
レクサスが9月24日、本格オフローダー「GX」を一部改良して発売しました。改良の中身は足まわりの制御とタイヤ、後席ベンチレーション。ところが価格は2グレードとも一律45万円上がり、OVERTRAIL+は2024年に抽選販売された100台の価格まで追い越しています。
2026年9月24日に一部改良・発売されたレクサスGX550″OVERTRAIL+”(ムーンデザート&ブラック)。3.5L V6ツインターボとDirect Shift-10ATを組み合わせるAWDの本格オフローダーで、今回はAVS・EPSの制御改良、18インチタイヤの265/70R18への拡大、セカンドシートベンチレーションの全車標準化が実施されました。
「一部改良なら、値段はほとんど変わらない」と思っていませんか。
レクサスは2026年9月24日、本格オフローダー「GX」を一部改良し、全国のレクサス店を通じて発売しました。価格は7人乗りのGX550″version L”が1,315万円、5人乗りのGX550″OVERTRAIL+”が1,240万円。2025年4月の国内発売時(1,270万円/1,195万円)から、2グレードとも一律45万円の値上げです。トヨタ公式リリースに並ぶ改良点は、足まわりの制御改良、タイヤの大径化、後席ベンチレーションの標準化の3つだけでした。
さらに価格の履歴をさかのぼると、奇妙な往復が見えてきます。OVERTRAIL+は2024年4月、100台限定の抽選販売として1,235万円で登場しました。翌2025年4月の通常販売では1,195万円へ40万円下がり、そして今回1,240万円へ。「限定の抽選車より、いつでも注文できるはずの通常モデルのほうが5万円高い」という逆転が、公式価格の上で起きています。
本記事では、45万円値上げの内訳を公式リリースと米国2027年型の価格改定から分解し、タイヤ変更による最低地上高の変化を計算で確かめ、最後に環境性能割の廃止を加味した実質負担をFP視点で検証します。

📌 GX価格表の新旧比較、一律45万円高と抽選1,235万円を超えた通常モデル

公式リリースには新価格しか載っていません。前回の価格表と並べて初めて、45万円という値上げ幅と、抽選車を追い越した事実が見えてきます。
2グレード一律45万円、値上げ率はversion L 3.5%・OVERTRAIL+ 3.8%
トヨタ公式リリースによれば、今回の一部改良後のGXは2グレード構成です。7人乗りで22インチホイールを履く上級志向の”version L”が1,315万円、5人乗りでオフロード装備を強化した”OVERTRAIL+”が1,240万円。いずれもV35A-FTS型3.5L V6ツインターボとDirect Shift-10AT、AWDの組み合わせです。
比較対象は、2025年4月3日に国内の通常販売が始まったときの公式価格です。当時はversion Lが1,270万円、OVERTRAIL+が1,195万円でした。差額はどちらも45万円ちょうど。値上げ率に直すとversion Lが3.54%、OVERTRAIL+が3.77%で、安いほうのグレードほど率では重くなる「一律額」の値上げです。グレードごとに改良の中身が違うのに値上げ額がそろっている点は、次の節で確認します。
抽選100台の1,235万円から一度下がり、1年半で再逆転した価格の往復
GXの国内導入は変則的でした。2024年4月19日、レクサスは通常販売に先立ち、GX550″OVERTRAIL+”を100台限定・1,235万円で抽選販売すると発表しています。応募期間は同年5月12日までで、希少な先行車という位置づけでした。
ところが2025年4月の通常販売では、同じOVERTRAIL+が1,195万円と、抽選時より40万円安く設定されました。先行限定車より量産の通常車が安いのは、輸入販売の限定車ではよくある構図です。今回の改良でOVERTRAIL+は1,240万円となり、抽選時の1,235万円を5万円上回りました。「待てば安く買える」という2025年時点の経験則は、わずか1年半で通用しなくなったことになります。
米国2027年型は+600〜1,565ドル、後席ベンチレーションは6グレード中3つだけ
同じ改良は、日本より1週間早く米国でも発表されています。Lexus USAが2026年9月16日に公表した2027年型GXの価格は、6グレードで6万9,085ドルから8万5,010ドル(配送手数料1,550ドル込み)。上げ幅は多くのグレードで600〜800ドル、率にして0.8〜1.1%です。
唯一大きく上がったのがOvertrail+の+1,565ドル(1.9%)でした。米国では後席ベンチレーションの標準化がLuxury・Luxury+・Overtrail+の3グレードに限られ、同じオフロード系でもベンチレーションが付かないOvertrailは+750ドルです。装備が1つ増えるかどうかで、上げ幅に815ドルの差を付けているわけです。一方、日本は2グレードとも後席ベンチレーションを標準化し、その代わり上げ幅を一律45万円、率で3.5〜3.8%に設定しました。為替や関税、仕様の違いがあるため単純比較はできませんが、率で見ると日本の値上げは米国のおよそ2〜4倍にあたります。

