
オデッセイの国内販売終了について、複数の販売店が「事実」と認めたと8月21日に報じられました。ここで一度、価格表を並べてみてください。オデッセイの最上級は545万500円。アルファードの一番安いグレードは559万9,000円です。オデッセイは、天井でもアルファードの入口に届いていなかったのではなく、届かせなかった側でした。
2025年11月7日発売の一部改良モデル(写真は最上級のe:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION/545万500円)。全長4,860mm・全幅1,820mm・全高1,695mm、ホイールベース2,900mm。超低床プラットフォームによる低全高が、歴代オデッセイの一貫した個性でした。
「アルファードより高くて売れなかったのだろう」と思っていませんか。
ホンダの上級ミニバン「オデッセイ」の国内販売終了について、2026年8月21日、複数の販売店が「事実」であると認めたことが報じられました。生産枠は残りわずかで、受注ペースによっては1〜2か月で埋まる可能性があるとされています。日本経済新聞と共同通信が2026年6月に「2026年度内に国内販売終了」と報じた内容が、販売現場の証言によって裏付けられた形です。ただし本記事執筆時点で、ホンダから終了に関する公式リリースは出ていません。
ここで価格表を確認します。オデッセイの最上級グレードe:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITIONは545万500円。一方、競合とされてきたトヨタ アルファードの最も安いグレードは559万9,000円です。オデッセイは最上級でさえ、アルファードの入口より14万8,500円安い位置にありました。それでも2025年度の販売実績は7,339台で、アルファードの8万1,357台のおよそ11分の1。価格で下にいながら台数で負けたという、素直には読み解けない構造がここにあります。
本記事では、現時点で確定している事実と未確定の事実を切り分けたうえで、3タイプ508万6,400円〜545万500円の価格構造、月販計画1,000台に対する実績、そして「終了が決まったクルマを今買うか」の判断軸を、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点も交えて検証します。

📌 オデッセイ販売終了の現在地、508万6,400円〜545万500円の3タイプと「残り枠」の実像

販売終了の情報は、報道・販売店証言・公式発表の3段階で温度が違います。今回はまだ3段階目に至っていません。買う側にとっては「いつまで注文できるか」が最重要ですから、この温度差は正確に押さえておく必要があります。
2026年度内に終了、公式発表がないまま「枠が埋まり次第」という終わり方
時系列を整理します。2026年6月19日に日本経済新聞が、続いて6月22日に共同通信が、ホンダがオデッセイの国内販売を2026年度内に終了する方針であると報じました。首都圏のホンダカーズへの取材では「メーカーから2026年度内に生産終了する通達が来ている」という販売現場の声も出ています。そして2026年8月21日、販売店が終了を「事実」と認め、割り当てられた生産枠が残りわずかで、受注ペース次第では1〜2か月で埋まる可能性があると報じられました。
注意していただきたいのは、この一連の情報にホンダの公式リリースが一度も含まれていない点です。終了日が公表されないまま、生産枠が消化された時点で静かに受注を打ち切る運び方が想定されます。過去にも同種の終わり方はありましたが、購入検討者にとっては「いつまで注文できるか」が最後まで確定しないことを意味します。実際の残り枠は販売会社ごとに配分が異なるため、検討中の方は特定の店舗の在庫状況ではなく、複数店舗への確認が必要になります。
508万6,400円〜545万500円、3タイプの刻みは復活時と1円も変わっていない
現行オデッセイは、2025年11月7日発売の一部改良モデルが最終形です。ホンダ公式リリースによれば、e:HEV ABSOLUTEが508万6,400円、e:HEV ABSOLUTE・EXが528万6,600円、e:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITIONが545万500円。全タイプが2.0L DOHC i-VTEC+2モーターハイブリッド、電気式無段変速機、FF、7名乗車で統一されています。改良内容は2列目大型ロールサンシェードの全タイプ標準装備と、ボディカラー「ダイヤモンドダスト・パール」の追加が中心でした。
価格表を2023年12月の復活時と縦に突き合わせると、興味深い事実が浮かびます。復活時は480万400円/500万600円/516万4,500円。今回との差はすべて一律28万6,000円で、グレード間の刻み(下から20万200円、16万3,900円)は1円も変わっていません。原材料費や物流費の上昇を全タイプに均等配分し、商品戦略としての価格差はいっさい触らなかったということです。値上げというより「下駄を履かせた」に近い操作で、ここにオデッセイという商品の扱われ方が正直に出ています。
中国・増城工場からの逆輸入、月販計画1,000台という設定
現行オデッセイの成り立ちも押さえておく必要があります。5代目オデッセイは埼玉製作所・狭山工場の閉鎖に伴い、2021年末で国内生産を終了しました。その後、根強い要望に応える形で、広汽ホンダが中国・増城工場で生産する日本仕様を輸入するという方式で、2023年12月8日に復活したのが現行モデルです。ホンダの四輪車として初の中国からの輸入車であり、当時これ自体が大きな話題になりました。
そのときホンダが公表した月間販売計画台数は1,000台です。年換算で1万2,000台。フルモデルチェンジではなく前モデルベースの改良で、生産も海外に委ねる形ですから、この数字は「大きく張らない」設計だったと読めます。ところが実績はこの控えめな設定にすら届かず、2年8か月あまりで終了に至りました。基本設計は2013年登場のまま13年目を迎えており、次のフルモデルチェンジを織り込める規模の台数が最後まで積み上がらなかったことになります。

