
日産7月22日、リーフにNISMOが追加されました。660万1100円からです。ベースのリーフB5 Sは438万9000円ですから、差額は221万円。この221万円が何に使われたのかを、公式諸元表から分解してみます。
2026年7月22日に発売された「日産リーフ NISMO」(写真は専用色NISMOステルスグレー)。3代目リーフをベースに、サスペンション・タイヤ・ホイール・空力部品を専用化し、ボディ下部を一周するレッドアクセント「アルテリアマグマ」をまといます。
スポーツカーの値札は、どこに付いているのでしょうか。
日産自動車は2026年7月22日、電気自動車「リーフ」にモータースポーツ部門NISMOの知見を注いだ「日産リーフ NISMO」を発表し、同日発売しました。価格はB5 NISMOが660万1100円、B7 NISMOが695万2000円、B7 NISMO RECARO装着車が722万7000円。日産公式ニュースルームのリリースで確認できる数字です。
注目したいのは差額の大きさです。ベースとなる3代目リーフの最廉価グレードB5 Sは438万9000円。B5 NISMOとの差は221万2100円で、ベース車価格のおよそ1.5倍に相当します。同じB5同士でも、上級グレードB5 G(564万8500円)比で95万2600円高い。これだけの上乗せが、何に化けているのか。
本記事では、3グレードの価格構造と公式諸元表の数字を突き合わせ、NISMO化で実際に変わった部分と変わらなかった部分を分けて整理します。最後にFP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、この価格差をどう考えるかの軸を提示します。

📌 リーフNISMO 3グレードの価格表を縦に読む、660万~722万円の内訳とベース比221万円の行先

価格表は、メーカーが何にお金をかけたかの告白です。リーフNISMOの場合、その告白は意外なところを向いていました。
660万~722万円、3グレードの階段を分解する
リーフNISMOのグレードは3つです。電池容量55kWhの「B5 NISMO」が660万1100円、78kWhの「B7 NISMO」が695万2000円、そしてRECARO製スポーツシートを装備する「B7 NISMO RECARO装着車」が722万7000円。日産公式リリースの価格表に明記されています。
階段の幅を見てください。B5からB7への電池容量アップ(55kWh→78kWh)が35万0900円、B7からRECARO装着車へのシート変更が27万5000円。23kWh分の電池増量と、前座シートの交換がほぼ同じ金額帯に並んでいるのは、このクルマの性格をよく表しています。高価なのは電池だけではなく、人とクルマの接面部分も同等に高価なのです。
221万円の行先を追うと、出力ではなく足まわりに行き着く
日産公式の主要諸元表を見ると、B7 NISMOのモーター最高出力は160kW・最大トルク355Nm、B5 NISMOは130kW・345Nm。これはベースモデルと同水準で、NISMO化による最高出力の引き上げは行われていません。内燃機のNISMOモデルでしばしば見られる「専用ECUで何馬力アップ」という話は、このクルマにはありません。
では221万円はどこへ行ったのか。日産のリリースを読む限り、スプリング・スタビライザーに加えメンバーブッシュの一部を専用部品化したサスペンション、エクストレイルNISMOと同様のスウィングバルブ付きショックアブソーバー、ミシュランPilot Sport 5とエンケイ製19インチホイール、そして専用空力部品群。すべて「タイヤをどう路面に押し付けるか」の領域に集中しています。
重さと全高、公式諸元が示す地味な変化
車両重量はB7 NISMOが1,920kg、RECARO装着車が1,900kg、B5 NISMOが1,820kg。RECARO装着車のほうが20kg軽いのが目を引きます。パワーウェイトレシオはB7 NISMOが12.0kg/kW、RECARO装着車が11.9kg/kW、B5 NISMOが14.0kg/kWです。27万5000円のシート差額は、軽量化と保持性を同時に買っていると読めます。
全高は1,550mmで、プロパイロット2.0装着車のみ1,565mm。全長4,415mm・全幅1,810mm・ホイールベース2,690mmは全グレード共通で、最低地上高は135mm。立体駐車場の高さ制限を気にする方は、プロパイロット2.0を選ぶかどうかで15mm変わる点を覚えておくと安心です。

