替わったのです。ワゴンはRSの入口から、RS 5の上位仕様へと位置付けが変わりました。旧RS4アバントを乗り継いできた人ほど、今回の価格表は厳しく映るはずです。

📌 639PS・825NmのPHEVの中身と、独本国より182万円安い日本価格

日本価格を独本国価格と税抜きで並べると、換算レートは1ユーロ158円。実勢の178円台より約2割円高の水準で値付けされています。為替を考えると、日本は相対的に安く買える市場です。
新型RS 5 Avant(欧州仕様)。旧RS4アバントの後継にあたるワゴンで、日本価格は1,575万円です。25.9kWh(正味22kWh)の電池を荷室床下に収め、EV走行距離は83km(アウディ ジャパン発表値)。先代と比べると、セダンに対する価格の序列が126万円分上がりました。
出典:AUDI AG 公式メディアサイト『Audi RS 5 Avant』(The new Audi RS 5: high performance in a hybrid)
2.9L V6の510PSにモーター177PS、世界初の電気機械式トルクベクタリング
アウディ ジャパンの発表によれば、パワートレーンは2.9L V6 TFSIツインターボ(375kW=510PS・600Nm)に、130kW(177PS)・460Nmのモーターを組み合わせたものです。システム最高出力は470kW(639PS)、最大トルクは825Nm。0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は標準で270km/h、オプションで285km/hです。EVモードでは140km/hまで電気だけで走れます。
見どころは後輪側の技術です。アウディは、市販車で世界初となる「エレクトロメカニカルトルクベクタリング」を採用し、左右輪の駆動力配分を約15ミリ秒で切り替えるとしています。AUDI AGの本国発表では、左右の駆動力差は最大2,000Nmに達します。サスペンションはツインバルブ式ダンパーを備えたRSスポーツサスペンションが標準で、セラミックブレーキはオプションです。
その代償が重さです。本国発表の車両重量はセダンが2,355kg、Avantが2,370kgです。モーターファンによれば旧RS4アバントは1,745kgで、比較するとワゴンは625kg重くなりました。それでも0-100km/hは旧RS4アバントの4.1秒から短縮されています。重さを電気の力で打ち消した、というのが新型の性格です。
独本国106,200ユーロとの比較、日本は1ユーロ158円相当で値付け
AUDI AGの本国発表によれば、ドイツでの価格はRS 5が106,200ユーロ、RS 5 Avantが107,850ユーロです。9月30日の仲値(1ユーロ178.34円)でそのまま換算すると、それぞれ約1,894万円・約1,923万円になります。ただしこれは付加価値税19%込みの金額なので、日本の消費税10%込み価格とは直接比べられません。
そこで双方の税を除いて比べると、ドイツは約1,592万円、日本は約1,409万円です。日本のほうが約182万円(11.5%)安く、日本価格から逆算した換算レートは1ユーロ約158円になります。仕様装備の差は考慮していない単純比較ですが、発表前に一部媒体が「2,000万円に迫る」と予想した水準からは大きく抑えられた値付けです。円安が続くなか、インポーターが為替差を吸収して価格を置いたと読めます。
📌 たかまさはこう見ている

RSモデルの電動化は、高性能車の値段を押し上げるものだと考えられてきました。新型RS 5の価格表は、その前提を崩しています。高くなったのは出力ではなく、ワゴンという選択肢のほうでした。
なぜセダンの値上げを93万円に抑えられたのか。背景には、同じ車台のA5 PHEVが先行して日本に入り、電池・モーター・充電系の量産コストがすでにA5シリーズ全体で分担されている構造があります。RS 5はその上に出力とシャシー技術を積み上げたモデルで、上乗せ分の1馬力あたり1.47万円という数字はこの構造をそのまま映しています。一方、ワゴンは車名統合によって「RSの入口」から「RS 5の上位仕様」へと位置付けが変わりました。20年あまり新車発表を取材してきましたが、先代の最終価格と並べてはじめて値付けの意図が見える、典型的な価格表だと私は見ています。
FP視点でも検証します。往復30kmの通勤を年240日とすると、年間走行は7,200km。EV走行距離85kmの範囲に収まるため、平日は自宅充電の電気だけで走れます。欧州WLTPの電力消費18.4kWh/100km、電気料金31円/kWhで計算すると、年間の電気代は約4.1万円です。電池切れ状態の燃費10.0L/100km・ハイオク180.8円/Lで同じ距離を走ると約13.0万円。差は年約8.9万円です。ただし差し引く要素もあります。日本仕様の標準充電は3kWで、正味22kWhを満たすには8時間近くかかります。夜間の自宅充電が前提になり、集合住宅で充電できない人には、この8.9万円はそもそも発生しません。1,550万円の車両価格に対して年8.9万円は決して大きな額ではなく、PHEVの経済性で買う車ではないことも、11台を乗り継いできた身として正直に付け加えておきます。
では、誰がどう判断すべきか。旧RS5スポーツバックからの乗り換えを考えている方にとって、93万円で189PSと平日のEV走行が手に入る新型は、数字の上では明確に「買い」の条件がそろっています。旧RS4アバントの乗り換え組は、219万円の上げ幅をワゴンの荷室の価値として受け入れられるかが分かれ目です。いずれにしても、日本価格は為替の実勢より2割有利な水準に置かれており、次の価格改定でこの差が縮むリスクは頭に入れておくべきでしょう。高性能車の値札は、もはや馬力ではなく、ボディ形状と為替が決めるのです。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてAUDI AGの公式メディアサイト(https://www.audi.com/)で、プレスリリース『The new Audi RS 5: high performance in a hybrid』に関連して公開されている報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像はRS 5セダン(ベッドフォードグリーン)、サブ画像はRS 5 Avant(同色)で、いずれも欧州仕様です。著作権はAUDI AGに帰属し、引用は著作権法第32条に基づき報道目的での適正な範囲内で実施しています。