📌 価格ではアルファードの下にいた、7,339台と8万1,357台が示すオデッセイ敗因の中身

「アルファードより安いのに売れない」という状態は、値付けの失敗ではありません。買い手が比べていたのが価格ではなかった、という事実の表れです。数字を並べると、その比較軸がどこにあったのかが見えてきます。
2023年12月8日、中国・増城工場からの輸入という形で復活したときの公式画像。「精錬」をコンセプトに開口部を拡大した新デザインのフロントグリルを採用し、新タイプのe:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITIONを設定しました。全タイプの2列目に4ウェイパワーシートを採用し、月間販売計画台数は1,000台と公表されています。
天井545万500円は、アルファードの入口より14万8,500円安い
トヨタは2026年6月3日、アルファードとヴェルファイアを一部改良して発売しました。アルファードは廉価だったハイブリッドXを廃止し、代わりに装備を充実させたハイブリッドGを新設定。そのFF車の価格が559万9,000円で、2.5LガソリンのZ(FF)も同額です。つまり2026年8月時点で、アルファードを新車で買う入口は559万9,000円になります。
ここでオデッセイの価格表を重ねます。最上級のe:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITIONが545万500円ですから、オデッセイはラインアップの天井でも、アルファードの入口より14万8,500円安い。エントリーのe:HEV ABSOLUTE(508万6,400円)で比べれば差は51万2,600円に広がります。「アルファードより高いから売れなかった」という説明は、少なくとも価格表の上では成立しません。オデッセイは終始、アルファードの一段下に価格を置き続けていました。
にもかかわらず、2025年度の販売台数はオデッセイが7,339台、アルファードが8万1,357台。約11.1倍の開きです。暦年で見ても2025年1月から12月のオデッセイは8,025台で乗用車ブランド通称名別47位、アルファードは8万6,959台で7位、ヴェルファイアも3万3,031台で22位でした。価格で一段下に降りても、台数の差はまったく埋まらなかったのです。
月販計画1,000台に対し、2025年度は月平均612台
7,339台という年間実績を12で割ると、月平均は約612台です。ホンダ自身が復活時に置いた月間計画1,000台に対して、達成率は約61%。しかもこの数字は前年度比で約35%の減少です。復活初年度は「戻ってきたオデッセイ」という話題性が効きましたが、話題が一巡した後の落ち込みが大きかったことになります。
台数が読めないモデルは、次の投資判断で不利になります。基本設計は2013年から変わらず13年目。フルモデルチェンジには数百億円規模の開発費がかかりますが、年7,000台規模ではその原資を回収する絵が描けません。逆輸入という延命策で商品を残しつつ、次を判断するための台数を測っていた期間だったと見ると、今回の終了は自然な帰結です。オデッセイの後継として北米向け大型SUV「パイロット」の日本導入を予想する声もありますが、これは業界筋の観測であり、ホンダから発表されたものではありません。
FP視点・5年で18万6,000円の差と、全高1,695mmという最後の武器
FPの視点で、オデッセイとアルファードの入口同士を保有コストで比べてみます。車両価格の差は前述のとおり14万8,500円(オデッセイ最上級が安い側)。加えて自動車税の区分が違います。オデッセイの排気量は1,993ccで1.5L超2.0L以下の区分となり、2019年10月以降の新規登録に適用される新税率では年3万6,000円。アルファードの2.5Lは2.0L超2.5L以下で年4万3,500円です。年7,500円、5年で3万7,500円の差が生じます。車両価格差と合わせれば5年間で18万6,000円。同じ「上級ミニバンの入口」を買うなら、オデッセイのほうが安く済む計算でした。
それでも選ばれなかった理由は、数字ではなく寸法にあったと私は見ています。オデッセイの全高は1,695mm、アルファードは1,935mm。240mmの差です。この240mmは、機械式立体駐車場に入るか入らないかを分ける決定的な差であり、同時に「後席に座ったときの見晴らし」と「外から見たときの威圧感」を分ける差でもあります。近年の上級ミニバン需要は送迎車・移動する応接室としての性格を強め、市場は後者を評価しました。オデッセイの超低床プラットフォームは走りの良さという明確な価値を持ちながら、市場が値札を付けた軸とはずれていたのです。
いま検討している方への実務的な整理です。第一に、機械式立体駐車場(多くは全高1,550mmまたは1,700mm・1,800mm制限)を日常的に使う方にとって、オデッセイは代替の効きにくい選択肢です。終了後にホンダの国内ミニバンはステップワゴン(334万8,400円〜440万6,600円)とフリードの2車種になり、天井は104万3,900円下がります。第二に、終了確定車は値引き条件が緩む局面がある一方、生産枠が埋まれば交渉自体が成立しません。第三に、部品の供給については、メーカーは通常、生産終了後も相当期間の補修用部品供給体制を維持しますが、期間や条件は車種ごとに異なるため、購入前に販売店へ確認しておくのが確実です。
📌 たかまさはこう見ている

