
前年比プラス1.9%という見出しの数字だけ見ると「まだ高値」です。しかし前月比では1カ月で9.7万円、例年の約5倍の下げ。業者オークションの単価は、店頭の買取価格より数カ月早く動きます。
「中古車はまだ高い。売るのは急がなくていい」。そう思い込んでいませんか。
2026年9月30日に公表された8月の中古車市場データで、国内最大の業者オークションUSSの平均成約単価は124.8万円でした。前年同月比はプラス1.9%と、7月のプラス8.1%から急ブレーキ。前月の134.5万円からは1カ月で9.7万円(7.2%)下がり、前年の同じ時期に逆算される約2万円の下げと比べると、およそ5倍の落ち幅です。
背景にあるのは供給の回復です。8月のUSS出品台数は25万4,517台で前年比9.2%増(開催日数補正後は16.3%増)。一方で成約率は66.8%と前年の69.6%を下回り、2カ月連続の前年割れとなりました。輸出向けの抹消登録は前年比32.8%増と勢いがあるにもかかわらず、単価の伸びは止まりかけています。
この記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、8月データが示す需給の変化、「輸出で値が付く車」と「国内向けの車」の二層化、そして13年目の重課を目前にした車を今売るか1年乗り続けるかの損得を試算して検証します。

📌 USS8月の平均成約単価124.8万円、「出品増・成約率低下・単価減速」がそろった意味

出品が9.2%増えたのに、成約は4.7%増にとどまりました。この4.5ポイントの差が「売れ残り」です。売れ残りが増えると、次の月の出品は値段を下げて出直してきます。
出品プラス9.2%に対して成約プラス4.7%、差の4.5ポイントが売れ残り
ファブリカホールディングスが9月30日に公表した「2026年8月 市場レポート」によると、USSの8月の出品台数は25万4,517台で前年同月比9.2%増でした。オークションの開催日数の違いを補正すると16.3%増で、実態としては2割近い供給増です。一方、成約台数は16万9,966台で4.7%増にとどまり、出品の伸びと成約の伸びの間に4.5ポイントの開きが生まれました。
その結果、成約率は66.8%と前年同月の69.6%から2.8ポイント下がり、7月(63.8%・前年比マイナス2.4ポイント)に続いて2カ月連続の前年割れです。成約率は、業者オークションで「出したクルマのうち何割が売れたか」を示す、相場の体温計のような指標です。これが下がるということは、売り手の希望価格に買い手がついて来なくなっていることを意味します。流札した車両は翌週以降、スタート価格を下げて再出品されるのが一般的で、成約率の低下は単価の先行指標として働きます。
前月比マイナス9.7万円は例年の約5倍、8月の単価下落の中身
8月の平均成約単価は124.8万円で、前年同月比ではプラス1.9%を保ちました。見出しの数字だけを見ると「中古車はまだ高値圏」です。しかし前月比では、7月の134.5万円から1カ月で9.7万円、率にして7.2%の下落です。
もちろん8月はお盆休みで開催日が減り、出品される車の車格構成も変わるため、例年でも単価は7月より下がりやすい月です。そこで前年比の数字から2025年の7月と8月の単価を逆算すると、2025年7月は約124.4万円、2025年8月は約122.5万円で、前年の同じ時期の下げ幅は約2万円でした。今年の9.7万円安は、季節要因だけでは説明しきれない約5倍の落ち幅です。
供給の源は新車の回復、登録車プラス9.1%が下取り車を押し出す
では、なぜ出品がここまで増えたのか。最大の要因は新車販売の回復です。8月の国内新車販売は30万7,374台で前年同月比2.0%増となり、内訳を見ると登録車が20万3,664台(9.1%増)と大きく伸びた一方、軽自動車は10万3,710台(9.5%減)でした。軽の落ち込みについては、3月末で環境性能割が廃止されたことで、税の軽減効果が軽より大きかった小型車に需要が移ったことが主因と報じられています。
新車が売れれば、その分だけ下取り車が発生し、販売店はそれを業者オークションに流します。7月のレポートでも「新車の4カ月連続プラスが下取りを増やしている」と分析されていました。つまり今の出品増は一時的なものではなく、新車の供給正常化という構造要因に根ざしているということです。一方で、8月の中古車登録台数は26万3,114台(0.3%減)とほぼ横ばいで、国内の中古車の小売需要は供給ほどには伸びていません。供給が増え、国内需要が横ばいなら、単価に下押し圧力がかかるのは自然な流れです。