📌 改良の中身、265/70R18タイヤの計算上の効果と後席ベンチレーション

45万円の中身を見ていきます。数字で示せる改良はタイヤだけ。残りは乗って初めて分かる制御の改良と、後席の快適装備です。
新たに採用された265/70R18 116Hタイヤと18×7.5Jアルミホイール(マットグレー塗装)。側面にブロックパターンを設けて力強い見た目とし、最低地上高を高めて悪路走破性を上げつつ、タイヤ構造の最適化でオンロードの静粛性も両立したと公式リリースは説明しています。
265/65R18から265/70R18へ、外径26.5mm増で地上高は約13mm上がる計算
公式リリースによれば、タイヤサイズは265/65R18から265/70R18へ拡大されました。2025年4月の発売時諸元では、この265/65R18を履くのは18インチのOVERTRAIL+で、version Lは265/50R22です。つまりタイヤ変更の恩恵を直接受けるのはOVERTRAIL+と読めます。
カーソムリエとして、数字でその効果を確かめておきます。タイヤ側面の高さは「幅×扁平率」なので、265mm×65%=172.3mmから、265mm×70%=185.5mmへ。側面が約13mm高くなり、タイヤ外径は約801.7mmから約828.2mmへ約26.5mm(3.3%)大きくなります。車軸の位置がタイヤ半径の分だけ上がるので、デフなど車軸まわりの最低地上高はおよそ13mm稼げる計算です。数字としては小さく見えますが、岩や轍をまたぐ本格的な悪路では、この1cm強が「底を打つかどうか」を分けます。
AVS・EPSの制御改良は「乗って分かる」改良、数字には表れない
足まわりでは、電子制御サスペンションAVSの制御を見直し、オフロード走破性を保ったまま舗装路での揺れを減らしたとされます。電動パワーステアリングEPSも制御を改良し、低速での取り回しと高速でのライントレース性(狙った線をなぞる性能)を高めました。レクサスが掲げる運転感覚の指標「Lexus Driving Signature」を進化させる改良と位置づけられています。
ただ、これらは諸元表の数字が変わる改良ではありません。45万円のうち、カタログ上で数字として比べられる変化はタイヤサイズだけです。重さ2.5トン級の車体で「揺れが減った」「ハンドルが素直になった」かどうかは、試乗して自分の感覚で確かめるしかない部分です。
全車標準となったセカンドシートのシートベンチレーション。座面と背もたれから送風して蒸れを抑える装備で、米国の2027年型では6グレード中3グレードのみの標準化にとどまりました。日本では7人乗りのversion L、5人乗りのOVERTRAIL+の両方に付きます。
後席ベンチレーションの全車標準化、兄弟車ランクル250との差を詰める装備
3つ目の改良が、セカンドシートのシートベンチレーションの全車標準化です。一部の自動車媒体は、この装備の追加を兄弟車トヨタ ランドクルーザー250に対する弱点の解消と評しています。本格オフローダーは夏のキャンプや長距離移動で後席に人を乗せる機会が多く、座面の蒸れを抑える装備は家族の満足度に直結します。
ただし、兄弟車のランドクルーザー250も2026年4月の一部改良で、ガソリンVXが545万円から577万9,400円へ32万9,400円(6.0%)値上げされています。トヨタブランドの兄弟車が先に6%上がり、レクサスのGXが3〜4%で続いたという順番で見ると、今回の45万円は単独の値付けではなく、同じGA-Fプラットフォームを使うラダーフレーム車全体の価格改定の流れの中にあると読めます。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり新車価格を追ってきましたが、「抽選限定車の価格を、通常モデルが後から追い越す」という例はそう多くありません。これは装備の値段というより、需要の強さが値札に表れた結果だと私は見ています。
なぜ一律45万円を通せるのか。答えは受注の状況にあります。2026年4月の報道では、GXは新規注文を止めて既に注文済みの顧客への納車を優先している状態と伝えられ、レクサス公式の工場出荷時期目処(2026年9月18日更新)でも、GXの納期は「販売店にお問い合わせください」の扱いです。欲しい人が並んでいる車は、改良で値上げしても需要が減りにくい。米国ではグレードごとに装備の有無で上げ幅を細かく変えたのに対し、日本では2グレード同額で上げたことも、この需要の強さを裏付けています。
FP視点で実質負担を検証します。見落とされがちなのが、2026年3月31日に廃止された自動車税の環境性能割です。WLTCモード燃費8.1km/L(version L)のGXは、廃止前なら取得価額の3%が課税される区分でした。取得価額を税抜価格の約9割と仮定すると、2025年4月価格で買った人の環境性能割はversion Lで約31.2万円、OVERTRAIL+で約29.3万円。これが今はかかりません。つまり車両価格は45万円上がっても、購入時の実質負担の増加はversion Lで約13.8万円、OVERTRAIL+で約15.7万円に縮まります。値上げ幅の3分の2は、税制の変更で打ち消されている計算です。
では、どう判断すべきか。私自身11台を買い替えてきて学んだのは、人気車の「待てば安くなる」は外れやすいということです。GXはまさにその例で、抽選車より安かった2025年の通常価格は、もう戻ってきません。購入を考えている方は、①販売店で新規受注の再開時期を確認する、②OVERTRAIL+なら45万円の中にタイヤ大径化という数字で測れる改良が含まれている、③version Lは実質の変化が後席ベンチレーションと制御改良に限られる、という3点を比べて判断するのが現実的です。同じ45万円でも、グレードによって中身の濃さが違います。車両価格と税制が同時に動く日本の高額車市場では、「本体価格」より「支払う総額」で比べる目を持った人だけが、値札の本当の動きを見抜けるのです。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべてトヨタ自動車グローバルニュースルーム(https://global.toyota/jp/newsroom/)の公式プレスリリース『LEXUS、「GX」を一部改良』(2026年9月24日)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像はGX550″OVERTRAIL+”(ムーンデザート&ブラック)、サブ画像は265/70R18タイヤ&18×7.5Jアルミホイールとセカンドシートのシートベンチレーションです。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