20年あまり新車を取材してきて、これほど「正しいのに売れなかった」商品も珍しいと感じます。低く構えて走りを良くするという設計思想は一貫して筋が通っていました。ただ、筋が通っていることと、売れることは別の話です。
1994年に登場した初代オデッセイは、経営的に苦しかった当時のホンダを救った一台でした。セダンのプラットフォームを使い、立体駐車場に入る全高で、乗用車のように走るミニバン。この発想が当たり、1995年には年間約12万5,000台を記録します。日本のミニバン文化そのものを作った商品と言ってよく、その後のステップワゴンやCR-Vへの展開も、この成功があったからこそでした。今回終了する5代目まで、超低床という一点は32年間ぶれていません。
ぶれなかったからこそ、市場が動いたときに取り残されました。上級ミニバンに求められる価値は、この10年で「運転して気持ちがいい」から「後席で過ごす時間の質」へ、さらに言えば「送迎車として様になるか」へ移っています。アルファードとヴェルファイアが2025年暦年で合わせて12万台近くを売り、一時は中古価格が新車価格を上回るほどの需要を集めたのは、その価値観の勝利です。オデッセイは価格でも装備でも劣っていたわけではなく、価格表では常にアルファードの下にいました。それでも11分の1で終わったという事実は、この市場で価格が判断軸ではなくなっていたことを示しています。私自身、これまで11台を乗り継ぎ、そのたびに「良いクルマ」と「欲しいクルマ」が一致しない場面を見てきましたが、オデッセイの32年はその典型例として記憶されるはずです。
では、いま何をすべきか。低全高のミニバンでなければ困る事情がある方、たとえば機械式立体駐車場が生活動線に組み込まれている方は、選択肢が事実上ここで一段狭まります。残り枠が1〜2か月で埋まる可能性がある以上、検討しているなら複数の販売会社に枠の有無を当たるところから始めてください。逆に、明確な理由なく「終わるらしいから」で動く必要はありません。終了直前の駆け込みは、値引き交渉の主導権を売り手側に渡します。判断すべきは希少性ではなく、全高1,695mmが自分の生活に必要かどうかの一点です。クルマの寿命を決めるのは価格表ではなく、市場がどの価値に値札を付けたかなのです。
🔍 この記事のファクトチェックについて
本記事に掲載した車両画像は、すべて本田技研工業の公式ニュースリリース(https://global.honda/jp/newsroom/)に掲載された報道用公式画像から引用しています。ヒーロー画像は『「ODYSSEY」を一部改良し発売』(2025年11月6日)のe:HEV ABSOLUTE・EX BLACK EDITION、サブ画像は同題のリリース(2023年12月7日)の掲載画像です。引用は著作権法第32条に基づき、報道目的での適正な範囲内で実施しています。