📌 輸出抹消プラス32.8%でも支えきれない国内向け車種と、13年目の売り時の損得試算

13年目の自動車税の重課は年5,100円。多くの人がこれを気にして手放す時期を考えますが、相場の1年分の下落はその10倍以上になりえます。見るべきは税額より相場です。
輸出で値が付く車と付かない車、相場の二層化が始まった
8月の輸出向け抹消登録は14万4,394台で、前年同月比32.8%増と大きく伸びました。1〜8月の累計でも117万6,041台(8.8%増)と、2025年に約171万台まで拡大した中古車輸出の勢いは続いています。それでも単価全体の伸びが止まりかけている点に、今回のデータの核心があります。
ここで引き算の視点も入れておく必要があります。7月の輸出抹消は前年比1.5%増にとどまっており、8月だけが突出して伸びた形です。前年8月の水準が低かった反動も含まれている可能性があり、「輸出が3割増えたから相場は安泰」と読むのは早計です。
ファブリカのレポートは、MT車・4WD車・SUV・年式の古い車など輸出で競争力のある車種が価格を支える一方、国内向けが中心のコンパクトカー・ミニバン・セダンは供給過多の圧力を受けていると分析しています。販売店に対しては、国内向け車種の仕入れ上限を5〜10%引き下げるよう提言しています。ユーカーパックの9月号レポートも、SUVは国内・輸出の両面で冬に向けて底堅い一方、アルファード/ヴェルファイアなど供給が増えたミニバンや300万円以上の高額帯は値上がりより横ばいの見立てです。つまり相場は一枚岩ではなく、「海外に買い手がいる車」と「国内でしか売れない車」の二層構造に分かれ始めています。
古い車ほどこの差が効きます。MOTAが9月15日に公表した約150万件の査定データの分析では、12〜15年落ちの平均査定額が2026年6月時点で33万円と前年比26.2%上昇し、16年落ち以上でも「査定額10万円以上」の割合が65.0%まで上がりました。古い車に値が付く背景には輸出需要があり、裏返せば輸出の追い風がない車種ほど、国内相場の軟化をそのまま受けることになります。
FP試算・13年目を前にした1.5Lガソリン車、今売るか1年乗るか
ここからはFP(ファイナンシャルプランナー)の視点で、具体的な損得を試算します。モデルケースは、2019年9月以前に登録された排気量1.0〜1.5Lのガソリン乗用車で、車両重量1.0〜1.5t、登録から12年が経過して査定額が33万円(MOTA公表の12〜15年落ち平均と同水準)という車です。
ガソリン車は新規登録から13年を超えると、自動車税(種別割)がおよそ15%重課されます。東京都主税局の税率表では、この区分の税額は年34,500円で、重課後は39,600円、差額は年5,100円です。さらに車検時に納める自動車重量税も、1.0〜1.5tクラスの2年分でエコカー減税の対象外の本則24,600円が、13年経過で34,200円へ9,600円上がります。合計すると、13年目に入ることで増える税負担は1年あたりおよそ1.5万円です。
ところが、損得を左右するのは税よりも相場の側です。仮に1年間の相場下落を査定額の2割とすると、33万円の車は26.4万円になり、1年で6.6万円の目減りです。8月のUSS単価が1カ月で7.2%動いたことを考えれば、2割という仮定は国内向け車種ではむしろ控えめかもしれません。
試算の結果、13年目の税の重課は約1.5万円なのに、相場の目減りは約6.6万円と4倍以上になりました。ただし、ここにも引き算が必要です。車を手放すなら、代わりの移動手段や乗り換え先の費用が発生します。中古車の小売価格はまだ高い水準にあるため、乗り換え先の購入費まで含めると「今売る」ことが常に正解とは限りません。また、MT車や4WD、SUVのように輸出で値が付く車種は相場の下落幅が小さいと考えられ、急いで手放す理由は相対的に薄くなります。結論として、国内向けのコンパクトカーやミニバン、セダンで、もともと乗り換えを検討していた人ほど、決断を1年先送りするコストが大きいという整理になります。
10月公表の9月データで確認すべき3つのシグナル
今回の軟化が一時的か、相場の転換点かを見極めるうえで、ファブリカのレポートは9月データ(10月公表予定)で確認すべき指標として次の3つを挙げています。
- 成約率の3カ月連続の前年割れ:売れ残りの増加が定着しているかどうか
- 平均成約単価の前年比マイナス転換:プラス1.9%まで縮んだ伸びが、いよいよマイナスに沈むかどうか
- 輸出抹消の2桁増の持続:8月の32.8%増が一過性でないかどうか
前の2つが実現し、3つ目が崩れれば、相場は「減速」から「下落」へ一段進んだと判断できます。売却を考えている人にとっては、9月データを待ってからでは、店頭の買取価格にすでにその変化が織り込まれた後になる可能性がある点にも注意が必要です。業者オークションの単価は、買取店が提示する査定額の「仕入れ上限」を決める材料だからです。
📌 たかまさはこう見ている

新車の納期が長かった時代に「中古車は値下がりしない」という常識が生まれました。新車の供給が戻った今、その常識の前提が静かに崩れ始めています。
この数年の中古車の高値は、新車の供給制約という特殊な条件の上に成り立っていました。新車の納期が1年、2年と延びた時期には、すぐに乗れる中古車に需要が集中し、「数年乗っても買った値段とあまり変わらずに売れる」という現象まで起きました。しかし2026年は、国内の新車販売が5カ月連続で前年を上回り、とくに登録車が伸びて、その下取り車が業者オークションに流れ込んでいます。8月の単価減速と成約率低下は、この「特殊な条件」が外れ始めたサインだと私は見ています。
私自身、これまで11台のクルマを乗り継いできましたが、売却で後悔が残ったのは、例外なく「相場はまだ上がる」と判断を先送りしたときでした。業者オークションの単価が動いてから、買取店の査定額に反映されるまでには時間差があります。前月比9.7万円安という数字は、店頭ではまだ実感しにくい変化ですが、数カ月後の査定額にはじわりと効いてきます。輸出の追い風がある車種は慌てる必要はありませんが、国内向けの車種で乗り換えを考えているなら、13年目の重課や車検のタイミングと重ね合わせて、今の相場で一度査定額を確認しておく価値はあります。
FP視点で整理すると、クルマは「持っているだけで毎年価値が減る資産」です。その減り方がゆるやかだった数年間が終わりつつある今、必要なのは相場の天井を当てることではなく、自分のクルマが輸出で値が付く側か、国内向けの側かを知ることです。相場の天井は、誰にも鐘を鳴らしてはくれません。