📌 専用チューニングの中身、回生ブレーキパドルEV NISMO初採用と空力の手法

カタログの数字には出ない変更こそ、乗ったときに差として現れます。この項ではそういう部分を見ていきましょう。
フロントバンパーにはエアガイド機能を持つ専用コーナーフィニッシャーを採用し、空気の流れをボディサイドへ導きます。船底形状のアンダースポイラーとダックテール形状のバックドアスポイラーを組み合わせ、基準車の空気抵抗を悪化させずにダウンフォースを獲得したとされています。
EVのNISMOで初めて、回生ブレーキを手元で刻む
今回最も実用的な変更は、EVのNISMOロードカーとして初めて回生ブレーキコントロールパドルを採用したことです。しかも単なる流用ではなく専用チューニングが施されています。日産の説明によれば、Lv.1ではベースモデルより減速力を低減し、Lv.2~4では高めに設定されています。
この設定の意図ははっきりしています。弱め側をより弱く、強め側をより強くすることで、パドル操作の幅を広げている。コーナー手前で減速を作り、立ち上がりで惣走させるというスポーツ走行の基本動作を、右手の指先だけで完結させられる設計です。
ドライブモードは4つ中3つを専用化、残る1つの意味
日産のリリースには、見落としやすいが興味深い記述があります。ベースモデルのSTANDARD・ECO・SPORT・PERSONALの4モードのうち、専用チューニングを受けたのはSTANDARD・ECO・SPORTの3つで、SPORTは「NISMOモード」として設定されました。
つまりPERSONALモードはベース車のままです。これはネガティブな話ではなく、ユーザーが自分で設定を組む領域にはメーカーが手を入れないという割り切りと読めます。日常は自分の好みの設定で、走りたいときはワンタッチでNISMOモードへという使い方が想定されています。
ボディカラーはベース車の4色にNISMOロードカー専用色「NISMOステルスグレー」系2種を加えた計6色。インテリアはブラック基調にレッドアクセントで、パワーメーターやパワースイッチは専用部品。合成皮革「テーラーフィット」を巻いたステアリングにはレッドセンターマークが入ります。
📌 たかまさはこう見ている

私はこれまでに11台のクルマを買ってきましたが、「速さに払った金額」と「满足度」は必ずしも一致しません。このクルマはそのことをよく分かっている設計だと感じます。
リーフNISMOを、単純な「高いEV」として見ると判断を誤ると思います。公式諸元表が示しているのは、このクルマがカタログスペックでの優位を最初から狙っていないという事実です。最高出力を上げないという選択は、カタログ上の見映えを捨てることを意味します。それでもそうしたのは、EVの重量とトルク特性に対して伸びしろがあるのは出力ではなく接地側だという判断があったからでしょう。
そこで問題になるのが、この価値が買い手にとって検証しにくいという点です。馬力や航続距離ならカタログで比べられますが、サスペンションの剣先やパドルの刻み幅は、実際に乗らなければ分かりません。221万円の差額を払うかどうかの判断は、試乗を経てからでなければ成立しない種類の買い物です。
もうひとつ、取り扱い形態も覚えておきたい点です。公式リリースには、リーフNISMOは持込み登録車で日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社(NMC)の取り扱いとなる旨が明記されています。通常のカタログモデルとは流通の扱いが異なるため、納期や商談の進め方は販売会社への確認が必須です。
FPの視点で付け加えるなら、この手のコンプリートモデルは台数が限られる分だけ中古市場での値崩れが緩やかになりやすい傾向があります。ただしこれは過去のハイパフォーマンスモデル全般の傾向であって、EVの場合は電池の健康度が査定に強く作用します。「レアだから残価が良いはず」という前提で購入額を肯定するのは、EVではまだ安全な計算ではありません。
結局のところ、このクルマを選ぶ理由は投資効率ではないのだと思います。毎日の通勤でハンドルを切るたびに少しだけ嬉しい。その嬉しさに221万円の価値があるかどうかは、数字ではなく乗り手自身が決めることです。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべて日産自動車ニュースルーム(https://global.nissannews.com/)の公式プレスリリース『「日産リーフ NISMO」を発表』(2026年7月22日)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像はNISMOステルスグレーの走行シーン、サブ画像は同リリースの掲載画像です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
